物語を告げる鐘の音
俺は、何度目かのしゃもじを取る。
炊飯器にはいつも朝は余っては弁当に詰め込むはずだった、しかし今日は底は見えはじめてきたご飯がさらに少なくなっていく。俺は、ため息をついた。
俺は事の原因である彼に視線を移す。
彼といえば、俺が茶碗を取るのを背筋をピンとのばし、待っている。
いつもご飯を食べに来るだけのかすがや、一緒にご飯を作り食べてくれる小太郎はいつもたくさん食べるのに、今は箸を止め呆然としている。
もちろん、呆然としているのは俺も例ではなくて。
そんな俺に、見かねた彼が更に茶碗を俺の目の前にずいっと差し出してきてこういった。
「さすけ、おかわりを頼む」
あのう、それで八杯目なんだけど
そんなことさえ言えず、俺はため息を吐きながらそれを取る。
‥どうして、こうなったんだろう。
「問おう。貴殿が俺のマスターか」
あの時。そう、彼は光を纏っていた。
それは、赤く紅く、綺麗な色をして。暖かく、夕日のような優しさで、しかしそれだけでなく炎のような強さを持った。
綺麗な色の、光が。
此方をただ真っ直ぐと見つめていた。
「ます‥?」
「召還に応じ、ランサーの名においてここへ現界した。貴殿の声を頼りに。俺の事を呼んだのは貴殿のはず。‥違うのか?」
凛として喋っていた彼は次第に今の状況が掴めてきたみたいで、俺を頭のてっぺんから足の先まで見回し、きょとんと首を傾げる。
「‥どうやら魔術をかけてはなさそうなのだが‥魔力回路はあるみたいだが‥貴殿は魔術師では」
「な‥ないですないです!だいたいなんで俺が襲われなくちゃなんないんですかというかアンタだれなんだ!つかどっからでてきたのさ!」
「‥先ほどランサーと申したはず。貴殿が襲われているとなると‥もしや貴殿はサーヴァントの争いを見てしまった一般人なのでは‥そして、命の危機に思わず俺を呼んでしまった‥」
そういって彼は軽い足取りで此方に近づけば、しゃがみこんで先ほどまで痛みが生じていた俺の左手をとる。
その手の甲には、覚えのない刺青。
「やはり‥貴殿が俺を喚んだのだな」
「え‥は‥え?お‥俺が?」
「これはサーヴァントを縛るための令呪。なにより、俺と貴殿の、契約という繋がり」
「俺が‥、‥アンタを‥喚んだ‥?のか」
「認めてくだされよ。貴殿は某の、マスターであることを」
手を両手で包み込まれ、自称ランサーは真っ直ぐと俺を見つめる。視線が真っ直ぐすぎて、穴があきそうだった。俺は真っ赤になりながら、ふいっと視線をゆらした。
「と‥とりあえず、危ないとこ助けてくれたんだし、味方っぽいから、俺様が喚んだって事は認めてやるけどさ‥」
「!ならば、ここにて契約を完了とし、某は貴殿がマスターだと認めよう。ならば、マスター」
そういってしゃがみこんでいたランサーはふいに立ち上がり、前方へ睨みをきかせた。
その先には、俺を先ほどまで襲ってきていた眼帯の青年が立っていて。
「ご指示を。命令によって俺は貴殿と共に一時撤退、はたまたこの槍であのセイバーを討ち果たして存じよう」
「‥ちょ、ちょちょちょ!え?ちょっとまって一時撤退とか討ち果たすとかさ、ちょっとまってランサーさん!やっぱりとおもったけど!‥アンタもこ、殺し合いみたいのしちゃうの‥?」
「無論。貴殿はもう一般人ではなく、俺と契約を完了し、マスターとなった。貴殿のものである俺だけでない、貴殿もまた、この戦争の当事者なのだ。」
さも当たり前、とでも言うように、ランサーは此方をゆっくりと見ながらそう告げる。そんな。俺はただただ開いた口をさらに広げる一方だ。殺し合い、戦争。巻き込まれた、だけでなく一般人から当事者まで切り替わってしまっている。どういうことなんだ。
「そーゆことだ。you see?monkey」
声のするほうへと振り向けば、剣を肩に担ぎ見下ろすように眼帯の青年は目を細め此方を見る。
