03



「止まれ止まれ止まれ止まれ止まれって! 止まって下さいお願いします!」

「それァ俺の台詞だァァァァ!」

やべぇこのままじゃ遅刻だからと、ちゃらんぽらんな担任の提案を聞いてしまったのが運のつき。
土方はバタバタはためく白衣に阻まれながら、銀八の腰に掴まって、自転車で坂を疾走していた。俗に言う二人乗りだった。

親がいない土方が、土日なのをいいことに恋人のアパートに泊まりに行くことは珍しいことではない。
そして、こうして月曜の朝に二人仲良く寝坊して自転車を飛ばすことも、残念ながら珍しいことではないのだ。

「いい加減学習しろよてめえェェェ!」

何度この坂で死にそうになってんだ、と背後から怒鳴り付けてやれば、「だって間に合わねェだろうがァァァ!」なんて多少上擦った怒声が返ってくる。
違う、そういうことじゃない。
ブレーキの効きが悪い銀八の自転車は、しかし金がないからと放置されたままだ。土方としてはいい加減ブレーキを直せ、さもなければ頼むから目覚まし時計を買ってくれ、と言ったつもりだった。

「だから今日こそは俺が漕ぐって言ったじゃねェかァァァ!」

「駄目ですゥゥゥ! 土方くんにそんなことさせませんんんん!」

「だぁぁぁ! こっち向くな、前見ろ前ェェェ!」

言い争っている間にも、どんどん自転車は加速していく。坂の麓にある高校も、どんどん近づいてくる。といっても、正面に広がるのは校門ではなく学校の横側、つまり不審者侵入防止用の緑のフェンスだ。

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」」


ガッシャーンッッ!


それは始業ベルの鳴るちょうど3分前、月曜日にだけ銀魂高校に響き渡る予鈴の音だった。




03二人乗り
(「土方くん怪我はない?」「…あんたの背中にはぶつかったけどな」)


 ̄ ̄
ちなみに銀八さんはフェンスやハンドルで顔面強打。後ろの土方くんは人間エアバックのおかげて比較的軽傷です。だから後ろw
しかし銀八つぁん、気ィつかうとこそこじゃない。



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