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「ばっかじゃん?」
そういって、猿飛佐助はへらり、と笑った。その顔は、言葉から読みとれるように、人を小馬鹿にしたような、そんな表情を正直に出していた。それを見つめながら、ただ自分は苦笑してしまう。

「ああ、そうだな。」

そう言って、すぐに苦く笑うのを消した。残るのは、きっと、猿飛佐助を真っ直ぐ見る、至って真面目な己の表情。

「ちょっと、あんたさ、それ本気?」
「冗談だと思うか?」
「思うさ。だって、」

そこで、猿飛佐助は口ごもった。妙な沈黙の間には、人混みの色んな会話が突き刺さってくる。
殆どが、剣道の話で、まぁここが剣道試合の大会会場故に、それは当たり前なのだが、それが耳障りだと感じる己が、場違いなのかもしれない。ついでにいえば、目の前の、橙色の彼もだ。


己が出る大会に誘ったのは、初めてだった。


誘った、よりかは強引に連れてきた、の方が合うかもしれない。
彼、佐助は面白いくらいに己の事を嫌っているから、きっと普通に誘ったとしても、来ないことは分かっていた。
だから、無理やり家から引っ張って連れてきた。抵抗はされたものの、荒いような抵抗まではされてない。こちらの身を案じたのだろう。大会、だと言ったのが正解だったかもしれない。己は、そんな佐助のさり気ない、隠された優しさを知っている。誰にも、教えるつもりはない。


好きだ、と。
潔く言えば、面白いくらいに仏頂面がぐにゃり、と歪んだ。
昔から思っていた事だった。
あれは、一目惚れだったのかもしれない。
高校の入学式、満開の桜が舞い、大きな木の下に佇む橙。
ちらちらと見える桃色を背景に、悲しそうで、でもどこかへと期待を抱いたように震わせた、髪と同じ色を滲ませた睫が、印象的で、何より、綺麗だった。
それにどれくらい片目だけしかない目が奪われていただろうか。
気がつけば、此方を見て、呆れたように苦い笑いを見せた、彼がいて。


――なんだ、アンタかぁ...――


そう言われたのが、いまでも鮮明に眼球の奥底に映るのがわかる。脳に焼き付いている、と言ってもいい。
どう話せばいいか、わからなかったので、とりあえず何かしら声を出そうとした一言がか細い声になって外に溢れ出した。


『こんな所で、なにしてんだ、』


その言葉に、橙の彼は笑って、それは悲しい笑い方で笑って、正直に答えた。


『大事な人が見つからないから、死にたいの。』


その答えは、ただの思いであって、質問の答えではない。だけれども、なぜか己は、それが非常に大切で、彼自身の思いの答えだと知った。そしてそれと同時に、その答えのさらなる答えが、自分にならないだろうか、彼を己が生かしたいだなんて思った。
大事な人になれないだろうか。
愚かにもそう思ってしまった時点で、己は彼の、消えそうに、悲しく笑ったあの表情に、惹かれたのだ。







「寝てから言ってよ、そんなことはさ」
「寝言じゃねぇんだよ馬鹿」
「馬鹿はどっちだって話」
「お互い様だろ」

「アンタだけだよ、伊達の旦那」

呆れたように、佐助は言った。
俺は、苦笑しながら、それからじとり、と佐助を見つめ、言った。


「今日、本気で死ぬつもりだっただろう」


佐助はぴくりとも表情を変えなかった。そのまま呆れたような表情で、橙の髪をくしゅり、と掻いた。


「知っているならさ、そんなこと言わないでくれる?」


佐助が静かにそう言うものだから、ああ、やっぱり無理やり連れ出して良かったと感じた。
ドアを蹴破って、彼の名を叫べば、いやちょっと不法侵入、と風呂場から出てきた佐助の右手には剃刀が握られていて、浴槽にはいっぱいの水がはってあった。
その右手を掴んで、剃刀は浴槽にポチャン、と投げつけ、出かけるぞ、と言いながら、持ってきた自身のジャケットを彼に着させた。
文句を並べられたけれど、無視してれば黙った。これが一回目ではないから、悲しいものであると己は思う。


「あのとき、」

俺は、思う。
死なせたくないと思うのだ。
愛しいこの顔を、表情作らない死体にはしたくない。
どうせなら、見たことのない、微笑みを、見せてほしい。


「おまえは確かに言ったよな、大事な人が見つからないから死にたいんだ、と」


伸ばした手で、綺麗な髪を触りたかった。
ただしこれは願望だ。それを、現実にさせることなく、空中で進ませていた手を止める。


「だから、生きなければならないような理由を、おまえにあげたいんだ」
「....大事な人ってのはアンタじゃ」
「じゃないことなんて、...なれやしないとか、そんなこと、分かってる。だから、ここに連れてきた。」


わからない、と訴えるように、佐助は眉をひそめた。ふっと、その佐助の背景が、色づいた。己が一番、自身に似合わないと思っている色で、でも今必要としている色である。俺はそれを見つめ、自然に微笑んだ。


「夢をみるんだ。」


それは深い深い、闇の底。
そこにはおまえが座って居て、俺は立っている。
寝転がっているのが、おまえの大事な人だろう?
そいつは、馬鹿だからおまえを庇った。
俺は一歩遅れて、まぁ俺はそいつを倒そうと駆けつけたみたいだけど、それは叶わずに、横たわる、そいつを見つけた。
そこでいつもおまえは笑うんだ。
悲しいくせに、笑って、といっても泣きながら悲しみを隠しきれてない表情で笑いながら、小さく言うんだ。
死にたいから殺してくれ、だなんて。
俺は潔く刀を抜く。
酷く納得したからかもしれない。
おまえが生きる理由が無くなったのだと。
そこで、とうとう、俺もまた、涙が流れてしまう。
そして、ゆっくりと刀を振り上げ、夢がそこで終わる。



「でも、それは夢だ。おまえは、この世界で生きなければならない。違うか?」

「どういう、」

「大事なものは、きっとあるんだよ。死んで諦めんじゃねぇ、この馬鹿」


俺は笑った。間抜けな顔が、2つ見える。佐助はますますわからない、といった表情を。そして、その佐助の背景にうつる、赤い色が。
遠くからでもわかる。同様しきって泣いている。


「俺は今日決勝にいってな、Bブロックから勝ち上がってくるアイツと戦って、ぶちのめして、優勝してやるんだ。」

俺の視線が、自分ではなく自分の後ろなのだと気がついたのか、佐助はゆっくりと振り向いた。

そして、時が一瞬、止まったように感じた。
動き出したのは、どちらからだろうか。数歩だけ、あちらが早かったかもしれない。
動いたと同時に、彼らの恋はきっと生まれ、そして己の想いは消えたのだろう。


目を細め、その眼球に映るのは、離さないかの如く、きつくきつく抱きしめ合った男が二人。
その一人は間違いなく、己が愛しいと数秒前まで思っていた橙の姿で。
こちらからは、後ろ姿しか見えない。
果たして彼は今、どんな表情をしているのだろうか。
きっとその表情は、己が今までに見たことのない形をしているのだと思う。


「‥‥I loved you. 」


でもきっと、その表情を覗き見るのはおそらく自分ではないだろうと思った。





あの時殺した
罪滅ぼしに、
(今度はおまえじゃなくて
俺が、死んでやるよ。)










筆頭の恋が死んだという意味ですはい。
筆頭可哀想で申し訳ない!

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