良は
頭を撫でるのを嫌がるそぶりも見せずにじっと俺の話を聞く良。
その体勢、疲れない?
とりあえず、俺の生きてきた平成のこと、仕事のこと、気がついたらここに居たことを話す。
やはり良は難しい顔をしてしまった。頭を撫でるのを止めて様子を見ると顔を上げてこちらを見る。
『有り得ない話だな、正直見た目が由良だから信じるしかないんだが…。嘘を言っている様子でもないし。…じゃあ俺の番だな。何から話そうか?』
「まぁ、俺自身ここで良と話していること自体有り得ないからなぁ。そうだな、由良って奴の事と、良の事を聞きたいんだけど。」
『わかった。…由良はなぁ…。半年前にこの西の茶屋町にやってきたんだが、良い見なりのくせに大門の前で行き倒れてたんだよ。それをじのもん(地元の人)が介抱してやってたんだが、元気になってからは万に手伝いを始めてさ。』
「い、行き倒れ…。」
『器用だったから皆に好かれてたんだよ。俺は少し後から知り合ったんだ…。人気があるからどんな奴か見に行ったら、無口で無表情で。』
「へぇ。」
『ドカドカと店に入り込むわ、愛想はないわ、まぁでも俺は気を遣われるの嫌いだから楽だったんだけど。』
「ほぉ。」
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