<16>

運命という足枷を知らなかったあの頃はどこへだっていけた。今はただあの頃を懐かしんで檻の中で自分の無力さをもどかしく思うことしかできない。ただ一つの希望もついえた。広大な海のような人の世で足掻く私たちはなんて滑稽なのだろう。大きな歯車を止めようという志に燃えた私はどこへ消えた。所詮私はその程度のものだった。





<17>

諦めたくない。けど、そうせざるをえなかったのだ。それはただの言い訳でしかない。ただの弱さをさらけ出す言葉でしかない。死にゆく中で思い出すのは貴方の温もり。願わくば、貴方にもう一度会いたい。それは、例えるならば、桜のように儚いものでした。消えゆく私はただひたすらに貴方の幸せを願います。そして、許されるならば、私を忘れないで欲しいと。




<18>

なんとなく、私は人の繋がりの狭間で生きてく人間だと思う。ちまちまと色んな人に私を溢すようにして自分を維持してる。どうしようもなく人が嫌いで、全てとの関わりを絶って一人きりになりたいのに、どうしようもなく人が好きで、寂しくて仕方ないから誰かと繋がっていたい。そんな矛盾を抱え、今日も私は笑顔を作って「おはよう」と口を動かすの。