!輪廻転生
!記憶あやふや











「先生この教科書はダメダメだよ。破ってズタズタにして燃やしてそれを地中深くに埋めたら教科書作ってる人に文句言いに行こうよ。」
俺は歴史の教科書を先生の前にある教卓に放りなげ早口でそう言った。
そうすれば、先生は一瞬ビックリな顔をし、そしてすぐに優しく微笑みながら「どうした?」と言ってきた。
「もしかしたら俺の授業がわからなかったとかそういう不満か猿飛。」
「や。そうじゃないし、寧ろアレだよね。俺様天才だからわからないなんてないしね。でもね、この教科書の作りだけはほんと理解できない。もうほんとこの階の窓から空に向かって全力で投げたい。」
「物は大切にしろよ猿飛。とゆうかお前はつまり何が言いたいんだ?」
俺は急いでるんだぞ。先生はそう言いながら荷物をそそくさとまとめて帰る準備を始めてる。
俺は盛大なため息を吐き出しながら、教科書を指差し言葉を告げる。
「これね、大切な事載ってないの。」
そういえば先生は「大切な事?」と大人にしては小さな頭を傾げた。
俺は大きく頷き言った。

「うんそう。あの人の名前が載ってないの。」

「あの人...」

そうそうあの人。そう口にして俺は笑う。
「あの人の名前を載せてないこの教科書はほんとダメダメだよ。だってね、あの人凄いんだぜ。たしか紅蓮の鬼とか言われててさ、とっても強くてさ、そりゃもう凄いんだ。俺様はあの人が大好きだ。あの人は凄い。強い。良い人だし、ねえどうしてあの人載ってないの?伊達政宗とか長宗我部元親とか載ってるのにねえどうしてあの人載ってないの?先生。」


一つだって載ってない。
そんなのおかしくない?
だってあの人は確かに存在したんだろ?

「この教科書はあの人の存在を隠すんですか先生」


そう真顔で言えば、先生はおかしな事を言った。
普通は「何を言っているんだ」とか「どうした」とか言えばいいのに
やっぱりこの先生は優しいなと思った。
いや、おかしな人だ。
おかしな事を言った。


「泣くな。」


泣くな?馬鹿じゃないの?泣いてないしね。ほんと先生おかしい。

「泣いてねぇよ。」
「嘘だ泣いてる」
「泣いてないし」
「じゃあどうして頬に水が流れてる?それは何だ?」
「これは汗だよ。」
「汗は目から出るんだな。」

先生はからりと笑った。
いやいや先生。泣いてないしてゆうかそんな話したいんじゃないの。

「つまり先生。この教科書は足りない。」
「何がだ?」
「あの人の、名前。人生。終わり。全てだよ。」
「じゃあ、」


先生はまとめていた荷物を持った。結構な量の筈なのにそれを軽々と持っていた。

「じゃあ、その人の名は?」

「わからない。」

俺がきっぱりと言うと先生はやっぱり笑う。先生、笑ってばっかりだ。

「どうしてわからない?」
「忘れてしまったんだ。大切な事を」
「どうして忘れた?」
「来世では全て忘れて幸せなれなんて言いやがるから」
「いつ?」
「俺が死ぬ手前」
「猿飛は生きている」
「どうだっていいじゃない。この話。」
俺は机を叩いた。
それでも先生は言った。


「どうしてその人に執着するんだ?」

俺ははっきりと言う。

「あの人が全てだった。そして全てだから。」


だからだからだからだから。
俺はあの人の名を思い出したい
あの人の最後を知りたい。
あの人の顔が見たい。


そう言えば何回目かの先生の笑顔が目の前にまた現れた。

「なら図書館に行って、本を片っ端から調べなさい。きっといつか見つかる。お前のの中に生きるその人は、歴史の小さな片隅に残っているだろう。」


先生は確かに笑った。
笑って俺の肩を一度叩いて、背をむけて。それからゆっくり進んで「それじゃあさようなら」と教室のドアを開けた。


「気をつけて帰るんだぞ猿飛。」


うんそう。あの時先生は確かに笑った。
何度目かの笑顔。
だけどね。
先生もこの教科書と同じく変だよね。


「あ、そうだ猿飛。」


先生は閉めたドアをまた再度開けて顔だけを見せるとそのままの笑顔で言った。



「俺はそんな事よりも、その人に仕えたたった一人の忍の存在を載せるべきだと思うんだ。その人の死ぬ際の事もかねてね。」

先生は言った。
確かに笑って、そして泣きそうだった。
ような気がした。


「最後に彼は主の命令を背いたんだ。背いて主の為に死んだ。でもそんな事教科書なんかに載っていない。どこの本にも載っていない。主の人生はどこかの本に載ってると言うのに。」




俺は苦笑した。当たり前じゃん先生。
だってそれ俺だもの。
道具で忍で俺だもの。
載るはずないじゃない。
そんなたった忍び一人の死が載るわけないじゃない。



そんな事どうでもいいからさ!



あの人の名前なんでしたか?
あの人の最後はどんなでしたか?

俺の最後とか、どうでもよくないですか、真田先生。














(来世には全て忘れていよ。こんな冷たい血は忘れろ。戦も全て忘れよ。来世では笑って幸せに生きよ)
(アンタの、こ、とは)
(俺の存在もだ)


(はっ!お馬鹿、さんっ...)
永遠に、
永遠に、覚えていてやるんだからな
せめて、貴方様の存在はね。


(世界が忘れても俺様が覚えています)


















.
意味わからん。
とりあえず幸村は全て覚えてます。
逆らった命令は幸村の事を全て忘れろという命令でした。
中途半端に覚えてるさっけさん。
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