一方の高杉は、なんか色々それどころではなかった。というかテンションMAXだった。

(やべェ、マジやべェ。なんだよ こいつァ)

腰を動かしながら高杉は思った。いや、仮に動かしたくないと思ったとしても止められそうにない。
自分の下で淫らに艶めかしく喘ぐ、真選組の副長サマ。
火照って桃色に染まった全身や、切れ長の瞳に溢れる涙。無駄に整った顔立ちに加えられたそのオプションは、なんか色々破壊力がデカかった。
これで――土方の言動からして――ハジメテだというのだから驚きだ。

昨夜、高杉が万斉と共に月見がてらブラブラ散歩をしていると、前々から目を付けていた土方を偶然見つた。綺麗な満月に酔ってでもいたのだろう、そのまま、この際だし抱いてしまおう、という考えに至った。
もちろん隣にいた万斉に唆されたワケではない。
しかし、高杉本人はそう思ってるものの実際は、土方を気に入ってからの高杉が鬼兵隊内で、やれ『土方は美人』だの『土方は綺麗』だの、ぶちぶちウザかったから、いっそのこと高杉のお守りを土方に押し付けてしまおうか、という万斉の……いや鬼兵隊全員の思惑があったのだが。因みに高杉の鬼兵隊内でのあだ名が『ウザ杉』だと、本人そして敵方に知られていないのは不幸中の幸いか。
それに例え高杉が真選組にお縄になったとしても『馬鹿は死なないって言うし……』という訳の分からない信頼が鬼兵隊にはあった。

まぁとにかく、ウザ杉……もとい高杉は万斉と別れた後、土方が寝静まるのを待って部屋に侵入した。
それから一緒の布団に潜り込んで準備は完了だった。

万斉いわく――この辺からも一連の高杉の行動が万斉のコントロール下にあった事が伺える――土方は押しに弱く、ほだされやすい。ただし敵に対しての隙は無いに等しいとの事。
それを聞いた高杉は、ならば強引に押し掛けてやるかと作戦を立てたのだ。
敵に対して隙が無いという点は『一度既に抱いた』つまり『既に懐に高杉をいれた事がある』等の方便で事足りるだろう。

そんなこんなで、いくらウザ杉でどこかヘタレ気質を漂わせていてもそこは鬼兵隊総督。見事作戦を成功させ、現在に至る訳だったが……やっぱり高杉は未だ色々テンパってた。
そもそも挿れた瞬間からイきそうだったのだ。いや寧ろ挿れる前、土方が快感に喘ぎ始めた時からアブナかった。土方から見えない位置にある足で、己のもう片方の足を密かにつねって必死に気を紛らわせていた事をいったい誰が知ってようか。

「ふぅ…ンッッはッ、ヤあぁああ」

その時、絶大な色気を含む土方の声が高杉の耳に飛び込んできた。脳ミソが瞬時に瞬間湯沸し器宜しく沸騰する。

(いや、やべェって! 頼むからそれ以上嬌声あげんじゃねェ!)

「やぁ………たか…す、ぎぁッッ……!」

「ッッ! ひ、人の話聞けや、この人間最終兵器がァ!」

自分から強引にヤり出しておいて、こんな事を言うのでは、言われた方の土方にもし考える余裕があったなら、たまったものではなかっただろう。
別に今なら高杉がイった所で、大した不名誉にはならないのだが、突っ込まれてる方より先にイくのは…と、オトコマエ――だと本人思い込んでいる――な精神で高杉はひたすら我慢し、無駄に自分の首を絞めていた。

(つーか早くイけや、土方の野郎!)

後ろだけではイけないのだと、テンパる高杉は気付けていない。理不尽な焦りを自らが組敷く男に向けるその様子は、なんかもう自業自得過ぎて哀れだった。
沸騰した頭では、もう自分が何をしたいのか、何をしているのか、この行為がどこへ向かっているのか分からなくなっているのだろう。

意地の張り合い、というより高杉による自業自得ショーがその後も刻々と続き、高杉に誰か助けてオーラが出始めた頃、無駄に与え続けられる快感にいい加減痺れを切らした土方が渾身の力で「馬鹿野郎!」と叫んだ。
そのまま両手首を押さえ付けていた高杉の手を振り払い、必死な形相で土方は自分のモノを扱き出した。

「……ッあ…イく!」

土方のあまりの形相に一時呆然としていた高杉も、白濁が飛び散る瞬間の扇情的な表情を見て、限界を迎えた意識がフェードアウトした。



 *



ようやくイけた瞬間、土方の視界が真っ赤に染まった。

(………あ? 真っ赤? 頭が真っ白とかなら分かるが、視界が真っ赤?)

荒い息を整えながら自分の上に倒れ込んだ高杉を見ると、その顔一面が血にまみれていた。
吐血か!? と、ドキリとした土方だったが、どうやら出血源は口ではない。

(そうだ、どっちかってぇと口より少し上の……)

出血源を見つけた途端、土方の火照っていた身体が急激に冷めた。かつてないくらいの勢いで冷めた。自身でも感心するくらい一瞬で冷めた。

(興奮し過ぎで…ってか? いやいや普通これァ、童貞でもあり得ないだろ)

男は馬鹿な生き物だとか言うが、これは馬鹿過ぎだった。寧ろ馬鹿杉だった。






「……気絶するぐらい鼻血出すか普通?」

奇妙な物を見るように土方が視線を送った先にいた高杉は、鼻血をドクドク流しながらくたばっていた。

(嗚呼、……情けねェ)

それは高杉に対してだったのか、そんな男に強姦されてしまった自分自身に対してだったのか、分からぬままに土方は長々とため息を吐いた。




その後の土方の行動は非常に迅速だった。
まず高杉を誰にも見られないよう裏口から蹴り出した。鼻血は一滴たりとも拭き取ってやらなかった。刀を取ってきて斬る暇さえも惜しかった。
そして布団をごみ袋に詰めて部屋中を掃除した。台風以上の厳重な戸締りをして、ついでに塩も撒いた。

風呂場に向かいながら土方は思う。これからは鬼兵隊絡みの事件で前線に立つのは止めようと。
それが照れや恥じからくる思いではなく『二度と関わりたくない』という脱力感からくるものであるのは明白だった。





(強姦されたのに怒りが沸かないって貴重な体験だよな)




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なんだかんだで、この話の晋助がサイト内で1番行動力あると思う




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