!輪廻転生
!大学生幸村と子佐助のシリーズとリンクしています
!「運命はただの偶然」の後の話
!前世で政宗と佐助は犬猿の仲設定














俺は真田幸村が好きだ。
おっと。けしてそんな変な意味ではない。好きだがloveではねぇ。likeの方だ。
親友としてならばloveなのかもしれないが。

理由はいろいろあるのだが、一つに絞るとすれば、

燃えるのだ。アイツと居ると。

剣道で初めて相手になった時俺は奴の魂ってのに惚れた(見込んだ、と言ってもいい。けしてそういう意味じゃない)。
真っ直ぐ。小技は使わず真っ直ぐに力強い一本を決めてくる。
それを見てる時、俺がではなく、俺の血が騒ぐ。しかも勝手に騒ぎやがる。
おかしい話だが、本当にそうなのだ。


(ずっとその姿を待ちわびていた。)


そう言うように、血はいつも騒ぎ出す。
俺はいつも酷くそれに従う。
それをニヤリと笑って、俺の太刀打ちを受けるソイツを知っているような気がして、すぐにどうでもよくなって、最後に

「やはり強くなりましたなぁ!政宗殿!」

引き分けのくせに上から目線に言う奴に舌打ちながら、その毎日が楽しくて、俺はいつから仲良くなったかすら忘れるほどに、常に奴と一緒に居た。





















今日お前の家に泊まっていいか?
そう聞くと、いつもと違い幸村は眉を潜めて考え始めた。
いつもなら「誠でございまするか!?」と目を輝かせるくせに。
「....A-...何かあるのか?」
「...はぁ、まぁ...。」
幸村はゆっくりと頷く。
「実は、...親方様の親戚の子を預かっているので」
「子供!!?」
お前で大丈夫なのか!?と叫ぶと、失礼な!と奴も叫んだ。
「でもお前、課題のレポート終わらせてねぇんだろ?」
「て、手伝ってくださるのですか!?」
「そのつもりで泊まろうと思ってたんだがな」

それを聞いた幸村は苦笑した。そして肩をすくめた(ただ幸村はその仕草が物凄く下手くそなのだ)。
「....じゃあよ、夜中に帰るからそれまでお邪魔して手伝ってもいいが...アンタはどうだ?」
「な!ご迷惑では!?」
「ねぇよ。じゃ、決定な。その子供が寝れるように9時には帰るからよ。」
だから晩御飯はよろしくな。そう言って俺はソイツに背を向けた。




















「どうぞ」
ノックを三回鳴らせば奴が満面の笑みで迎え入れてくれた。
季節が夏だからどうも家の中がムシムシしていた。俺は顔を思わずしかめる。
「暑いでございますか?政宗殿」
その問いに俺は正直に「yes..」と答える。幸村は苦笑しながらクーラーに向けてスイッチを入れた。冷たい風邪が少しだけ髪の間を通る。
幸村は立ち上がって、一度寝室へと入っていった。が、直ぐに出てきては、「頼むので、しばし静かに待っていてはくださぬか?」と言い出した。
「寝てんのか?」
「はい。ぐっすりと」
幸村は微笑んで寝室を見つめていた。なんだか妙に親みたいで、コイツはきっといい父親になれるな、と感じた。まぁコイツを落とせる女がいるかどうかの話だが(そういう話は一切コイツはダメなんだ)。
幸村は「夕飯の買い出しをしてきまする」と言って音を立てないようゆっくり歩きながら、家の中から出て行った。


「.....ふぅ」
誰もいなくなった空間でため息一つこぼす。
ふっ、と部屋の壁を見れば、クレヨンか何かで書いた絵が何枚も画鋲できちんと横にぎっしりと貼られてた。

(仲、いいんだな。)

これはきっと、話に出てきた少年が描いた絵なんだろう。それにしても上手い。10歳くらいとは聞いたが、なんだこの上手さは。すべて感嘆を上げるほどにそれら全て素晴らしかった。
幸村の絵がほぼしめていた。八割程度が幸村で、あとはだいたいが知らない女の人だった。きっと少年の母親だろう。

「.......ん?」

一つ異様な絵があった。
一人の男がいやらしく笑っていて、その上から赤いバツ印が大きく上書きされていた。明らかに怒りが見える絵だった。
「幸村の野郎、よくこんな絵貼ったな...」
そこで一つ違和感を感じた。
その絵の男、どこかで見たことがある気がした。
いや、見たことある気がするどころではない。
それは、自分自身によく似ていた。
黒髪、つり目、高い鼻、肌の色、全て全て。
似ていた。絵と自分が。

(....HA、まさか)

まさかそんな筈はない。何故なら俺はその少年に会った事が無い。
それに、この絵の男は眼帯をしていた。自身にはそれはない。両目、いたって普通だった。
そうだ、これは俺じゃない。

確信したと同時に、机からコトン、と音がしたような気がした。
疑問に思い振り向けば、直ぐに固まってしまった。
自身と、テーブルを挟んで真っ正面にオレンジ色の髪をした少年が頬づきながら座ってこちらを見ていた。

