!続きもの
!輪廻転生
!元親がかなり弱いです











じりじりじり。アスファルトが熱に泣かされる。
すごく熱いのはきっと今真夏だからだ、と元就は思った。
販売機で適当に選んだジュースを片手に持ちながら、いつもの場所、公園の白いベンチにペタンと座る。
暫く彼はぼぅとする。それは休みの日彼がいつもする習慣だった。
人気がない公園の白いベンチに座り、ただぼぅと居座る。
それは限って晴れの日。
理由はある。晴れの日でないと駄目だからだ。
あの日約束した言葉がそう差していたから。


「いつの間にか、女々しくなっている」


元就は目を細め、空を、太陽を見つめる。
直視出来ずに、直ぐに瞳をつぶった。


「俺は馬鹿だ」


例えば。
あの太陽が、今己に微笑みを向けてくれなかったらどうする?
例えば。
俺に向けてくれたあの微笑み方を忘れてしまっていたらどうする?

どうして己はあんな些細な約束に捕らわれ続けている?
今では沢山の友達も家族もなにもかも大切で、かけがえのないもので溢れかえっているというのに。嗚呼それでも。




(―そうだなぁ...あのお天道サンが―――)




なんだっていい。なんだって構わない。
太陽が己を照らす事が無いにしても
太陽が微笑み方を忘れてしまったとしても
己に沢山のものがあったとしても



あの太陽はあの時約束を押し付け笑ってくれた。
だからそう、答えを返せなかったあの時に変わり、今あの笑みに答えたい。
嗚呼どこ
あの太陽はどこに輝く?

しかし己からは動かない。
約束、そう約束なのだ。



(...あのお天道サンが)









「ねぇ聞いてもいいすか?」
突然声をかけられ慌てて元就は目を見開いた。
目の前には一人の青年。元就と同じくらいの、それ以上かくらいの青年だ。
白髪なのか銀髪なのか分からない髪を無造作に生やして、左目には白い眼帯をつけていた。
元就は無表情で見上げる。唇だけで「どうぞ」と形を作った。
「あなた毎日ここいますよね?」
その低い声を耳に響かせながら、元就は小さく頷いた。
「なら俺を見たことありませんか?」
そういうその青年の目は、不安げなのだと元就は悟った。
「俺、じつは二年前にすぐこっちの道路で車で跳ねられちゃったらしく、その前の記憶がさっぱり無いんです。だから空っぽで。“俺”の頼る人は誰も居なかったんです。親もいないし、友達は居たけど全然覚えもなくて。懐かしくなく、全部が嘘のように思えちゃって、記憶を探ってもさっぱりわからないんです。いつもいつも事故にあった場所に行ってもわからないんです。」青年は前髪をクシャリ、と乱暴に握りしめながら急いで喋る。
元就はただ黙って見上げながらその言葉一つ一つをすくい上げていた。

「あなたはいつもここに居ますよね?二年前もここにいましたか?俺を見たことありますか?教えて下さい!俺は、誰ですか?」

青年は自分の言ってる事が滅茶苦茶なのだと自身でもわかっていた。
元就は目を細め、青年を見つめた。


「お前の名前は、長宗我部元親。」


青年はその元就の呟きに片目を見開いた。

「やっぱり、嗚呼、あなた俺を知ってるんですねっよかったあなたは俺を」
「いや、お前と俺は初めて会ったし、俺はお前を知らない」


その言葉に青年の目にまた不安が生まれた。元就は続ける。


「だけど、まあ、いいんじゃないか。何も思い出さなくてもいい。たとえ輝きを忘れたとしても、泣いたらいい。そこで生まれる新しい光はきっと俺らが見たことない輝きとなる」


なぁ元親、と元就は言う。
元親と呼ばれたその青年はただ元就を見つめていた。


「太陽がこの世界を照らしている内は、俺はきっとお前の大切な人でいなければならない。そしてその時はいつまでもお前は俺を探してくれる。これは、あの時の約束だ。」

だから、つまりは、輝く光を作るのは昔からではなく今でもいいんじゃないか?

元就はそう四百年ぶりの戦友に、そう言った。


「嗚呼、」

青年はぐしゃぐしゃと顔を歪める。

「貴方、変だよ、変だ」


そして青年の頬には一粒の雫がこぼれた。

「だって、誰に対しても思わなかったはずの懐かしいが、貴方を見た瞬間頭の中で騒ぎ出したんだ」


(嗚呼、見つけた。)


そう微笑んだんだ。


青年は泣いた。わけわかんないよ、アンタ誰だよ、アンタ俺のなんなんだ。
譫言のように呟きながら泣いた。そんな青年を見つめて、元就はそこで初めて新しい表情を作った。






太陽の泣き顔に、微笑みを。







「俺は、毛利元就という。約束をしよう、元親」

互いに大切に想い、想われよう。
あの太陽がこの世界を照らし続けるかぎり互いを探そう。
そうして笑おう。


それが四百年前の、お前の笑顔に対する俺の答えだ、元親。














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果てしなく意味わからんので雰囲気に呑まれて下さいお願いします←
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