均衡状態は崩れない。 先ほどからお互い一歩も譲らない。今回ばかりはと、いつもなら根負けするところだがなんとか粘っている。
しかし、さすがに手強い。口を真一文字に結んで堪える。 気を抜けば眉が下がりそうだ。
ぶっちゃけ目の前のこの人はすでに眉が下がっている。申し訳無いと思いつつも心を鬼にする。 思ってる傍から手が伸びてくるからホント、つくづく油断も隙もない。
「駄目ですって」 「なんでだい?こんなにも想っているのに。もうどうにかなってしまいそうだよ。」 「駄目なものは駄目なんです。俺だって、我慢してるんですよ」 「いいじゃないか、もう十分待ったよ。お願いだよ紺野くん。君に触れたいんだ」 「っ!」
時計を見やる。くっそなんなんだよ。もう一時間くらい経った気がしてたが実際はなんてことはない。 2分しか経っていなかった。 大概、俺も九条さんも我慢が苦手だ。
甘い言葉を囁きかけられる度にぐらつき、どうしようもなく抱きしめたくなる気持ちをそれこそ阿修羅にでもなったつもりで跳ね除ける。ごめんなさい九条さん。でも、あと3分なんです。
訴える九条さんがあまりにも可哀想で俺もなんか涙目になってたけどついにその時は来た。
ぴぴぴぴ。ぴぴぴぴ。ぴぴぴぴ。
携帯のアラームがなる。 ほっと息をつくのも束の間、脱兎のごとく九条さんが両手を広げて突っ込んできた。 俺も両手を広げて迎え撃つ。 効果音でガシイッという文字が見えそうなくらいにぎゅうぎゅうに抱きしめあう。
「紺野くん!紺野くん!!耐えられないかと思ったよ!!」 「俺もです!よく頑張りましたね九条さん!!!」 「本当に頑張って耐えた分だけ今最高に幸せな気持ちだ!!こうして紺野くんを抱きしめられる喜びを全力でかみ締めている!!!」 「俺もです!いくら九条さんのお願いと言えど目の前にいて5分も触れ合わずにいられる自信、正直なかったんで!!」
いつも傍にいて触れ合える幸せを再確認して、笑いあう。 ああ、俺こんなにも幸せだ。
ベッドにもつれ込みながらダイブする俺たちを月だけが見ていた。
**********************
お題:冷静と情熱の間にあるのは月
うぇーい! 安定のバカップル!!!
|