おはなし 2/5 16:16

!重っ
!暗っ
!文が電波






わたしはあなたと、二回だけ手をつないだ。



最初は、怖がるわたしを慰めるように、優しくわたしの手を握ったあなた。きゅっとあなたの手を握りしめれば、それに返事をするがごとくあなたはさらに手のひらの体温を強く押し付けわたしの手を包み込んだ。あまり見せない微笑みをこちらに寄付してくれて、あの時わたしは、あなたがいるから大丈夫だと思った。あなたがこの手を繋いでくれているから、離す事はないのなら大丈夫だと、そう思った。だからわたしは勇気を振り絞って、あなたと一緒に小さな箱の中に入る事ができたの。その後いつの間にか気絶していて、起きたとき未だにわたしの手はあなたに握られていて、反射的に狸寝入りしていた私の耳に、あなたの声で「必ず君を守るからな」と聞いたときは父に裏切られたショックとあなたの優しすぎる温もりに、泣きそうで泣きそうで、あなたが手を離し、亀の外へと出た瞬間声を噛み殺しながら泣いたの。


二回目は、どこか知らない、はてしなく花が咲き乱れた綺麗なお花畑で。
はてここはどこ?と私はどこから来たのか、どこへ行くべきか、とわからないまま、適当に私は歩いていく。しばらくすれば、トリッシュトリッシュ、と優しい声が聞こえてきて、ああこの声はお母さんだと私は姿が見えぬお母さんを必死に探す。
前方から聞こえる母の声に返事を返すように一歩ずつ歩いていけば、今度は元気な声で私を呼ぶ音が聞こえた。

「トーリッシュっ!」

ああこの幼い声はいっつもお兄ちゃんみたいに私の前では大人ぶるナランチャの声だとわかった。ナランチャの後から続くように低音で「トリッシュ、」と小さく聞こえてきて、誰かしら、と深く考えた。

「トリッシュ、来るな‥」
(ああ、思い出したこの声、アバッキオの声だわ。なんだか、なぜだろう、なつかしい、)

「トリッシュ!まだ君が来るのは早いだろ?ほーら回れみぎっ!」
(どうしてなつかしいのかしら‥だって彼らに会ったのはつい最近で、今まで一緒に居て‥)

「トリッシュ‥」
(ねえ‥お母さん、どこにいるの、わたしお母さんにあいたいの‥)


わたしは駆け出した。お花が崩れようが裸足だろうがかまわず走った。ただひたすら走った。
お母さんに会いたい、みんなに会いたい。何故、どうして、こんなに遠くに感じるの?だってわたし、みんなの近くにいたはずなのに、どうして、なつかしい。会いたい、お母さん達に、


「トリッシュ‥!」


走っていたわたしの手を後方に強引な力でひっぱる、男の、でも凄く綺麗な手。手首を力強く握った手は、するりとわたしの手のひらへと移動し、今度はわたしの手の方を力強く握った。

「君がいくのは、そっちじゃない」

そういってあなたはわたしを強引に来た道を帰ってエスコートする。
その手はあの時とはすこし違っていて、わたしの体温は上がっていくのに、あなたの体温は相変わらず冷たいまんまで、まるで、血がかよってない人形の手のようだった。
だから怖くなってあなたの手をきゅっと握れば、それに気づいたあなたはあの時と同じように、きゅっと握り返してくれて。
あなたがわたしの手を引いて知らないどこかへわたしをさらっても、わたしは怖くないと思った。あなたがこの手を握ってくれるなら、この手を離さないでくれるなら。

「怖くない。わたしは、大丈夫」
「そうか。なら、安心だな」
「ええ、だってわたしを守ってくれるんでしょう?」
「ああ。君を守る。間に合って良かった。」
「どういうこと、かしら?」

わたしが微笑んで首を傾げる。あなたはわたしから手を離すとこう言った。

「俺はずっと君を守る。それは見つめるだけなのかもしれない、でも、俺はずっと君を守っている。忘れないでくれ。俺は、俺たちは、君を守るためにずっと君と繋がって居るんだ。」


彼を理解するのはいつも不明で、いつもいつも苦悩していたけれど、今回ばかりは最高に苦悩した。
ねえそれってどういう意味なの?と問いたかったのに頭や視界が真っ白になっちゃって。

だから目を覚まして、ジョルノが全てを終わらせて、みんなであなたの元へ向かっているとき、わたしあなたに聞こうと思ったの。あの言葉はどういう意味なのかしら、と。
結局はあなたに聞かず自分で考えて理解してみたわ。だっていくら問いても、あなた、返事してくれないんだもの。
嗚呼、そういう意味、なのね。





わたしはあなたと二度手をつないだことがある。一回目はわたしを安心させるためで、二回目は、わたしを生かすために。
もうわたしのこの手は二度とあの手に握り返す事ができないし繋ぐことすら許されないのだけれども。
この手は繋がってないのだけれども。あなたは、言ったわ。わたしはあなたと繋がっているって。
だからわたしは怖くないの。繋がりをあなたが離さないと決めているのなら、あなたが守ってくれるなら、わたしはもう大丈夫。
それを握ってわたしは頑張って幸せに生きてみせるから。
だから約束よ、あなたはずっとわたしを見つめていてね。









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わたしはあなたの思い出と手を繋ぎながら、今日も生きていく








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