春の歌
さくら花ちりぬる風のなごりには
水なき空に波ぞ立ちける
紀貫之
君ならで誰にか見せむ梅の花
色をも香をもしる人ぞしる
紀友則
人はいさ心も知らずふるさとは
花ぞ昔の香ににほひける
紀貫之
春の夜のやみはあやなし梅の花
色こそ見えね香やはかくるる
凡河内躬恒
片隅で椿が梅を感じてゐる
林原耒井
椿落ちて一僧笑ひ行きぬ
堀麦水
山ねむる山のふもとに海ねむる
かなしき春の国を旅ゆく
若山牧水
赤い椿白い椿と落ちにけり
河東碧梧桐
世の中に絶えて桜のなかりせば
春の心はのどけからまし
在原業平
しろじろと花を盛り上げて庭ざくら
おのが光りに暗く曇りをり
太田水穂