実は俺達…あれなんです。 | ナノ

愛の手配書写真事件


なんとなく、ふらりと出掛けた江戸の町で、俺は信じられないモノを目撃した。

「なんじゃこりゃァァァ!?」

響き渡る絶叫に通りすがりの町人共が振り返り、叫んでいる男――俺だ――と電信柱に貼ってあるポスターを交互に見比べたあと、誰もが誰も、スッと視線をそらして足早に立ち去っていった。
何故かってェ? 決まってる。
電信柱に貼ってあるポスターは、この顔にピンと来たら110番……つまり手配書だ。高杉晋助、そう俺の。
勿論それだけなら何も問題はなかった。凶悪なテロリストに関わりたくないと思うのは人として当然の反応じゃねェか。それを寂しくねェたぁ言わねェが、俺が目指してるのは『近寄りがたいけど話してみると実はいい人』みたいなダークヒーローキャラだから我慢している。そういう立ち位置狙ってるから俺。
最終回ではマイハニートウシロウと一緒に手と手を取り合って、実は全ての黒幕だったゴリラ・G・イサーオと戦う予定だから。いや、妄想だけど。ちくしょうあのゴリラ俺のトウシロウにべたべたしやがって。妄想の中でぐれェトウシロウに嫌われて死ね!

だがそんな未来予想図も、マイハニー本人の手で破壊されたようだ。いや、この先の歴史を知ってるから、そもそもからして叶うはずのねェ未来予想図とは分かっているが。

あ? そういえば未来予想図と言えばあれだな。
ブレーキランプ5回点滅ぅア・イ・シ・テ・ルのサイン〜

て、そうじゃない。何の話だ。ブレーキランプは関係ない。ホントにやられたら後続車迷惑だよな、とか以前綺麗な笑顔で曲の雰囲気ぶち壊しにしていたマイハニーも今は関係ない。
大体ダークヒーローキャラ位置を狙うには、クールで粋な男じゃねェといけなかった。俺の持論だ。
しかし俺は、指名手配犯だからという理由で避けられているワケじゃなかったらしい。

「絶対あの馬鹿の仕業だ」

低い声で呟く。あの馬鹿が面白そうだからとかいう意味不明な理由で、色々手回ししたに違ぇねェ。
あいつ1ぺん殺してやろうか、なんて、出来もしねェ呪詛を口の中で吐き捨てて、目の前の手配書の写真を睨み付けた。




そこには、フリフリのエプロンを着けてシュークリームを作っている、朗らかな笑みの俺がいた。


 ̄ ̄
だってトウシロウが食べたいって言ったから!



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -