06



じっとり汗ばんだ手が不快だった。
先に離した方の負けな。そう言ったのは果たしてどちらだったか、酒でぐるんぐるんに酔ったノーミソで考える。

久々に定時で仕事が終わったと、真っ黒な隊服から真っ黒な着流しに着替えて、上機嫌で飲みに出てみれば、やっぱり鉢合わせした銀色の胡散臭い男。
謀ったように男の隣しか空いていない席に、盛大な舌打ちを一発かましてどっかりとぞんざいに腰かければ、すぐさま始まる意地っ張り達の飲み比べ。
自分のキャパシティを遥かに超える量のアルコールを浴びて、閉店だと店主に追い出されたら、今度は万事屋で決着だとコンビニでやっすい酒を買い漁った。

そして現在、どんな流れだったか欠片も思い出せないが、大の男ふたりが万事屋の万年床の上で、散らばった酒瓶を尻目に、向かい合って握手をしていた。

おかしいおかしい絶対おかしい。酔って鈍った頭が、それでも必死に警告音を鳴らす。
男同士手を繋ぎ合って、しかも布団の上で膝を突き合わせて、先に離した方の負けだなんて今までで一番馬鹿げた意地の張り合いだ。
全くもってナンセンス。

「なぁ、ひじかたくんは、しってるか?」

不意に銀髪の男が口を開く。ぐわんぐわん揺れる頭をなんとか上げると、薄ら笑いを浮かべて煌めく紅い双眸があった。
嫌な予感がする。繋いだ手がびくりと震えた。

「ひだり手のあくしゅはけっとうのあいずで、みぎ手のあくしゅはしんあいのしるしなんだってさ」

決闘と、親愛と。
さて、俺たちが今繋いでいる手はどちらでしょう。

ぐるんぐるんと目が廻る。ぐわんぐわんと脳が揺れる。
思わず繋ぎ合った手に視線を落とすと、次の瞬間身体がぐらりと傾いた。
それが酔いによるものか、或いは目の前の男に押し倒されたからなのか、そんなことは知りたくもなかった。




06握手
(ひだりては、あるいはそのくすりゆびは)


 ̄ ̄
土方抵抗はwww



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