「んで‥話は済んだか?戦う準備はちゃっちゃとしてくれよ。俺ァ気が短いほうでな」
「だ‥誰が猿だ!だいたい、なんで俺がアンタ達と戦わないと‥」
「な‥!貴様!我がマスターになんて愚弄を!なるほど、ならば貴殿は早々に我が槍で貫けられたいらしい‥!」
「ほう‥短気はお互い様ってな」
俺の発言を遮るランサー。ランサーに笑う眼帯の青年。その後ろでため息をつきながら額に手を置くやくざみたいな強面の男。ひとりだけ、わけもわからず怖がっている、俺。
「‥貴殿の闘気、その刀。見るからにセイバーとお見受けするがいかに‥?」
「Ha!愚問だな。‥そういうてめーは変わらずランサーだろ?」
「‥『変わらず』?なにを言って」
「まぁまぁ記憶には期待してねーさ。でもな、てめーとまた戦えるということは、ほんとに嬉しいぜ、‥なぁ!」
その瞬間、セイバー、は消えた。ランサーはハッと我に帰り受け身の体制を取る。のと同時に、セイバーはランサーの目の前に現れ、ランサーに斬りかかる。
「ら‥ランサーさん!」
「心配は無用だマスター!貴殿は自身の身を案じて遠ざかれ!!」
受け身をとっていたランサーはそう言い捨て、負けじともう片方の槍をセイバーに繰り出す。それを避けるかのように、セイバーは高く舞い上がり、距離をとって着地する。
「‥。‥その口振り。貴殿は某の正体を知っているかのようですな」
「ああ。もちろんだ。‥なんならここでてめーの真名、ばらしてもいいんだぜ」
しかしそれはfair、じゃねぇからなとセイバーはニヤリと笑いながら言う。
「なら俺の真名を告げるのも手、とも思ったんだがな。生憎うちのマスターはそれは危険だと反対でな。」
「無論です、セイバー。いいですか、真名を晒すということは」
「HeyHey!OK!わかったわかった!ったく何回目だそれは!」
セイバーのマスターらしき男は眉間のしわを一切伸ばすことなくむっと口を閉ざす。セイバーはため息をつき、ランサーへと向き直る。
「ま、つまり俺はてめーの正体は知っているわけだが、安心しろ。てめーの弱点なんざ知らん」
「しかしやはりこちらが不利なのは変わらずというわけでござるか」
「‥いーや。真名がバレたとこで、てめーは、俺を飽きさせない。簡単に勝たせてはくれねーだろ。」
そういってセイバーは笑いながらランサーを真っ直ぐと見つめる。それは、俺を殺そうとした時の笑みや、ランサーと剣を交えた時の笑みみたいではなく。
懐かしいものを見つけ、ただ純粋に懐かしいと感じ目を細めるような、そんな優しい笑みで。
意外だと思った。初めて会ったはずのセイバーに、意外だと感じた。なぜだか、それは俺自身だってわからない。
セイバーは笑みを止め、はぁ、と息を吐く。そして刀を構えれば、ランサーをキツく睨む。まるで、獲物を見つけた、猛獣のように。
「さぁ来いよ。その槍、この心臓に到達する前に叩き折ってやるぜ?」
「‥ふ。戯れ言を。ならば某は貴殿の剣劇より先に貴殿の心臓を貫こう!」
そういってランサーもニヤリと笑いながら二双の槍を振り回し、構える。
「では‥いざ尋常に」
「‥勝‥‥っ!」
今にも戦いが始まりそうという時だった。
二人は何かに感づき、後方へ跳び退いた。俺が見えたのはここまでで、そこにぼふん!と大きな音と共に煙のような霧が視界を覆う。
「!けほっこほ‥!な、なんだ‥これ‥!」
突然のことで戸惑っていた俺は、急に現れた手に口を抑えられ、引き寄せられる。勿論びっくりし抵抗するが、悲しきかな、相手の方が力が強くこれがびくりともしない。
俺を抱えたそいつが飛び上がる感触がした。思わず身を固くし目を閉じたが、ある地点で着地しその場に通った声が硬直を解いてくれた。
「無事か佐助!」