「ひとの絵かってに見ちゃうあくしゅみさ〜ん。こんにちわ」

少年はそう言ってヘラリ、と笑った。

悪趣味?勝手に?いやいや、貼られてるということは見てどーぞ、って事だろうが。

「ちがうよ。」

少年はいきなりそういった。

「そもそもアンタここにすんでないわけだし?見られるとかおもってはっていたわけじゃないし、ここのへやにいるはずのない人が何かを見ることは、“かってに見た”ことになるんだよ?」

少年は笑みを崩さない。あまり上手く回らない舌でよく言いまくられたもんだ。最近のガキは凄い。

「お前、俺が思っている事が分かるのか?名前は何ていうんだ?」

すると少年は目をまんまるくし、ぱちくり、とまばたきをした。

「あんた.....ああ、なるほど」
どうりで、とか、だから、とか少年は一人でブツブツと呟いていた。
しかし直ぐにそれは止めた。

「ま!どうでもいいや!アンタなんて!」
少年はニカリ、と笑う。しかしその笑顔はどこか作った風な笑顔だった。

よく見れば見るほど少年は綺麗な顔をしていた。あと何年かたてばきっと淡麗な男へと成長するだろう。
「だから、お前の名前は?」
俺の問いにその少年は意地が悪そうに微笑むと、肩をすくめながら言った。
「さぁ?なんでしたっけ」
「馬鹿にしてるのか?」
「ああ、ナナシノゴンベエです」
「馬鹿にしてるのか」
「あれ?そうだけどきがつかなかった?」

なんだこの餓鬼は!
心の中だけで叫ぶ。
一応、言ってはおくが、俺は子供に好かれる方だと思ってる。
この前なんか、近所の子供(名はたしかいつきといったか)がわざわざ俺の家に訪れ、焼いたクッキーを届けてくれたりした。
だからそう、今回も幸村の家に子供が居る、と聞いた時は、一緒に遊んでやろうとかそんな事を考えていた。
考えていたのになんだこの糞餓鬼は!!


「そーんな眉間にしわばっかりよせちゃったらさ、しわしわだらけになっちゃうよ?」
少年はおどけたようにそう言いながら笑う。
その笑顔に若干怒りを憶えた俺に、少年は「はい、どーぞ」と入れたお茶を差し出してきた。
「.....」
茶からは、勢いがいい湯気がモクモクと出ていた。
「おい..」
「はぁーい?」
「今の季節は?」
「ばっかじゃない?猛暑にきまってるじゃん!!」
馬鹿はお前だ、と言いたかった。




「ほんと、せわがかかるお人だよねー...」
少年はポツリと呟いた。
「あ?」
「真田のだんなはほんと、むかしからせわがかかるよなァ...」
まるで少年は独り言のように話す。いや、きっと独り言なんだろう。
「前とおんなじようにまた、おれさまがだいきらいなヤツに目をつけるなんてさー」人をみる目がないのよねー、と少年は小さく呟いた。
少年の言っている意味が俺にはよくわからなかった。
「嫌いな奴?」
俺がそう問えば、「あいつ」と少年は先ほど見ていた、バツ印の顔の絵を指さした。
「.....相当嫌いなんだな」
「だいきらいなの。いつもじゃまばっかりしてくる男でさー」
少年な欠伸まじりにそう言って、背を伸ばす。目を小さな手で一生懸命かきながら言った。
ふっ、と少年が顔を上げ俺を見た。
ぞくり、と背筋がたったような気がした。
少年の目は、子供の目にしては鋭く、冷たく感じた。
まるで威嚇をしているかのように。
だが、口元だけはつりあげて笑っていた。
視線を向けている先を、まるで馬鹿にするように。



俺はこの表情を知っているような気がした。この表情が大嫌いだったと感じた。

しかしどこでこれを見たのか俺自身はさっぱりわからなかった。
忘れているような気がした。
忘れている事すら忘れているような気もした。

嗚呼、苛つく。
俺は、この表情が大嫌いな気がする。


「ねぇアンタ、おれさまのこときらいでしょ?」

少年は口元だけくすくすと笑う。

「そんなアンタにとびっきりなニュースあげるよ!」

今度は楽しそうに笑った。
それなのに、何故だ?
この眩しい笑顔にさえ、苛立ちを憶えた。









「あの絵、アンタだから」



その笑顔が懐かしく感じたのは何故だろう。
懐かしく思った笑顔が大嫌いだと自覚したのは何故だろう。

「ねぇアンタ、おれさまのこときらいでしょ?」

この質問も、嗚呼、昔聞いたことあるような気がした。
問いてきた相手も、いつだったかも、覚えてはいないが。


その時答えた言葉は、きっと今でも変わらない。










「大嫌いだ!」


正直に叫んだ。


とりあえず幸村、はやく帰ってきやがれ。
きっとそれは少年かて同じ気持ちだ。




似た者同士は嫌い会う




(ほんとその冷たい目が己と似てる気がして)
(大嫌いだ)
(気が遠くなるほど、ずっと前から)

















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