!輪廻転生な学パロ
!幸村記憶なし
道がわからない。よくあること。
だから迷った。よくあること。
理由は引っ越してきたばかりだから。それは当たり前。
だから入学式に遅れる。お決まりのパターンだ。
三階から人が落ちてくる。
....いやいや。
いやいやいや。
あってたまるか阿呆。
「わからぬ、」
幸村はぽつりと呟く。それが妙に寂しく響くのがむなしかった。
もし自分が高校生ではなく、小学生であれば泣いていたところだ。なのでそこは涙をぐっとこらえる。
嗚呼、だれか嘘だと言ってくれ。
「だれが望んで新学期早々、しかも入学式で遅刻せねばならぬのだ」
ぶつけようのない怒りが自分の中でうずめく。
道音痴な故にここの学校が広いのもいけない、と彼は思う。
建物も無駄に多すぎる。迷う要素が沢山あるではないか。地図ぐらい作るべきだ。嗚呼、もう大遅刻決定ではないか!!
次から次へと不満がモワモワ、と己の中から湧き出てくる。
「あああ!!駄目だ!!やはり政宗殿と一緒に行動するべきだったのだ!!」
中学生からの仲のよい友人もここの学校に入学した。が、彼は別のクラスに割り当てられていて、元々顔が広いらしく(お金もちでお坊ちゃん故だからか)すぐに同じクラスの友達ができていた。
幸村は場の空気を読んで、中学の友人とその場で別れた。のが間違いだったと気がつくのは今更のことである。
(俺はこのまま式に出れないのでござろうか?嗚呼、なんたる不覚っ!!一生の不覚だ!!)
校庭まで来たものの、体育館がどこにあるかさえわからないからもうどうにでもなりやしない。
頭を抱え、しゃがみこむ。
唸るのも面倒になり、黙って己の影ばかりを見つめてた。
嗚呼。この際、驚かないから影よ。動いて俺を体育館へと導いてはくれないか?
そんな身もないことをぽつり、と呟けば、「御意。」
、と聞こえたような気がした。
否、聞こえたのだ。
己の、頭上から。
幸村はゆっくりと顔を空へと向ける。
その瞬間、幸村の頭は真っ白になった。
降ってくる。
大きな物が。
それは明らかに人間。
「.......なっ!?」
幸村が非常事態だと気がつくには時既に遅し。それ、は地面に落ちた。
だが驚くぐらいそれは酷く小さな音で舞い降りてきた。
トスッ、と。
しかし、落ちてきた当の本人は意外にもそれが衝撃だったようで、顔をしかめては、
「痛っってぇ〜っ!もう、三階から飛び降りるのはやらないほうがいいよねやっぱり!」
と言いながら、靴の上から足の裏をなぞった。
そして、ポカンとしている幸村に気がつくと、ソイツは笑って話しかけてきた。
「アンタ、新入生でしょ?」
その問いに、呆気をとられていた幸村は正気に戻り、コクコク、と正直に頷いた。
すると、その人間離れしたソイツはニコリと人懐っこい笑顔を作り、躊躇もせずに幸村の手を握りしめて駆け出した。
「おわっ!」
思わず転びそうになった幸村は何とか体制を整え、彼のペースへと合わせながら走る。
何故だろうか。
この手が懐かしく感じるのは。
名前を聞きたい。が、自分はその人を知っている気がした。知っているが忘れているような感覚がした。
否、多分きっと自分達は初めてあった。
けれども幸村はそういう気がしてならなかった。
名前を聞く変わりに、質問する。
「あのう!ど、どこへ行くのでございまするか!?」
己の手を引いている目の前の青年にそう聞けば、青年は此方を見て笑った。
「どこ、って...体育館でしょー?」
当たり前のように彼は言った。
そうか。あの一人言が彼の耳に届いていたのだな。恥ずかしい。が、これは助かる。自分は今、この人に感謝せねばならないのだな、と幸村は思った。
「あ、有難う!!」
「いーえ、そいつはどーも」
どうしてそちらもお礼を言うのだ、と幸村は苦笑した。
「はいよっと!!ここを真っ直ぐ行きゃぁ体育館だよ。」
いきなり立ち止まったかと思えば、青年は道の先にある建物を指差し「アレね、」と呟いた。
「そなたは?」
「俺様?サボりだからね〜」
掌をひらひら〜と見せてそう言うと、青年は来た道を戻りだす。
自分のためにわざわざ走ってくれたのだ。なんてお優しい方なのだろうか、と幸村は思った。(不真面目な点はよろしくないと思ったが。)
そしてハッとする。
あの人に走らせた自分は何もせずに、しかも名乗りもせずに今、別れようとしているのだ。
なんとも失礼極まりない事だろうか!!
幸村は小さくなりつつある背中へと叫んだ。
「待たれよ!!橙色の方!!」
「それ俺様の事?」
くるり、と橙色の髪を持つ青年は苦笑した顔で振り返った。
「なーに?まだ何かあるの??」
「いや、俺の名をまだ名乗ってないと思ってな!!」
幸村は息を思いっきり吸った。そして自分の名を告げる。
「俺の名はさな」
「真田幸村ね。知ってる。」
「.....は?」
「知ってるっての。真田幸村クンでしょ?」
な、
「何故知っておられるのだ!!??」
心底びっくりしながら幸村は声をさらにさらに張り上げた。
そんな幸村に彼は幸せそうに苦笑しながらペイントが描かれた頬を小さく掻いた。
そして当たり前のように呟くのだ。
「だって俺様忍びだもの。」
(俺様の名前は猿飛佐助。佐助って呼んでね、真田の旦那っ!)
橙色の影はそうにっこりと笑った。
(お久しぶりです。俺の主人)
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先輩な佐助設定ですね。
世話好き佐助大好きです←←