かすがだった。ぱちりと目をあければ、先ほどまで一緒にいたくせ異様に懐かしく感じた。ああ、かすがだ。俺はけして弱くないはずの涙腺を緩ませた。
「か‥かすが」
「心配したんだぞこの馬鹿!阿呆!逃げるなら自分の家に逃げろ!どうして正反対の方向に逃げるんだ!見つけるのに苦労しただろ!わたしのアサシンでなかったらお前、見つからなくてもしかしたら他のサーヴァントに見つかり死んでいたかもしれないんだぞ!」
ご、ごめんねと苦笑いしてかすがをみればまだ御立腹の様子で、わたしだけでなくアサシンにも謝ってやれ!苦労させたんだぞ!と叫ぶ。
そこではっとし俺をわきに抱えるそいつを見る。仮面で顔を隠した真っ赤の髪に真っ黒な姿をした男。アサシン、とは彼の事を指すらしい。
「‥‥‥」
「ご、ごめん、なさいアサシンさん‥?というかありが」
感謝を述べようとした時だ。べちん。雑に地面へ放り投げられ俺は着地する。
あまりの突然の事に驚いた俺は受け身を取れずに頭から落ちた。勿論痛かった。痛みに頭を抑えていると、かすががむっと声を出す。
「どうしたアサシン。たしかに苦労させたが貴様の千里眼スキルならこいつを見つけるのは安易だったろう。なにを怒ってるんだ」
「‥ああ、怒っている。ただしこのガキにじゃなく、アンタにだ、我がマスター」
「‥なんだと?」
アサシンはそう吐き捨てれば、空中に手をかざす。しゅん、と音を立て出てきたのはクナイというもので。突然の刃物の登場に、俺もかすがも動揺し身を固くする。
「お‥おい‥?」
「さぁえらんでくれマスター。今すぐ二度目の令呪で前回の令呪の無効にするか、またはこの刃を持ちアンタの手でこのガキを始末するか」
アサシンはそう淡々と述べる。俺は唖然とし、かすがは「はぁ?」とアサシンへ食いかかった。
「どういうことだアサシン?さっき作戦は言ったはずだ!彼は狙われる身となったが名目上わたしの陣営と言っておけば協会からのルールは無効になり目撃者として殺されることはなくかわりにわたしたちが守ると!わたしたちがこいつを殺す目的はなにもないだろう!」
「‥たしかに、アンタは考えを曲げない人だからな。その方針に従うしかないと踏んで俺もその作戦に乗ったけどな。こいつが、一般人のままであれば、その案に賛成のままであったけども」
アサシンはふいに顔を上げ横目に空を見る。そして舌打ちし息を吐いた。
「‥もうか、早いな。相変わらずさすが‥」
「‥なに?」
「はやくしろ、マスター。この刃をとるのか、俺にやらせるのか」
「だからなにをいって」
「あの闇の霧はやはりアサシンの仕業であったか。技は立派としか言いようがなかったが、そこまでだ、アサシンとそのマスター」
凛とした声がその場を通る。かすがと俺ははっとしその声の主に振り向く。とん、とそれはその場に着地した。
ぶん、と音が鳴る。きっと彼が振り回した槍からだろう。
「ランサー‥だと‥?アサシン、貴様、ランサーと接触したのか」
「‥アンタの指示通りにそこのガキをこの場に連れてきただけだ。勿論、ランサーはこちらをつけてくるしかないだろ」
「‥‥は?」
「ランサー、アンタはあの馬鹿な野郎と戯れ最中じゃなかったのか?」
アサシンの馬鹿にしたような口調に、ランサーはむっと眉をひそめる。
「口を慎めよアサシン。貴殿も英霊ならばわかるはず、彼もまた名が高いであろう誇りがある英霊なのだ。それを愚弄の言葉で丸めるなどと‥」
「生憎、俺は‥名が高い誇りある英霊ではないからな。そこのとこ爪の先すらわかるはずない。それよりランサー、最速とはいえこの速さ。まるで死に物狂いのような速さで俺を追いかけてきたみたいだよな」
「無論だ。我がマスターが攫われたとあっては急ぐほかない。」
ランサーはそう言って二双の槍をアサシンに向け構える。睨むその真っ直ぐの目を、アサシンは目を細めながら見つめていた。
