63

「そーいやぁ今年はどっか行ったりしないのかい?」


今日はバーベキューをしますよ!とエステルが思いついたことからユーリ先輩と私私は勿論。レイヴンにヒカルまでが集まっていた。
それぞれに肉やら野菜やらを頬張っているとノンアルコールのエールを煽りながらレイヴンが思い出したかのように呟いた。
ヒカルに関しては去年は勿論中学生なので旅行をしていたことを知らずに首を傾げていた。
その言葉を聞くか否やエステルはよくぞ言ってくれました!と自信たっぷりに胸を張った。
実は今日のバーベキューは旅行の話をする為だったらしい


「えぇー!先輩たち去年旅行行ってるんですか!?なんで教えてくれなかったんですか!」
「なんでもなにも…お前そんとき高校いないだろ」
「場所はまたうちの別荘でどうです?」
「別荘!!」
「ヒカル、テンション上がり過ぎだよ…」
「エステル先輩がお嬢様なのは知ってましたけどここまでとは…!と、いうか去年の今頃って姫先輩とレイヴン先生付き合ってないですよね、なんで一緒に?」
「あー…」


当時マイコちゃんらに誘われていたあの光景を見てモヤモヤしたから。なんて言えない
今は勿論それが嫉妬だったことを認めるけれど、今更言うのはなんだか恥ずかしすぎる。そう思った私は目を泳がせながら唸った。
丁度レイヴンと目が合ってしまって、少し含んだ様に笑ったレイヴンは得意げに口を開き始める。


「あの時の姫ちゃんは強引だったなぁ。おっさん押し負けて運転手よ」
「い、良いじゃないですか言わなくても!」
「へ〜じゃあ姫先輩から誘ったんですね」
「ま〜運転手なんて言っても俺もかなりあの時満喫したけどねぇ!」


レイヴンとヒカルが何故かニヤリと笑ってこちらを見るのを見て見ぬ振りをして、ユーリ先輩の影に隠れるとユーリ先輩は俺を巻き込むな。と呆れる様に笑った。
クスクスと笑うエステルとフレン先輩はもう既に旅行のプランを考え始めているようで(どちらかというとフレン先輩はエステルに巻き込まれてる)今年もなんだかんだで旅行に行けるようです。


「じゃぁ、来週なんてどうでしょう?」
「来週ならま〜部活の休みまだ調整できるし俺は問題ないわよ」
「っし!俺も行けるってことですね!…って…あっ!…」
「ヒカル、どうしたんだい?」
「来週はちょーっと厳しそうでした…!いやぁ、俺のことは気にせず行って来て下さい…!」


携帯で予定管理をしているのか携帯片手に頭を抱えたヒカルは残念そうに眉を下げてはいるものの、満更でもなさそうな顔をする
すかさずレイヴンが、女か。と言うと春には私にあんなに粘着していたヒカルは今度は逆に女の子から猛アプローチを受けているらしい。こちらの予定を優先しないということはヒカル自身も悪く思っている訳ではないのだろう
その子との予定が入っているからなのか、少し浮かれた調子になったヒカルはまた今度お願いします!とニコリと懐っこく笑った。


△△△


「意外とポンポン予定が決まるもんだねぇ。おっさんまで若くなった気分」
「レイくんは十分若く見えますよ?」
「あらそう?」


急遽決まった旅行から翌日
海に入るなら水着も用意しなきゃと私がクローゼットから水着を取り出しているとレイヴンは真顔で買ってあげるから水着を新調しようか。と呟いた
折角買ったのにまだ全然着ていない水着を見つめて勿体ないし大丈夫だとやんわりと断ったけれど、その意見は通ることはなくレイヴンはレイくんへと速やかに変装を遂げて、今ショッピングモールまで来ていた


「それにしてもなんで水着あれじゃダメだったんです?」
「あの頃と今とじゃ状況が違うの」
「?」
「恋人の肌をヤローの目から隠して何が悪い」
「わ、悪くないです…?」
「おじさんが姫にぴったりなの選んであげるから行くよ!」
「ちょ…!なんかそれ嫌です!」


なんだか良からぬ間柄を彷彿とさせそうな発言に後ずさるとレイヴンに腕を引かれてあっという間に水着売り場まで私は連れてこられてしまった。
男女のマネキンがお揃いの柄の水着を纏っているのに目を奪われると、レイヴンから早速NGを喰らうことになった。
流石にペアは恥ずかしいらしい。といっても私も流石に目立つ水着は気が引けたのですぐにその場から離れた


「水着ってこんなたくさんあるのねぇ」
「目移りしちゃうな〜…レイくんはどんなのを私に着て欲しいんですか?」
「ん〜そーねぇ」


あ、こんな感じ!?と自信満々で指差されたのは競泳水着のようなワンピースタイプの水着だった。
思わず顔を顰めると、冗談だって!と茶化すレイヴンはなんだか楽しそうだ
割と男の人って下着屋さんだったり女の子って感じのお店に入りたがらないイメージがあるけれどレイヴンはどこまでも突き進んでいきそうな勢いだ。
めぼしい水着を私の前であてがっては首を傾げてまたかけられていた所に戻している。
自分でも探してみよう、と露出があまりなさそうな水着を見て回る。
体系カバー。魅力的な言葉だ。そう言えば去年の夏よりまだ体重は戻せていないのだった、これはお腹周りを重点的に…とキョロキョロ見て回っているとレイヴンが一着の水着を手にパタパタ駆けて来た。


「これこれ!こんなのどう?」
「!」
「オフショルダーっていうの?ヘソ上くらいまで布あるし、下はまぁ…これが普通だもんね」


ど?姫に似合うと思うけど。と今度は正真正銘の本命らしくおずおずと聞くレイヴンから水着を受け取る
黄色い花柄のオフショルダーになっている水着は腕もいい感じに隠れているし、胸回りも大振りなフリルがあって一見洋服としても着れそうなデザインだった。
少し深めのパンツは腰回りを隠してくれそうだし…
このおじさん本当にぴったりなの選んで来た…!内心そんな風なことを考えていると私からの返答がなくて少し不安げなレイヴンが顔を覗き込んで来た。


「だめかしら?」
「いえ、私もこんな感じのがいいなぁって思ってました!」
「お、さっすが俺様!」
「ありがとうございます!…そういえば、レイくんは新調しないんですか?」
「ん〜おっさんは姫のが決まれば…別に、去年のままでも」
「折角だし、新調しましょ?私が選んでもいいですか?」
「ん…じゃあお願いしようか」


今度はメンズの水着コーナーを回って行って、競泳水着の仕返しよろしく真っ赤なブーメランパンツを指差すとレイヴンはすみませんでした。と私に向かって謝って来た。
水着一つでここまで盛り上がれるなんて思わなかった
来週に向けて旅行用の消耗品も買いそろえて、準備はもう万全だ!




▽▽▽



66 / 86


←前へ  次へ→



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -