おはなし 12/31 03:17


!M.ティム→ルーシー
!ティムさん死んでます
!女神さん捏造







はたりと気がつけばふわりふわりと浮かぶような感覚が肌から感じた。しかしおかしい。肌をつねってみれば痛みや痒みすら感じないのに何故だかその摩訶不思議な感覚だけひしひしと伝わってきた。
なぜだろうか。ここはどこだろうか。

ただただ続く真っ白い空間を帽子を外しながら眺める。はて、こんなホテルに泊まり込んだ覚えもないし、だいたいこんな現実離れしたようなホテル、俺は知らない。
先ほどつねった皮膚に痛みを感じなかった事を考えればこれを夢だと考える事が妥当だろうか。

「いいえこれは夢ではありません」

いつのまにか、本当に、いつのまにかすぐ目の前にべっぴんさんが立っていた。それがなかなかのべっぴんさんで、ここに花が咲いているようであればすぐに摘んで彼女に捧げていたくらい、そのくらいべっぴんさんだった。

「ほう、これは夢じゃないのか。じゃああなたはいったいなんて名前のべっぴんさんなんだ?」
「わたしは‥そう、あなたたちでいう、女神、です」

女神?と俺は彼女の言葉を繰り返し口にし、彼女は頭が弱いのだろうかと考える前にある事を思い出した。
歳の離れた、女性だ。
その人を思い出した途端、溢れ出すように何もかもがフラッシュバックしていった。
雨の夜。男。激痛。愛した感情。
全て、そう‥全てを。


ああなるほどと俺は苦笑う。

「そうかこれが夢でなくてそんでもってべっぴんさんのあなたが女神だと言い張るんであれば、ここは天国というやつか」

人間誰にだって死ぬ日はある。俺の場合それが早かっただけの話だ。自身がカウボーイであるために死因は銃殺だろうかと考えた事はあるが、まさか雨にうたれ死ぬとは思っていなかった。

「あなたはこれから新しい生に巡る権利があります。その際今までのあなたの記憶は――」
「まて、まてべっぴんさん。ここは死んだら誰でも通る道なのだろうか」
「ええ。ここでわたしが生まれ変わる手順を説明し、この果てしない道のりを歩いてもらいます。その道のりの中で全ての記憶が消えていき、たどり着く先は、新しい生というわけです」
「なるほどな」

そう説明を受け、俺はその場に腰を下ろした。べっぴんさんは俺の顔を覗き、この先に逝かないのですかと訪ねてきた。俺は正直に答える。

「いくさ。ただ今はいかないだけだ」
「はやく記憶を消さねばあなたの魂は崩れていき、全てがなくなりあなたが消えてしまいますよ」
「そうなのかしらなかったな。しかしながら俺には待たねばならない人がいるんだ」
「消えてしまってはもう二度と生に巡ることはできませんよ」
「本当にそうなのかね。簡単に俺が消えてしまうなんて想像できねえぜ」
「女神のわたしがいうのです。これは真なのです。」

そのすこし強い凛とした口調に、整ってお人形さんみたいなお顔に、真っ白に伸びた手足に、俺は少しも好気はひかなかった。
そうしておれは自称女神のべっぴんさんに苦笑をなげかけ、一人の女性を瞼の裏に呼んだ。


「残念。俺が知ってる女神はそんな大人びた顔をしてないな」



俺が待つ女神に告ぐ、













――――――
俺が帰る場所に貴女がいないとしても、貴女が疲れ生を終えた先に俺がいたとしたら、それを許してくれますか女神さま、








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