!『運命はただの偶然』とリンクしています
!狂気・血表現アリ
!輪廻転生












戦国の世で死んでから、200年近くたった時代に、また俺は生まれてきた。

時は江戸時代。
俺はまた忍として生まれ変わっていた。
名も高い忍で、前の記憶がある上に、知識も豊富であったため、優秀ではあった。
俺は当然の如く、いつかは旦那と巡り合い、また仕えるものだと思いながら前世と同じように生きる屍として忍の人生をおくっていた。
ある暗殺任務があり、俺は夜中に仲間の忍二人と城の中へ侵入した。
俺は見張りの役を受け持っていたので、木の上の枝に跨り、仲間の帰りを待っていた。
しばらくすると、仲間が帰ってきた。
仲間の一人は獲物であったこの城の主の一人息子にあたる少年の首を乱暴に持っていた。
血が地面にポタリポタリと落ちている。
今日は上手くいった、見張りですら寝てたんだぜ、みろよこいつの顔女みたいだ、と仲間二人は口々に言う。
俺は少年の首に手を伸ばした。


それは、紛れもなく旦那で。


寝てたのだろう。顔は安らかな寝顔のままだった。睫毛が相変わらず長い。きめ細かい肌。茶色で長い髪。
嗚呼、嗚呼っ、嗚呼!!
旦那だ。間違いない、旦那だっ。

俺は泣き叫び、仲間の二人の首を斬った。
俺は旦那の首を抱いて泣いた。
気がついた時には、自分の腹部にクナイを刺していた。
瞳を閉じた。すると俺はあっけなく死んだ。












次に生きたのは、世界大戦中だった。
今度の俺は、女だった。少し裕福な家庭で育っていた。
相変わらず俺は旦那を探していた。真田という名字を見かければすぐさまその人を訪ねた。幸村という名前を聞けば、その人はどこに居るのか、と必死に聞いた。
ある日、両親が家の為に結婚せよ、と言った。俺はすぐに否定をした。そんな暇、俺にはなかったからだ。
両親はそれを許さなかった。相手も決まっているとかなんとか言っていた。
俺はすぐに家を飛び出した。
いろんなところを転々と飛び回りながら、旦那を探した。
しかし見つける事が出来ず、数ヶ月後、俺は家に帰った。
両親は喪服姿だった。何故かと聞けば、俺の婚約相手だった青年が特攻隊に所属して、敵に突っ込んで立派にお国の為に死んだと告げられた。


その青年の名が、真田幸村だということも。それをぼんやりと聞いていた。
そんな、まさか、どうして、なんで。
口々に俺はそう呟いた。
名前を聞いておけばよかった。会っておけばよかった。話しておけばよかった。
後悔するがもう遅く。
彼が特攻隊に入ったのは、俺が家を出たと彼が耳にした、3日後だったという。
次の日、俺は紅茶に毒をたっぷりと盛って自殺を試みた。
俺は瞳を閉じた。すると喉元に痛みがはしり、俺は死んだ。














四回目の人生は、医者だった。
今までとは違い、日本では育たなかったが、両親が日本人だったので名前は日本人の名前だった。
四回目の猿飛佐助だった。
俺はアメリカで育ち、そこで優秀な医者として暮らしていた。
旦那の事は諦めずに探していた。
しかし一向に見つからない。
ある日、一本の電話が俺を呼んだ。
依頼だった。それは日本から。
臓器移植の為、俺に手術をしてほしいという依頼だった。
その患者はわずか12歳の子供で、ガンを患っていた。
俺は金額と、その子供の事を聞いた。
金額は馬鹿にされてるかと思うほど安かった。
子供は男の子でスポーツが得意で元気な子で、

真田幸村という名前らしい。

金額的に断る筈だったその依頼をすぐに了承した。すぐに向かうと告げ、日本の飛行機のチケットを予約した。
やっとやっとやっと。
旦那とまた巡り会える、巡り会えるんだ。
指定された病院へ着けば、見知っている顔が居た。何百年ぶりの大将だった。
大将は泣いていた。俺を見つければ、驚いた顔を作った。
お前だったのか、そうか、と大将は言った。
そして、手遅れだ、とも呟いた。
俺は病室へ駆けつけて勢いよく中へ入った。
旦那は、痩せこけていた。幼い顔立ちで、目をしっかりと閉じていた。
小さな手を胸の上に重ねられていた。
旦那は死んでいた。また先に逝かれた。
ただ、愕然とし、泣き叫び、小さな身体を抱きしめた。
しばらく泣いて、身体をゆっくり離し、俺はよろよろと歩いた。
窓を静かに開けた。後ろで大将が何か叫んでいたが気にしなかった。
俺は七階の窓から飛び降りた。
瞳を閉じた。すると身体が軋む音がして俺は死んだ。















