佐助視点(現代) | ナノ







「すきだ、さすけ...」
ぎゅむり、と幸村は腕の中へ優しくやわらかく、抱き寄せる。
「ほんとうだ、さすけ...一生共にいよう....」
そう言えば、幸村は一時停止をし、次の瞬間「ぼんっ」と音をたてて顔を真っ赤にした。
「はははははははれんちでござる...!」
そう言って幸村は抱き寄せていたふかふかな毛布をふりまわしながら床をごろごろと転がっては叫ぶ。
「言えぬ言えぬ言えぬ言えぬ!あああ!はれんちはれんち...っ!」
真っ赤な色を保ったままの整った顔は、ぐしゃぐしゃと歪み、いつものきりり、とした眉は今では八の字にたれている。
つまりは泣きそうであった。
「....いかん」
幸村はぐっと涙をこらえる。
泣いては男として恥ずかしいと思ったからだ。
「おれは、男で、さすけを娶るのだ、立派に、ならなければ」
両手でぱしーん、とほっぺたをたたく。今度は違う意味で顔を赤くした。涙は、引っ込んだが。
「よし、今日こそ言うてやるぞ」
そう言って、立ち上がり、閉まっていた襖を開けようとし手を伸ばした時、伸ばした先、つまりは襖なのだが、それがすぱーんと勢いよく開いた。幸村はかなり驚き、勢いよく床の畳へと尻餅をついた。
「や、真田のおにーさんっ!恋の匂いがすっごくするねー!」
前田慶次だ。彼が満面の笑みを浮かべながら目の前に立っていた。
「けけけけ慶次殿ぉぉお!?いつからそこに!」
「布団を取り出したあたりから?」
「は、はじめから...」
「いやぁー!ここの門番さんやっさしいねー!あんたの友達っつったらすぐ通してくれたよ!」
門番殿ぉぉお、と幸村は真っ赤になりながら叫ぶ。
そんな幸村を笑いながら、優しく肩を叩きながら横に腰をおろす慶次。
「まぁまぁ、恋ってもんはいいもんだ。そう恥ずかしがるもんじゃぁないって!な?」
慶次はにかり、と笑ってそう言う。幸村は先ほどから「はれんちはれんち」と歌うように口ずさんでいた。
「まったく...あんたどんだけウブなんだい。」
「う、うぶ?」
「どうだい、なんならおれが相談相手になってやるよ。協力だってしてやる」
あの忍びのおにーさんを娶りたいんだろ?
慶次がそう言えば、幸村は真っ赤になりながらこくこく、と頷いた。
慶次はそれを見ると、にやりと笑いながら彼もまた深く頷いた。
「実は....何回も言おう言おう思っておるのですが、その、あやつを目の前にすれば恥ずかしくなり、何も言えなくなるのです。」
幸村がそう言えば、こういう話専門である慶次はにこにこと笑いながら、こう言う。
「あんた、きっと「好き」とか「慕っている」とか、そういう言葉にはすごく敏感で、口にすれば恥ずかしくて仕方ないんだと思うんだ。」
つまり、それを言わない方向で考えればいいのさ!と慶次が元気よく言えば、幸村は「なるほど!」と顔を明るくしながら叫ぶが、重要な事に気がつき、すぐにげっそりとした 表情を作った。
「それでは...佐助に気持ちが伝わりませぬ...」
「あはは!言い方が悪かったね!そういうんじゃなくて、遠まわしに言えばいいってこと!」
「と、遠まわし....?」
「ははは!さぁて真田のおにーさん、今日は果たして何の日かご存じですかい?」
慶次の透き通った優しい声に、幸村はただ耳を傾けるしかなかった。













「ざけんな変態阿呆馬鹿変態糞変態。さっさと家に帰りなよ変態」
「どんだけ変態なんだ俺は」
真田邸の入り口門前で、武器を構えているのは真田忍隊が隊長、猿飛佐助である。
その佐助にまさに今武器を構えられているのは、奥州筆頭伊達政宗であるが、端からみればそうとは思えないだろう。
なんせ彼は今、鼻血が止まらずに流れ出ていたからだ。
よからぬことを考えている(しかもそれは確実に己の主関係であり必ず害があるであろう)と悟った佐助は、己の命をかけてでもここを通さない(主には己が死んでも会わせない)と誓ってただいま獲物を彼にぎらりと光らせていた。
「HA!てめぇにゃあ興味がないんだよ早くどきやがれ猿!」
「奇っ遇だねぇ。おれさまもあんたには興味ないし寧ろ嫌いだからさっさと帰ってほしいんだけど。」
佐助がそう早口で言いまくるめれば、政宗はいまだに鼻血を流しながら、鼻を鳴らして笑い上げた。
「そういうわけにゃぁ、いかねぇ。いいか?今日はHalloweenなんだよ!このchanceを逃すわけにはいかねぇだろ!」
その政宗のマジな(本気とかいてマジと読む)目をみればみるほど主の危険を感じた佐助は、先ほどよりもいっそう堅い決意を胸の内で誓う。
「は、はろうぃん?」
「YA!Halloween!なんだてめぇHalloween知らねぇのか」
政宗の馬鹿にしたような(しかし鼻血はいまだ止まらず)顔に、少々佐助はむっと顔を歪ませた。
「Halloweenってのはな、「trick or treat」って言って、まぁ悪戯か菓子かどちらか好きな方を選べと選択させるという」
「なんて悪趣味な!」
「YA!つまりだ、菓子を持ってないやつがそれを言われれば、もちろん悪戯しか選べないというわけだ」

