第四訓+
<第一印象がいい奴にロクな奴はいないけど第一印象が悪いとなかなか仲良く出来ない>
呼び出された俺が最初に見たのは、タケ●プターをつけて空中に胡座かきながら独り大笑いしている馬鹿な上司兼恋人だった。
「やべェぞシンスケ、あれ見ろよ」
あれが組織の幹部だ、と指を差された方を見下ろすと、一台のスクーターを乗り回す猫耳の……しかもブスな年増女がいた。
…って、あれ女でいいんだよな?
「なァなァシンスケ、あの顔ヤバくね? まじウケね?」
「言ってる場合か! 銀時は無事なんだろうなァ!?」
確かに俺も思ったけどよ! あの顔はねェなと思ったけどよ!
「馬鹿、幾ら俺でも坂田銀時に何かあったらこんな余裕ぶっこいてねェって」
てめえに馬鹿って言われたくねェよ!
「大丈夫だ。猫耳ババァの後ろの車、あれにシンパチが乗って追跡中だ」
「いや、あれなんか暴走してね? あれなんか民家壊してね? ガリガリガリってなってね?」
「だから余計ウケるんだろ?」
「え、」
「ギャハハハ! おい見ろ、シンパチあいつ川に落ちやがったぜ! ババァに逃げられてやんのープププッ」
「お前部下の命を何だと思ってやがんだァァァァ!」
「『高杉晋助』がそれを言うか?」
結局、猫耳ババァはレジの金を持ち逃げしてたらしく、この時代の警察に御用となっていった。
「おいやべェぞトウシロウ。あのアマ連れていかれちまわァ」
そうなりゃあいつが拘束されてる何日間、俺達にゃァ手を出す術がねェ。とっとと締め上げて組織の情報を頂くつもりだったってのに。
焦る俺の隣でトウシロウはあっけらかんと言う。
「あぁ、あいつが組織の幹部ってのお前を呼び出すための嘘だ」
…………はぁ?
「そーでも言わねェとお前来ねェだろ? どうしてもあのウケる顔とウケるシンパチをシンスケに見てもらいたくてな」
あははは、ごめーんねVv
とかなんとか、ものっそい綺麗な笑顔でテヘッとかしている目の前の馬鹿。
なんだこいつなんだこいつなんだこいつ!
ウケる顔は分かるがウケるシンパチってなんだウケねェよ部下の危機は流石に笑えねェよ高杉晋助だろうと笑えねェんだよ大体冷酷な『高杉晋助』は演技なんだっててめえも知ってんだろ知ってて言ってんだろ。
そんな混乱しまくった考えがぐるぐる浮かんでは消え浮かんでは消えしながらも、俺は可愛い可愛い恋人を初めて殴り付けたくなった。
……いや嘘だ。
やっぱこんな可愛い奴を殴れねェよ!