おはなし 7/28 22:53 !トリ♂←モブ表現あり !トリくんが少しひどい(突き飛ばす程度 !死ねた注意 ――――――――――――――― 「何を‥?」 「顔、なんで沢山、傷作ってるわけ?」 「たいした傷ではない」 「アンタ馬鹿?女が顔に傷を作ってどうすんの」 「女だろうが男だろうが関係はない。‥君は、俺が、弱いと言いたいのか」 「‥はぁ、あのさ。男を守るために女が傷つくって、私は、‥俺は、どうかと、思う」 「君がどう思うにしろ、それが任務なのだから、しょうがない。」 ああ、そう。かわいくねー女。 心配して、損した。 ‥いや、別に、心配なんて。 心配なんて、してない。 ―――――――――――――――― 「ああ、こんなところにいた」 静かな波の音。遠くで鳴いているウミネコの声。耳をすませて聞いていれば、遠慮なく侵入してきた、砂場を散らすようにざっくざっくと踏み鳴らす足音。俺は眉の間にしわを寄せながら、閉じていた瞼をあけた。 目の前に広がる、青い世界。広くて、和やかで、どこか懐かしい匂いがする。脳裏に一人の女がチラついて、離れない。内心で舌を打った。 「ねぇねぇ、トリッシュさん」 甘ったるい声。鼻につく香水の匂い。自分の腕に、細く白い二本の腕が絡みつく。当たっている胸。ちらりと一瞥すれば、妖艶に微笑む女。舌打ちをもう一度、今度は盛大に、聞こえるようにやってみた。 「あらほんと」 「なにが?」 「誘惑しても、女になびかないって噂。ほんとだったんだって思って。もしかして、女は無理だとか?」 「いや?男色ではないよ。今も、ある女性のことを、考えてたから」 「あら、」 女はさらにぎゅっと絡めている腕に、力を込めて胸を擦り付ける。柔らかいそれが、邪魔で仕方がない。 「妬けるわ、どんな女性?」 「おかっぱ。」 「え‥やだ、もしかして、わたしのことだったの!?あ‥、トリッシュさん、実は、わたしも‥」 「まさか。貴女と髪型や体型は似てるけど、全然違う。あの女は、貴女みたいに魅力的じゃない」 否定の言葉を出した途端、女はカッと熱くなったが、俺の言葉を最後まで聞くと、途端に、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。それが、なぜか無性に、腹がたった。 「へえ?あたし、魅力的って思われているんだ、有名な歌手の、トリッシュさんに」 「客観的に見て、魅力があるんじゃないか、と思っただけだけど。」 「あ、でもねぇ。その女の子よりは、上なんでしょ?ねぇ、わたしの方がその子より、貴方の彼女になれる確率、あるんじゃない?」 ぎゅうぎゅう。当たる胸が煩わしい。眉間のしわが、跡につくのではないか、と心配になった。 「ああ、たしかに。あの女よりかは、貴女のほうが確率はある。」 「ほんと?やだわたし、本気にしちゃうから」 「‥あの女は、0%だよ。そんな確率。全て捨てやがった、馬鹿な女だから。私の目の前から、居なくなった、馬鹿な女」 え、と女がこちらの顔を覗こうとする。素直にそらさず、女の方へ向いてやれば、女は、眉をひそめた。可哀想に、といった表情を作る。 「そう、たしかに、馬鹿な女の子ね‥。こんな一途な貴方を、捨てちゃうなんて。」 女はそっと俺の頭を抱きしめる。かき抱いて、大丈夫、と耳元へつぶやいた。 「わたしが、忘れさせてあげる。今夜、ずっと抱きしめて、貴方を幸せにするわ‥だからお願い、わたしを‥」 そこで、爆発した。力任せに女を引き剥がして、突き飛ばす。女は柔らかい砂場に倒れたが、あいにくと海に尻餅を沈めたこちらの方が被害にあった。くそう。俺は拳で水面を叩く。 立ち上がって、呆然と座り込んでいる女を見下ろす。母が昔に、女にはやさしくしなさい、と言っていた言葉を忘れた事にした。 「ふざけるな!」 おかっぱの髪がバサバサに乱れて、オレンジ色の口紅が塗りたくられている唇がわなわなと震えている。あの女、に容姿が似ていたその女は、今はもう、そうじゃなかった。 「簡単に、勝手に、あいつを忘れさせるなんて、言うなよ!私は、‥俺は、絶対に忘れない。忘れてなんか、やんない‥!あいつを忘れて、幸せにもなってやんない‥!なるわけ、ないじゃないか!」 目から溢れる涙を見て、女はようやく自分の失言に気がついたらしい。慌てたように立ち上がり、すがりつくように、身を寄せてきた。 「ごめんなさい、あの、もしかして彼女って‥」 「もう、どっかいけよ。俺は、たった一人しか抱きしめないし、愛さない。それが出来ないなら、誰も抱きしめないし、愛さない。」 途端に、女の顔がぐにゃぐにゃに歪んで、泣き始めた。それでも俺は、特別なにもせず、ただただそれを見つめる。 女はしばらくそうして、そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔を手で覆いながら走ってどっかへ去っていった。 俺はその後ろ姿が見えなくなるまで見つめ、もう一度、浅い海の中へ、沈むように座り込んだ。 あの女性の涙を拭うのは、簡単だったはずだ。涙を隠すように抱きしめることも。愛し合うことも、簡単だったはず。 どうして、同じ女性なのに、あんたはあんなにも難しかったのだろう。 あの日、拭いたかったのは滲み出た血ではなかったんだ。今なら、言える。 あんたが隠し流していた、もしくは、自身でも気づく事無く流していた、その涙を。一粒一粒、拭いたかった。傷だらけの心ごと、この腕の中にしまいこんであげたかった。守られるのではなく、あんたを、あんただけを、守ってみたかった。愛して、みたかった。 なんでそれだけが、あんなに、難しかったのだろう。どうして、今もなお、難しいんだろう。 どうして、あんたも、俺も、涙を拭うことなく、流したままなのだろう。 「ほんと、愚かで、馬鹿な女」 そして、愚かで、馬鹿な男。 ――――――――――― 好き(ただし無自覚)な女の子守りたいのに守れないむしろ守られてばっかくそうギリギリィッ→死んで守られなかった好きな女の子を見て呆然→ずっと忘れられないまま後悔し続けて誰も愛さなくなった女々しいトリくん。とか。考えてつらくなったので書いてみた。だれか幹部呼んで幸せにしてあげてよ‥ |