二人で部活の片付けを終え、部室にて。 「あのさあのさ霧野、」 「何だ?」 他にはだれもいない部屋で、ユニフォームを脱ぎ始めた霧野に、話しかけた。 「相談、なんだけど」 「ああ」 まただな、と微笑んで手を止め、霧野は半裸のままどかっとベンチに座った。 俺は早速本題に入る。 「なんかこう、最近、南沢さんが冷たいというか」 「ほお」 他にも、キスしてくれないだの目を逸らされるだの、今日なんかせっかく雷門で練習してたのに話しかけてもくれなかっただの、いくつか霧野に話をした。 霧野は終始無言で、医者のように足を組んでふんふんと聞いていた。 「うーん、愛に飢えてますね」 「…で、どうしたらいいと思う?」 「こう!!」 ぎゅ、と霧野に抱きつかれる。 「わ、お、おいっ!やめ」 「俺が愛をやるよ」 本気で言ってんのかこいつ。 肌同士が擦れる微妙な感覚が、こそばゆい。 「やめろオイ、霧、野」 その時、 どごっ 「何してんだハゲ」 「〜〜〜っ!!!!!」 いつの間にか後ろにいた南沢さんの強烈なキックが、霧野の脇腹にヒット。 「え、南沢さん、帰ったんじゃ」 「シャワー浴びてた」 そう言われてみれば確かに、学ランの南沢さんの髪は濡れそぼっている。 「オラ行くぞ、倉間」 「え、あ、はい」 すでに着替え終わっている俺の手と自分のカバンを引っ張って、南沢さんが進む。 いまだに痛みに悶えている霧野が、グッ、とサムズアップしていたのは気のせいではないはず。 [*前] | [次#] [戻る] |