SS

その効果=勝ち馬と負け犬






「霧野せんぱいってぇ、すごいかっこいいよねぇ〜!!」

「あ、超わかる!!!」




隣を歩いていた先輩が急に俺の手をひいて草影に隠れるから何だと思ったら、本人の噂話だった。
みんなの前では口からキシリトール、爽快人間の霧野せんぱいは、とにかく人気者だ。

〔いいじゃないすか堂々と出てけば!!何で隠れるんですか!〕

ここにいますが何か?みたいな顔して!!、とひそひそ俺が言うと、

〔お前頭おかしいだろ〕

続けて、普段猫被ってるとこういう時辛いよなー、とぼやいた。

〔人気者は辛いですねー〕

俺がそう言ったら、先輩にじとっと睨まれた。





「あ、あと霧野せんぱいって女装とか似合いそう!!」

「わかる!!違和感なさそう〜」

べきっ

苛立ち紛れに太い枝を折る先輩。こわっ。

〔あいつらの上履きに画ビョウ仕込んでやる…!!!〕

〔早まらないで!!〕

なんで先輩は、女に間違えられるのを何より嫌がるくせに髪型を変えないんだろ。
頭でミントの促成栽培でもしてるのだろうか。






〔まだいなくなんないのかよ…〕

〔別の道通りましょうよぉ〕

3分くらいたとうとしていたころ、



女二人組はバレンタインの話をしだした。
いくらなんでも早い気がするけど…。


〔おいおいまだ9月っすよ…〕

〔あいつら、常識欠如してる〕



「あたしぃ、バレンタインには霧野せんぱいにチョコあげよっかなぁ」

「あ、じゃあわたしも!」

みんな霧野せんぱいにあげるよねぇ、とキャピキャピ話している。

〔は、腹立つ…これがリア充か〕

〔そんなにいらないんだが…〕

「…でもさ、わたし狩屋くんにもあげようと思うんだよね」

〔おっ!〕

「誰それぇ?」

〔あ…の女ぁ…〕

「え、ほらあの、霧野せんぱいといつも一緒にいるさ…」

「知らなぁい…」

〔へー俺らってそういう認識なんですね…って先輩!?〕

〔…行くぞ〕

先輩はすっくと立ち上がると、喋っている二人組のまん前を通っていった。

「ちょ、待ってくださいって」

がさっと茂みから飛び出すと、

「っ!!」

俺にお情けでチョコをくれるらしい子の方と、目があった。

口をぱくぱくさせているその子になんとなく会釈すると、赤かった顔がさらに真っ赤になった。


「きゃー、霧野せんぱいだよぉ!!ってちょっとあんた、どうしたの!!?」



今にも倒れそうなその子に、もう1人の頭わるそうな女が話しかける。

憧れの霧野せんぱいを前に、緊張したとかそんなところだろう。


それより今はその先輩本人だ。




「せんぱい、何怒ってるんすかぁ」


20メートルくらいでやっと追い付いて、ぐぐっと下から先輩を見上げる。

「ねぇせんぱい!!」

「……負け犬がっ」

「は!?」

「…アンダードッグ、効果」


拗ねたようにそう言うと、それきりせんぱいはずっと頬を膨らませていた。










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流行っているという理由から支持が強まったり、有利な方に味方をしたい、勝ち馬に乗りたいと思い、応援したくなることを、「バンドワゴン効果(先頭楽隊車)」といいます。

それに対して、不利な方に味方をしたい、弱い立場におかれているものに同情してしまうのが「アンダードッグ効果」です。


このアンダードッグ効果、自分にとって特定の支持者が不利な場合は、そうはさせまいという気持ちが強くなるため、この効果の効き目が強くなるそう。

つまり狩屋くんが女の子に惚れられてる設定です。それに霧野さんが嫉妬してるといいなぁみたいな…←

ああわかりにくい



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