「トシ! たまにはちゃんと休養をとれ」

近藤にそう言われて、屯所から追い出されたのが、つい数分前のこと。
黒い着流しを身に纏った土方は、フラフラと自宅への帰路についていた。
普段から鈍感な近藤に心配をかけるほど、自分の顔色は悪かったのだろうか。確かにここ最近はろくに寝てやしなかったが。
そもそも、土方がまともな休暇を取れないのは、周りの馬鹿達が馬鹿過ぎるせいだった。ストーカーの上司やら、命を狙ってくるドS王子やら、あと無駄に騒ぎを起こすマダオの天パやら、数え始めればキリがない。フォローする身にもなって欲しいと思うのは高望みなのだろうか。
モヤモヤとしたものを抱かえながら歩き続ける。
加えた煙草が短くなり、吸える限界が訪れたところで、土方は自宅に着いた。そして思考が止まった。

「………よし、落ち着け俺。ここは俺ん家だよな。どっからどう見てもそうだよな。間違いねェよ、うん」

土方は確かめるように呟いたあと、戸にかかる表札を二度見して、そして家の外観をじっくりと眺め直した。
正真正銘、自分の私宅だった。
屯所泊まりが多いため、滅多に使わないとは言え、確かにこの目で見定めてこの手で選んだ休息所だった。
いや、ならばどうして、




「なんでてめえがいるんだ、桂ァァァァァッッ!」


そう、何故か玄関の前にはウザったい長髪の青年が、炬燵を広げてくつろいでいた。心の底からまったく意味が分からない。
家の中に上がり込むのではなく、外でくつろがれているのは、まだマシだったと思うべきか、馬鹿だと呆れるべきか。

「おぉ土方、遅いではないか。そろそろ春とはいえ、凍える所だったぞ」

絶対ェこれ、ご近所の噂になってる。家の外で炬燵使う習慣あると思われてる、と、明らかに疲れとは違う原因の頭痛が土方を襲った。
まぁある意味疲れによるものでもあるが、精神的な疲れだ。ストレスで禿げそうだ。

「春はてめえの頭ん中だ。寧ろそのまま凍え死にしちまえば良かったのに」

「春じゃない桂だ」

「つかテロリストが何の用だよ」

「エリザベスが伊予の土産にみかんを買ってきてな。貴様にもくれてやろうと思ったのだ」

「……どうしよう、こんな馬鹿を非番の日にまで相手しようとは思えねェんだけど。逮捕することすら煩わしいんだけど。見逃してやるから失せろ指名手配犯」

これ程に職務怠慢な自分を近藤に見せたら、もう有給取れって口煩く言われないだろうと、半分泣きそうになりながら、土方は携帯灰皿に短くなりすぎた煙草を押し付けた。
家主が帰ってきたからか、「あ、済まぬがそっちの角を持ってくれ」と、炬燵を家の中へと運び入れる気満々の桂に、漏れるのは溜め息だ。
土方は懐からケータイを取り出すと、最近何だかんだで結局登録したひとつの電話番号を呼び出した。


「もしもしサブちゃん? 自宅をテロリストが占拠してるんだけどどうしよう」




 ̄ ̄
総受け文を書いてたつもりが途中でワケわからなくなった残骸。
オチてないとかきっと気のせい←

見廻組を呼んだのは真選組だと仕事が増えるからです。自分の。
なんやかんや言いつつ土方くんはサブちゃんと仲良し(笑)




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