気持ちとしてはどうなんだ。 正直来栖は自分自身のことなのだが答えを見つけあぐねていた。 どうしたい?どうなりたい?この先俺は、紺野と…
外は雪。 しんしんというよりはずんずん積もっている。 ぺらい箱のような住まいは冷気やらなにやらを拒まず招き入れるもんだから中古で買ったストーブ以外、優秀な暖房器具を持ち合わせていない二人は、毛布にくるまってじっと耐えるほかなかった。
すぐとなりで紺野が身じろぐ。 もうずいぶんと早い段階で眠りについたであろう紺野はすうすうと規則正しい寝息を立てている。 いつの間にか寒さではなく思考に囚われた来栖は眠れない。
暗闇に慣れた目でうすぼんやりと浮かぶリング状の蛍光灯を見つめる。 これ以上何を望む。紺野は友達になってくれた。もう充分すぎるほど満たされたはずじゃないか。 幸せだった。 初めて本音でぶつかり合えるやつができた。嘘も建前も取り繕いも、紺野の前では無意味だ。 なにより俺がそれを許さない。絶対の信頼関係。やっと手に入れたただ一人の人を自ら裏切ることなんてできない。
なのになぜだろう。 抱きついたりキスをしたり世間一般で言う友達よりも行き過ぎた行為をしている自覚はある。 ずっとそうしてきたし、セックスだけのオトモダチとはまた違う、そんなものとは比べ物にならない程深く親愛の証のような気持ちで接していた。 今までは。
それがどうだ。 こんなにも衝動的に抱きすくめ、愛おしさのあまり体中にキスの雨を降らせたくなる。 一度垣間見た友達の向こう側が甘美なお菓子のように誘惑する。 とろけるようなその顔を自分の手でまた引き出したいと、無邪気な笑顔を見るたびにその気持ちはむくむくと膨れ上がっている。
友達ってなんだっけ。 もともと定義なんて持ち合わせてはいなかったけど。 紺野のことが大事で失いたくないと思うほどに自分の衝動と同等かあるいはそれ以上の制御心が無意識の内に働いている。
それが今の現状。 揺れる天秤のように来栖の心は危なげだ。 きゅっと背中にすがりつく。不安定の時こうして紺野に触れていると自然と落ち着く。 つんつんとした短髪に顔を埋め深く深呼吸する。紺野はここにいる。
「眠れない?」
肩越しに覗き込む紺野の瞳が俺を写した。 起こしてしまった。慌てて首を振ろうとしたらかわりに頭を引き寄せられてついばむ様な優しいキス。
「…こんの?」 「眉間に皺よってんぞー。難しいこと考えてないで今は眠りなさい」
向き直った紺野がぽんぽんと頭をなでる。
紺野は俺のすべてだ。 いつだって紺野の一挙一動に救われている。魔法の呪文をかけられた様に波打つ心が自然と収まる。 愛しさが増す。 好き好き大好き。この気持ちは友達?恋人? そんな名称で俺の紺野に対する想いがくくれてたまるか。
幸せを噛み締めて涙目を見られないように腕の中にきつくきつく愛しい人を抱きすくめた。
END.
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お題:淡い小説の書き方
お題あんま関係なくなったけど書ききれて満足。
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