「今すぐ我がマスターを解放してもらおう!アサシンの陣営!さもなくば、このランサーの槍が貴殿たちを八つ裂きにいたす所存!」
「‥だそうだ、マスター」
アサシンは振り向いてはかすがを見る。かすがといえば呆気にとられて動かない。しだいにはっとし、ランサーに声をかける。
「ちょ‥ちょっとまって!わたしたちがいつ貴様のマスターを攫った!?」
「惚けるには呆れるほど証拠が見え隠れですぞアサシンのマスターよ!現にそこに我がマスターが捕らわれているではないか!」
「まってまってまって!お前もしかしてこいつの事言っているのか?何かの間違いだ!だってこいつは魔術師ではー」
俺の手を取りかすがはランサーに食ってかかろうとするが、止まる。そして取ったその俺の手の甲を見つめながら呟く。
「‥な、なぜ‥さ、さすけ‥どうしてお前の手に‥令呪が‥」
「だから言っただろマスター。はやくこいつを殺すべきと。‥はぁ」
やれやれというように物騒な事を言いながら肩をすくめるアサシン。
口をぱくはくしながら俺とアサシンを交互に見るかすが。
一瞬の隙を見せずに槍を構えるランサー。
‥なんなんだ、この状況。
「えー‥っと、ちょっとまってね。‥もしかしてだけどさ、この状況の事の原因って‥‥俺様、かな?」
「も‥もしかしなくてもそうだ馬鹿!こんの阿呆!呆け茄子!なんで一般人のお前がサーヴァント召還に成功してるんだ!というかなんで召還したんだ!そしてよりにもよってよりにもよって‥ッ!どうしてわたしが狙っていたランサーなんだーッ!」
「ちょ‥まっ‥かすが待って落ち着いて‥いたっちょ痛い痛い痛い!」
混乱に陥ったかすがはいつもの癖と同じく俺をぼかぼかと殴る。しかし痛い。女の子の力とは思えない。
アサシンの深いため息が聞こえる。だめだこいつ完全に他人事だと思っているこのやろう。ランサーに居たっては構えの体制のまま呆然としている。が、俺と目が合い、すかさず俺を助けようと動く。
「マスター!」
「あっ大丈夫ランサーさん!この子おれの幼なじみなの!だから警戒解いて!」
「しかし‥」
「この子は大丈夫だから!‥まぁそちらの方は知りませんけど」
かすがに殴られながらアサシンを横目で見れば、アサシンは、ふん、と鼻を鳴らす。
「あの場から助けて貰った身でなにを言うんだか」
「今さっきまで俺様のこと殺そうとしてたくせによく言うよ」
「それより、どうしてお前がこの戦争に参加しているんださすけ!私が納得できる理由、きっちり説明できるんだろうな!」
「わかったわかった!話し合おう話し合おう!とりあえず俺も聞きたいことあるし!ねっ?てことで帰ろう!」
俺はそう言ってかすがの手をとる。かすがはむすっとし手をばっと離したが、方針には従ってくれるらしい。
俺はランサーとアサシンに振り向く。
「えーっと、お二人はどうする?一旦お家にお帰りになります?」
「‥‥‥?」
「‥‥‥‥」
ランサーが首を傾げきょとんとし、アサシンに居たってはなんともいえない表情である。
かすがの目は半目になっていた。
「‥もしかしてさすけ、お前事の重大さを理解してないな?」
「なにが?」
「‥もういい。とりあえずお前の家だ。」
かすがは俺を横目で見ながら、アサシンに振り向く。
「アサシン、わたしはこいつを傷つけるつもりはない。こうなった以上、ランサーと戦うのは最後にする。」
「正気ですかって」
「ああ。大真面目だ。そしてランサーの警戒を解きたいのだが、そのためにアサシン、一時霊体化しろ」
「‥正気ですかって」
「ああ。二度も言わせるな」
「‥ランサーは最速のサーヴァント。俺が実体化するよりはやく彼は君の首を跳ねることができるんだぞ」
「その心配は無用だアサシン」
そこに通った声はランサーが出したものだった。彼はにこりと笑い、槍の形を消して、こちらに近づいてきた。