あ。

佐助は気づく。
政宗の鼻血の訳を。

己の主は、菓子を手に入れたら、すぐに胃袋へと吸収するという癖がある。むしろ使命に近い。
そんな主が、菓子など持っているはずがない。
ということは、だ。

「trickさせろぉぉぉぉぉお!真田幸村ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「させるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

六爪流で立ち向かってきた政宗に分身を出しだす佐助。
旦那、大丈夫、あんたの身体はおれさまが命をかけてでも守り抜いてみせる。
こんな変態に渡してたまるか...!
もう、だれだこんな悪趣味な日を考えたのは...!
大迷惑だっ!


(あ...でも旦那に悪戯されたい...)


そう思えば、自然と頭の中で旦那からの悪戯でいっぱいとなり、ああそこまでいっちゃうの旦那、嘘でしょ...あああ旦那だめ....!と妄想が駆け巡る。
温かいものが、鼻の奥でじわりと感じた。

「おいおいおいおいぃ!猿ぁぁぁてめぇ鼻血出てるぞぉぉぉお!?何考えてやがった変態が!」
「な...!?あんたと一緒にすんなぁぁぁぁ!」
とかなんやらがーがーと言い争いながら、本気(と書いてマジと読む)で死合い真っ最中の二人に大きな足音がどどど、と近づいてきた。
「ぅおおお!すぅぁぁすくぇぇええ!」
言わずとしれた、争いの種である男、真田幸村である。
びっくりした二人だったが、中でも大きな声で名を叫ばれた佐助はただただ目を丸くするばかり。
そんな呆然とした二人にものすごい勢いで走り突っ込んでくる幸村。

最初に我にかえったのは政宗だ。

「真田幸村ぁぁぁぁぁtrick or...」
「させるかぁぁぁぁぁ!だんな!trick or tr」
「てめぇぇぇえ!やっぱり狙ってたな猿ぁぁぁぁ!」
「うるせぇえ!だんなはわたさないんだから!変態!」
「鼻血を出してるやつに言われたくねえよ!」
「お互いさまだろぉぉお!」
「とゆうか幸村ぁぁぁぁぁtrick」
「させるかぁぁぁだんなぁぁぁtr」


「さすけっ!さすけ、あ、とりーと!」


......
「「え?」」
「さすけ、あ、とりーと、だ!さすけ!」
満面の笑みで両手を広げる幸村に、ポカーン顔な二人。

「今日はどうやらはろういんというやつらしくてな、慶次殿が教えてくれたのだが、菓子と悪戯を要求するらしいのだ!しかしさすけ、俺がほしいのは悪戯ではないのだ...」
そういって幸村は、そっと佐助を抱きしめる。
そこで佐助は思い出す。
先ほど主が言った、「さすけ、あ、とりーと」の意をようやく理解したのだ。


(俺様か、菓子か、どちらかを)


だんなが俺様を欲しがっている?
ぼふん!と佐助は幸村の胸の中で赤くなる。
つまり、だ。
これは幸村から佐助への告白なのだろう。


「お、俺様ぜんぶたべて!お菓子なんかななななな無いからさ....!」
「さ....佐助ぇ...!」
「旦那ぁ....っ!」
佐助ずっと前から好いておったのだ...!、お俺様だって旦那のことが!、佐助ぇずっとずっと共に居よう....!だ旦那ぁ!佐助ぇ!旦那ぁ!さすけぇぇ!だんなー!

そう互いに叫びながら、ぎゅうぎゅうと抱き合っている主従は周りを見えていない。
ついでに言えば、政宗も涙で前が見えていない。

「おーおーこれはこれは政宗じゃないかー!元気?」
そんなことつゆしらずか、後ろから脳天気な声がふってきた。前田慶次だ。あいかわらずニヤニヤと笑っている。
そして涙を流しそうな政宗に一言。

「trick or treat?」

上手くもなければ下手でもない発音で告げたその言葉に、政宗は力なく舌うちをし、「菓子なんか持ってねぇよどっかいきやがれ暇人」と毒づけば、さらに慶次はにやり、と笑った。

「悪戯」
「.....あ?」
「いたずら」
そういって、慶次はいまだに抱き合いながら互いを呼び続ける主従を指差す。
「どぉ?俺からの悪戯!」

そういってにぱっと笑う慶次に、悪趣味だ、と政宗は呟いた。

「さすけぇぇ!おまえのことは、一生幸せにしてやるからなぁぁぁあ!」
「あああんだんなーっっ!」

薔薇を咲かせる二人が、やはり涙で見えない政宗くんであった。





HAPPY HAllOWEEN!!
(お菓子くれなきゃおまえをもらうぞ?)
(きゃーだんなー!)





happyhalloweenよりhappybirthday!
誕生日のうるちさんにささげます!


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