!『塗りつぶされたメッセージ』とリンクしています
!佐助視点











「あー...やっべ浸けすぎた」
墨の中に突っ込んでいた筆を液から離せば、どぼり、と音がした。
このまま真っ白な紙に走らせれば字とは呼べなくなるモノが書けるだろう。しかたがないのでしばらく筆を墨の上でぶらりと宙に浮かせることにした。


(俺様が手紙だなんて、ほんと..らしくねぇ)


佐助は自嘲気味に笑った。そう笑うしかなかった。本当にらしくなかったからだ。

「あっはー。俺様、男に文を送るなんて乙女っぽーいっ」

さらに笑う。だがこの笑みは引きつっていた。

もし俺が。
その乙女だったなら。
ルンルン気分でサラサラと筆を紙の上で踊らせた事だろうに。










明日、俺は死ににいく。

この文の相手のために。











ひと月前に武田の虎と呼ばれている大将は負手を負った。魔王との戦の中であった。世間的には今は死んでいる事になっているが、回復しだいまた立ち直ると彼はそう言った。
しかし、大将が倒れた事により戦はかなり傾いた。ほぼ此方が負け腰で、佐助が所属している隊は退くのがやっとだった。
武田隊、真田隊は戦より撤退し一時休戦となった。佐助にとって不幸中の幸いは、自分の主に深い傷がなかったことだ(大将を守りきれなかったのがかなり悔しそうだったが)。

が、安心していたのも束の間だった。
大将が滅んだと勘違いしてくれていたのはありがたかったが、魔王側は容赦ないらしい。
戦力をほぼ失いつつある真田を滅ぼすために、此方へ兵を向けている、と情報をいれた部下が長である佐助に告げた。
佐助の主、真田幸村はそれは強いお方であった。確かに魔王がむきに潰そうとするのもわかる気がする、と佐助は思った。
そんな時に、大将からの命がくだった。
真田の城へと向かっている兵達を上手く遠くへ引きつけさせよ、と。
大将の顔は苦々しかった、と佐助はぼんやりと思い出す。傷が深いのもあるが、大半はそれが原因ではないだろう、と佐助はわかっていた。


この命の意図は囮。


真田幸村に化けた自分が敵を誘い引きつけ、主から遠ざける。そして、


主のかわりに、首を討ってもらう。




佐助はすんなりとそれを受け入れた。
何故なら、命がなくともこれから勝手にやろうとしていた行動だったからだ。
真田幸村がこの城から出て、大将の所まで非難するには相当な時間がかかるだろう。それだと遅いのだ。佐助はわかっていた。この方法しか、主が助かる方法が無いのだと。
そして思ったのだ。自分の主は、これからも先、生きていかねばならない存在なんだ、と。








「長、何をしているのですか?」
部屋に訪れた部下は珍しい佐助の様子に首を傾げる。
「んー?あぁ、これ?」
文書いてんだ、珍しいだろー?と佐助は笑う。
「真田の旦那に、さ。最後の言葉をね〜」
「最後?」
「俺様、明日囮役なのよ〜」
最後まで苦労担当なの、と付け足す。

「そうですか..」
さすが忍だと佐助は笑った。一切感情を出さない部下に感服する。

「しかし、長。紙には何も書かれておりませんが...」
「そうなのよ〜!いざとなったら何書いていいかわかんなくて、さ!」

にへら、と佐助は笑った。そんな佐助に忍は立ち上がりながら無表情で言った。

「改まった言葉ではなく、思いのまま書けば宜しいかと。」

「....思いのまま、ねぇ」

「それでは長、私はこれから情報収集なんで」
これにて、と一瞬風が起こり、風が止んだ頃にはすでに部下の姿はそこにはなかった。

行ってらっしゃーい、と佐助は部下に最後のねぎらいをかけた。




(思いのまま...)


筆を紙の上へと移動させる。


自分が忍の世界に入ったのはいつだったか...。
気がついたらすでにクナイを握ってた。
血が当たり前になっていた。
感情を殺すのは絶対だと思っていた。





(人を殺める術を教えてくれたのは知らない忍の誰かでした)





いつだったか。
小さな子供が言ったのだ。


『つらいのならば俺がおまえをまもるぞ、さすけ』


手の甲にあった痛々しい自分の傷を、悲しそうに見つめながらさすってくれたその子供は、弁丸、といった。
初めて会ったその子供は、すぐに佐助の名を覚え、呼び、守ると言った。
佐助にはそれが奇怪だと感じた。こんな種類の主の事は習った事がなかったからだ。
その子供はよく笑い、よく泣いて、よく佐助に引っ付いた。
忍は道具である、と言った日はあまり見せない怒りを見せてた、と佐助は思い出す。その子供の一つ一つの行動が、佐助の幸せになっていっていたのだ、と感じればこの上ない喜びが、佐助の中で溢れだした。




子供は、自分を変えてくれた。
人を殺める道具から、何かを守る忍へと、変えてくれたのだ。



(そして俺の幸せと大切な存在を教えてくれたのは幼い貴方でした。)



そして自分は、
人を殺す事を教えこんだ忍にも
かけがえのないものをくれた子供にも


(俺はどちらにも感謝します)


(大切な存在である貴方を守るために戦えるからです。)







嗚呼、懐かしい。
あの頃は旦那はあんな小さかったなぁ。
おっきな声で俺の名を呼んで
すごくいい笑みを浮かべたんだ。
あの笑顔は太陽でさえ顔負けなほど、まぶしかった。





(だからどうか旦那、幼いあの時の眩しい笑顔で笑ってくださいな。)




今も変わらず、ずっとずっと。
アンタはそれが一番似合ってるって。






だから旦那、
泣くなんて行動は野暮だぜ?
アンタが泣くのはスッゴくやだからさ。
頼むから笑ってくれよ?



『わらえ!佐助!』



小さな貴方が言った言葉
今度は俺が言ってもいいかい?




「笑ってくださいな、真田の旦那」




小さくそう、佐助は呟いた。
出来上がった文を見つめる。

(はは。これじゃダメだ。絶対真田の旦那泣いちゃうよ)


それに俺らしくないしね。


佐助は筆を墨たっぷりにつけると、それを勢いよく文字の上へと滑らせた。


そうだ。これが俺らしい。


本当の気持ちは隠すんだ。
ぬりつぶすんだ。
バレないように。
彼の重荷にならないように。



それが一番俺らしい。




苦笑。




(思いのまま...)


先ほど居た部下の忍の言葉を思い出す。


佐助は静かに瞳を閉じた。


その瞼の裏に映ったのは、今まで一緒に過ごした主の姿。


幼き日も、凛々しい今も。


貴方のその笑顔は、
いつも俺の闇を照らす光だった。




佐助は眉を潜め、力をいれた。

らしくないものが、佐助の頬を濡らす。

















(俺は、笑うアンタと共に、まだ、これからも、ずっと、)



(生きたかった。)

















そのメッセージは文字にすることなく、
心の中で、そっとぬりつぶした。



























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佐助は本音を隠す子と見た...!←
逃がすために佐助が囮なったのになんで幸村が城にいるかっていうときっとあれだ。もうあそこは親方様のお屋敷なんだ...!親方様は優しいから幸村とかに部屋与えちゃってるんだっ...!佐助は勝手に倉庫を改造ww← それで佐助は囮になる一足先に親方様の様子を見つつ旦那にお手紙、でこの後お団子作り、と!←?
話が噛み合わないぞ!とかそんなの関係ない!だってBASARAだもの!←
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