いやいや、これ……普通にあり得ねェからコレ。

必死に現実逃避を試みる土方の隣で、問題の隻眼の青年がスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。



 *



「よーし落ち着け俺。Be cool……」

小鳥の軽やかなさえずりと共に部屋の窓から朝の陽射しが差し込む中、土方は一人無意識に呟いた。
こんな事を声に出して言っている時点で、普段からは考えられない程に動揺しているのだが、それすらも本人気付けていない状態だった。

そもそもまず何故自分の隣に招いた覚えのない青年が寝ているのかが分からない。
1つの布団にお互い素っ裸で、だ。

「……しかも、よりによって高杉晋助かよ」

そう、更にタチの悪い事に自分の隣でのんきに爆睡しているのは、敵であるはずの高杉だった。
だいたい布団にくるまって幸せそうに眠るテロリストってどうなのだろう。

(そもそもこいつァ過激派の超危険人物じゃあなかったか? 俺の記憶違いじゃねェのって程間抜けヅラで寝てんだけど……)

嗚呼、ワケが分からない。
真選組の頭脳と言われる自慢の脳ミソがショートしてしまう前に、土方はこの状態を打開するべく素早く行動に移った。

「6時52分34秒、高杉晋助。殺人、器物破損その他諸々の罪、あと不法侵入の現行犯で逮捕する」

ガシャン

未だ眠り続けるテロリストの腕にはまった銀色の手錠が、小気味の良い音を室内に響き渡らせた。




「……って何すんだァ、テメエ」

次の瞬間、まさしく地の底を這うような凄まじくドスの効いた声が響いてきて、思わず土方はビクッと身体を震わせてしまった。
その反応に、いかにも鬼畜チックな顔をした隻眼のテロリストは気をよくしたらしく、クッと揶揄めいた嘲笑い声をもらす。

「怖ェのかァ? 鬼の副長さんがよォ。昨夜は無遠慮に求めてきたくせに? あれ程あんあん鳴いといて今さら怖じ気つきましたってか?」

「でたらめ言うんじゃねェ! だいたい俺ァ怖かねェし、昨夜あんあん鳴いてもいねェ!」

覚えも無い上に、とんでもない侮辱の台詞を吐かれ、土方の顔は一瞬で怒りに染まる。

(これァあれだ。ドSの特徴の1つである言葉攻めというやつだ。総悟や万事屋のよくやるアレだ)

だから答えたら負けだ、と分かってるのだが喧嘩っ早い性格故か律儀に反応を返してしまう。自分の悪い癖なのだろう。
思わず叫んだ土方の過敏なリアクションに、どうやら加虐心が多分にくすぐられたらしい高杉は、人の神経を逆撫でするように、ふんッと鼻で笑った。


ドサッ

「え……?」

土方の視界が反転し、反応出来ない内に布団の上に押し倒される。
いつの間に? とか、そもそもテメエいつ起きたんだよ とか、訊きたい事は山ほどある……が、まずは上にのし掛かる隻眼のテロリストをなんとかするべきだろう。下手をすればこのまま首と胴体がサヨウナラという事態もあり得る。
土方はそう思って、これまたいつの間にか手錠を外してしまった高杉を下から睨み付けた。

「テメエ何しやがる!」

「何ってナニ。なんせ昨夜の事ァ忘れちまったようだからなァ。身体から思い出させてやんよ」

ニヤリと指名手配犯に相応しい顔で笑われて、そのまま首筋を舐められる。

「ッッ!?」

ゾワリと広がる感覚に目を見開けば、制止を請うために開けた口に吸い付かれた。

「ンく……ふ」

啌内を犯され、歯列をなぞられ、不本意ながらも感じてしまうのは、最近ご無沙汰でちょっと溜まっていて、加えて高杉が無駄に巧いからに違いない。昨夜本当に犯されたが故の反応だとは思いたくない。

「…テメ…は……ホモかコラ」

土方とてそういう経験――女でだが――を結構積んでいるから、キスの角度を変える瞬間に上手く言葉を紡いでやる。
まぁその努力も、黙れとばかりに更に深く口付けられたから、あまり意味をなさないものであったが。

「ふ……ンぁ!?」

ムカつく事この上ない口封じに悔しい思いをしていると、突然自分のモノを高杉に握られてビクついてしまった。
呆然と目の前の男を凝視すると、程なくして高杉の意外に繊細な指がスルリと土方の後ろの割れ目をなぞった。

「は!? 低……間違えた、高杉! テメエどこ揉んでやが……うぁッッ!?」

「土方テメエ今『低』っつったか? 何見て『低』っつったんだァ?」

余裕あんじゃねェか、と嘲笑され、慣らす事もなしに――慣らす、慣らさないの問題でもないが――秘部に指をしかも2本突っ込まれた。

(痛ェ気持ち悪ィ痛ェ気持ち悪ィ痛ェッッ!)

視界がバチンと弾け、直接神経に焼き鏝が押し付けられるような感覚が土方を襲う。中に感じる詰まったような圧迫感に、スパークした脳はその言葉しか繰り返さない。
切れ長の形の良い土方の目尻から、透明な雫が滑り落ちた。
それは生理的なそれか、恐怖を感じたためのそれか、或いは悔しくて感情が高ぶったためのそれか、自分でも欠片も分からなかったけど。

「ハッ、泣いてんのかよ」

揶揄も露な高杉の台詞に、当然だと言い返してやりたい。未だ続く不快な圧迫感に頭も身体も崩壊寸前だった。

嗚呼、全ての回路が焦げ切れそうだ。


「ぅ…ぐ………や、めッ…たかす……ぎィ…………ぅ"…ッッあン!」

「ここかァ?」

「…ぁ……え?」

突然襲った凄まじい快感と、それにより自らが上げた甲高く甘い声に土方は目を見張る。
今のはなんだ! と高杉に怒鳴ってやりたかったけど、その凄まじい快感を産み出す部分を執拗に擦られ、口から出るのは『あン』とか『やァ』とか馬鹿みたいな喘ぎ声だけに終わる。

暫くそこ、一般的に前立腺と呼ばれる部分と、男の象徴に刺激を与えられ続け、愛撫により土方の秘部が、快感により土方の思考が、ドロドロに溶けた頃に高杉は既に勃っている己のモノを躊躇い無く取り出した。
その頃には土方も高杉の行動を理解する余裕も理性も残っていなかった。だから不覚にも、ソレを許してしまったのだろう。

「ッッ! ンああぁぁあぁッッ」

ソノ瞬間、幸か不幸か身体は痛み3快感7くらいで、快感の方を多めに拾ったようだったが。

溺れそうな灼熱に、もう頭なんて真っ白だ。




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