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中間テストが終わった。
翌週になってそれぞれの教科で答案用紙が返されて、私はふう、とやっと気が抜けたような気がした。
もともと理科以外の他の教科は自信があるので採点欄をみて納得いくの点数が赤ペンで書き記されていた。
みんなで勉強会をした時にユーリ先輩によって強引に招待されたレイヴン先生からもしっかり教えてもらったのだ、ここは点数を甘んじて受け入れよう…と思っていればちょうど先生が教室へ入って来た。
学級委員が号令を終えれば先生は万遍の笑みで口を開いた。


「はい、じゃあみんなのお待ちかねのテスト!返却するから名前呼ばれたら取りに来てね」


えー、あー。と声が聞こえる中で先生は淡々と生徒の名前を呼び続けている、そろそろ自分の番だと立ち上がれば姫ちゃーんと呼ばれた。
軽く二つに折り畳まれた答案用紙を受け取れば先生は笑顔だった。

「頑張ったね」
「…ありがとうございます」

小声で教卓の前で小さく会話をしてそそくさと自分の席へ戻って広げれば、赤ペンで97点と記されてあり、よくできました!とはなまるといびつな先生の似顔絵が描いてあった。
先生絵へたくそ…と思わず吹き出して前を向けば満更でもない様に先生が私の方を見ていた。
目が合ったのも一瞬で、何事もなかったかの様に先生は黒板に向き直って間違いが多かった所の復習を始めた。


△△△


「いやー今回も無事終わって良かったー」
「ふふふ、その感じだと今回も姫はテスト問題なさそうなんですね!」
「毎回お騒がせしております…」


放課後になり帰る準備を始めていると、私のご機嫌さにエステルは笑っていた。
テストも3回目、エステルは私のテスト前の消沈具合と答案が返された後の機嫌の良さを見慣れたのだろう、良かったです。と自分の様に喜んでくれた。
昇降口の方へエステルと歩きながら、勉強を付き合ってくれた3人と先生にも改めてお礼がしたい。と考えていれば先生が昇降口よりも更に奥の方にいるのが見えて、エステルに先に外に行ってて欲しい。とお願いして走った。


「レイヴン先生!!」
「あ、姫ちゃん」
「ちょうど先生が見えたのでお礼に…勉強見て下さっていろいろありがとうございました!」
「いいのいいの!!その感じだと他の教科も上々みたいね」
「はい!おかげさまで!それにしても先生絵下手すぎませんか…?」


笑っちゃったじゃないですか。と続ければ先生は拗ねた様に、おっさん渾身の似顔絵なのに!!と言った。
その後に先生は当たり前の様に私の頭を撫でる。
ここ学校ですよ!?と少し声を張りながら顔を赤くすれば先生は、学校じゃなかったら良いの?といたずらに笑った。


「もう…からかわないで下さい…」
「姫ちゃんはすぐ顔赤くなる子よね、ほんと!」


満足そうに私の頭を撫で続ける先生の手の感触に勉強会の時の出来事を思い出して更に真っ赤になれば先生もつられて少しだけ赤くなった。
ふと後ろから声をかけられたので振り向こうとすれば心地よかった先生の手も同時に離れた。


「随分仲が良いのだな」
「デューク先生…」
「滅多に生徒が通らない方で笑い声が聞こえたので来てみれば、高瀬とレイヴン先生だったか。」

無機質で思考が読めないデューク先生は今までのやり取りを全部見ていたのでは、と少しヒヤリとした。

「高瀬はここで何をしている?」
「あ、帰ろうとしたらちょうどレイヴン先生が見えたので…勉強教えていただいたのでお礼を言おうと思って話していました」
「そうか。高瀬は世界史のテストも優秀だったな。よくやった」

ありがとうございます。と笑顔で返せば、デューク先生が少しだけ笑って返してくれた。
レイヴン先生が黙ってしまったので少し気まずくなってしまい、失礼します!と礼をして昇降口の外のエステルが待っている場所へ向かった。





「…随分仲が良いな?」
「…ダメですかね?」


姫ちゃんがいなくなるのを見届けてからまたデュークが口を開いた。
俺とした事が姫ちゃんをからかって撫でるのに夢中で同僚、ましてやデュークが近づくのを見逃してしまっていた。


「生徒と仲が良いことはいい事だと思うが。一人の生徒に固執していればいつか他から指摘を受けるぞ
距離を見誤るなよ。」
「…はい」


やはりデュークは一部始終を見ていたらしい。
学園の先生方から見てももちろん俺は不良教師であるのは確かで、その手の話に興味がないデューク先生の耳にも俺の私生活での乱れは耳に入っているのだろう。
外部の女性関係ならまだしも、生徒となど御法度中の御法度なのはわかっていた。


「…どうしたもんかね」


先日姫ちゃんのことが大事な存在だと一生徒であるユーリにバラしてしまった。
今まで飄々と回りをかわして気ままに生きて来た自分に取って、生徒に恋をすること。それを他の生徒に打ち明ける事などはもちろん前例がなく戸惑っている所だった。
持ち前の処世術で切り抜けることはもちろんできるはずなのだが、どうも本人を目の前にしてしまうと箍が外れてしまったかの様に自分自身が浮かれ出してしまう。
職場で見せる事のない顔をデューク先生にも見られてしまったのだから今後はもっと慎重にならなければ…と俺は気を引き締めた。



▽▽▽



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