「貴殿と貴殿のマスターに俺と戦う意志がない、そしてどうやら貴殿達は我がマスターを助けてくれた様子。加えて我がマスターは彼女に対し警戒を解けと言った。ならば俺の槍が彼女の首を跳ねる理由がないはず。」
違うだろうか?とランサーは笑顔で首を傾げる。先ほどの闘気とは打って変わっていた。アサシンはというと、意外にもランサーの笑顔にたじろいでいた。なるほど、クールなやつでも弱点はあるのか。
「そうだ、そこまで彼女の身が心配とあらば貴殿と同じく俺もまた霊体化してしんぜようか?」
「‥いや、いい。いきなり他のサーヴァントに襲われた際に困るから。‥‥」
そう言ってアサシンは、ちらりと俺を見る。その目は鋭く、冷たかった。
「ではかすが。せいぜい家に着くまでしなない事だな」
「な!ちょ‥なんだそのマスターに対する言いなりは!こらー!」
しかし、アサシンはそこまでいうとどうなっているのかわからないが姿を消した。こら出てこいアサシン!と騒いでいるかすがに俺は苦笑いする。
苦笑いをし、立ち上がりさて帰ろうかと一歩足を踏み出した時、ふらりと揺れた。途端に激痛。何事かと思えば、そういえばと遠くなる意識の中考える。あのセイバーとかいう眼帯に俺様はズタボロにされてたんだったっけ。
体から力が抜け、その場にどさりと倒れる。さすけ!マスター!と沢山の声が聞こえたけれど、恐ろしいほど強い眠気には勝なわず、俺はそこで気を失ってしまった。
「おお!おはよう。我がマスター」
「ぅわ!」
目が覚めれば数センチ上に綺麗な顔があり、思わず俺は悲鳴を出した。夢か‥とすら思えずに朝を迎え、やはり夢でなかったのかと落胆する。
「あの後マスターは気絶してしまい、俺とかすが殿で貴殿の城に貴殿を運びもうした。話のつづきは後日、つまり今日と言うことを伝えよと昨晩かすが殿が。‥それはそうとどこか体の不都合はなさらぬか」
「な‥ないないないない!お、おはようランサーさん!」
「はい、おはようでございまする。時にマスター、いくら貴殿が魔術師でなけれど俺のマスターであることに変わりはない。‥その、さん付けとは、如何なものか」
「む‥そう‥だな‥、なら、んー。ランサー、て名前呼び捨てで構わない?」
「構いませぬ!」
そういって優しく微笑むランサーに俺は思わずどきりとする。そういえば、ランサーは凄く美人だ。男なんだけど。
「じゃあ俺様からもひとつ。‥いい?」
「?」
「その堅っ苦しい喋り方なし!俺様のことは、佐助って名前があるからそうよんで?」
俺もランサーと同じくにこり、と微笑むと、ランサーはぱちくりとし、そして何故か挙動不審になりながら首を上下に動かす。
「わ‥わわわわわかった!ささささすけどの‥!」
「さすけ」
「さ、さささすけ!」
俺がにこりと笑えば、ランサーもにこりと笑った。こんな雰囲気、何年ぶりかなと考える。きっと大将が生きていた頃ぶりだろうな。こんな楽しい雰囲気、家族みたいでいいな。
戦争だけ、夢であればいいのに。
そう、淡い夢を焦がれていた、そんな朝。
さぁ、そろそろ朝ご飯の時間だ。早く作らないと食べに来たかすがに怒られるし、話はご飯後にゆっくりでいいだろう。
まさか食卓に並ぶものがこの美人の胃袋に全部おさまるとはこの時微塵も知らず、佐助はるんるん気分に台所に向かうのだった。
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長ぇ‥。とりあえずコタは佐助の家にご飯を作りに来てくれる通い妻担当です。でも佐助の方が家事力は上。かすがは家事力皆無。ランサーさんは安定の腹ペコ武士。アサシンは霊体化してます。和に入ればいいのにねアサシンさん‥(´・ω・`)
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