それは四百年前、
旦那は一人の武人で、俺は一人の忍で。
旦那は俺の主人で。
俺は旦那のモノで。
ある日旦那はいつものように戦場に立っていた。
俺もいつものように旦那の後ろで立っていた。
旦那は、珍しく戯れ言を吐き出した。
佐助、俺はお前と共に居て、とても幸せであった、今まで有難うな、佐助。
ゆっくり、どこを見てるかわからない横顔を見せながら呟いてみせた。
何言ってんの、アンタ馬鹿じゃないのもしかして今日死ぬつもりなんですか〜。
そう言えば、旦那はこちらを向いて笑顔を見せた。最後の、笑顔だった。

戦い、傷つき、俺は限界を感じた。
これじゃぁ、旦那の足を引っ張っちまう....。
旦那の背中をぼんやりと見つめる。
そうだ。音もなく死のう。旦那が気がつかないように静かに意識を殺して死のう。
そう思ってゆっくり動きを止める。
遠ざかる旦那の背に唇だけで音には出さずに、だんな、と三文字を送る。
敵の兵が刀を振り上げる音がした。
旦那の攻撃が止まる。
止めてよ旦那、振り向くな、振り向くな、進んで、俺に気がつくな、旦那、振り向くな、旦那

旦那と目が合った。そして何か叫んでいた。手を伸ばされる。
さすけ、と旦那も三文字叫んでいた。
近づくな、間に合うな、早く俺を斬って。
肉が斬れる音がした。
旦那が俺に抱きついていた。旦那の背には深い傷があった。血が沢山でていた。
俺は目を見開き、とりあえず旦那を斬った敵兵の首を跳ね、旦那に駆けつける。
旦那は小さい声で、消えそうな声で俺の名を呼ぶ。
さすけ、もし、また生まれてこられるのであれば、最後の命令だ、さすけ、俺の側に、また一緒に居ろ、なぁ、さすけ
旦那はそう小さく苦しそうに言った。
わかった、わかったから旦那やめてよ死ぬなよ旦那、旦那!!
叫んだ時にはすでに死んでいた。
途方に暮れる。忍を庇うなんてほんと、お馬鹿さんなんだから。
御意、と呟き俺は瞳を閉じた。すると背中からの激痛がはしり、斬られたと自覚すると同時に、俺は死んだ。














今は五回目の人生だ。
疲れた、と自我を持った瞬間から思っていた。
何回旦那を探し、何回先に逝かれればいいのだろう?
それでも諦めきれないのは、彼が出会ってきた人間で初めて俺に居場所を与えてくれた人だったからだ。
俺は来月で10歳になる。父親は旦那を必要以上に探し回っている俺を気味悪がり、なんどか俺に暴力をふるった。
優しい母は、俺を何度も庇い、何度も怪我をした。
やがて、離婚。母が俺を引き取る事になった。
だが、母は仕事をしていなかったため、仕事を探すしばらくの間は食い扶持が少々困った。
二人となればそれは大変だ。そこで母は、なくなく俺を遠い親戚に預ける事を提案した。仕事が決まり、安定次第迎えにくると約束された。俺はそれを了承した。
車の助手席で俺は身体を揺らす。
道で見かける人をじっくりと眺めていた。でも、やっぱり居なかった。
母が運転しながら、挨拶はちゃんとね、とかもうすぐよ、とか静かに言った。
アパート前にゆっくりと車が止まる。どうやらここのようだ。俺は車から出る母をぼんやり見ながら欠伸をした。
そういえば、前世の事ばっかりで寝てなかったな、と思い出す。
俺は瞳を閉じた。
すると、







「貴女が、猿飛殿でごさいますか?」








嗚呼、久しぶりのあの声だ。
まさか、都合が良すぎる
ああ、きっと俺泣いちゃう。
目を開けて、あの人が映っちゃったら、俺、泣いちゃうよ。

ゆっくりと瞼を開けた。



(瞳を開ければ、久しぶりに映した、探し続けた、懐かしすぎる光がまぶしくって仕方がなかった)



大学生になったんだね旦那。
とりあえず、運命だよね。
旦那、嗚呼お馬鹿さんっ
抱きついていいよね、
畜生、遅すぎだってのっ!!



あーあ、やっぱほら
俺様、泣いちゃったじゃんか。


(まぁそれはお互い様だったけど。)


ただいま旦那。
おかえり旦那。



もうね、瞳は閉じない事にした。
光が一瞬でも
消えてしまうのも惜しいからさ。







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