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「姫!もうすぐ着きますねー!!」
「楽しみだね!」
「まさか先生の車で行くことになるなんて…」
「まさかおっさんがついてくるとは思わなかったな!」
「ハハハハ…いやーおっさんもびっくりよ!!」


本当にびっくりだ。
あたかもいることに違和感を感じさせない女子生徒2人と、どうしてこうなった。と呟く男子生徒2人。
言っておくけどおっさんが一番どうしてこうなったって思ってるよ。
もう笑うしかないのだ。なるようになる。そして他の生徒、学校関係者には見つからないようにしなくては…
人に言い寄られたりなんだりはスルリと抜けるのが得意なはずだったのだが…


「じゃあ、大勢の前じゃなきゃいいんですか?」
「え…姫ちゃん…?」
「先生来週暇ですか?」


助手席にはことの発端を作り出した本人がいる。
キャナリの墓参りに数年ぶりに行ったら、ばったり出くわした隣に住む生徒は冗談でこんな顔をするのだろうか、そうなのであればとんでもなく演技派だ。
俺をまくしたてるように、本気でお誘いしてますけど?と付け加える。


「…いや、まあ来週は特に予定もないけど…」
「じゃあ、決まりですね」
「え…あ…!姫ちゃん…!?」


思い立ったが吉日です。と俺が運転をする横で電話をかけ始める。
待って!嬢ちゃんに電話してるのか!?電話をするフリでは完全にない、スピーカーから呼び出し音が漏れて聞こえるのだ。
と、いうか…おっさんがついてくるってどう説明する気なのだろうか。


「…あ、もしもしエステル?来週のなんだけどさ、うん。レイヴン先生も行きたいって。うん、ちょっと話してたら誘ったら、うんそうそう。」
「え、ちょっと…!!」
「うん、うん。だから先生の車でエステルの別荘までいこ!うんフレン先輩には伝えておいてね!
うん、よろしくねー。じゃあまた来週ね!」



通話を切ってしてやったりとこちらを見るので、いろんな意味でドキッとする。
JKの行動力半端ない…。


「そういうことなので、よろしくお願いします!」
「いや、まって、どう言うこと!?」


半ばどころか、ずっと強引に話を進められて今に至るわけで、さすがに自分も教師の端くれではあるわけだから断る理由をどうにか探そうとしてもこういう時に限って仕事もなければ、今まであまりマンションで顔を合わせなかったと言うのに毎日のように顔を合わせて、楽しみにしてますね。とプレッシャーを受けた。
女子高生の押しに負けてしまった。


「ありがとうございます。」
「へ?」
「先生のことだからどうにか逃げようとするかな。なんて思ってましたし…でもちゃんと車も出してくれましたね」
「ま、まあ姫ちゃんの押しに負けました。ってやつよね…。こうなったらおっさんも楽しむわよ」
「青春してください!」
「半笑いでいわないで、恥ずかしいから!!」


あの日がすぎてから、彼女はコロコロ表情を変えるようになった。
そんな彼女を見ているのも悪い気はしない。
今も、ありがとう。と運転する俺を笑顔で見ているのだ。背徳感はあるが悪い気はしない。


△△△


「海だー!」
「ほんの2ヶ月前くらいにもきただろ…」
「あの時は泳げませんでした」
「子供か」


ユーリと姫ちゃんは本当に仲がいいねぇ。と内心呟く。
つい数分前に嬢ちゃんの別荘にたどり着き車を停めて荷物を降ろし、はやく海に行こうと姫ちゃんは浮き輪を膨らませ始めた。
別荘からは防波堤を挟んですぐ目の前が海で、穏やかに波が立っているのが見える。
浮き輪を膨らまし終えてバタバタと着替えを手に走っていく女子を見送り早々に着替え終わった男子チームで浜辺にパラソルなどをセッティングしようと先に外に出た。


「晴れて良かったですねー!」
「本当にね!!」


ユーリとフレンは年頃だからもちろんだが、俺も別に女子の水着が楽しみでないわけではない。まあ、海にいる女性達にも目は行くが。
後ろから声が聞こえたので2人が着替え終わったのだろうと、チラッと覗けば真っ白でシンプルな水着を着た嬢ちゃんと、水色地に花柄ビキニでパレオを腰に巻いた姫ちゃんが現れた。


「お、やっときたか」
「エ、エステリーゼ様!パーカーを羽織ってくださいと言ったじゃないですか!!」
「フレン!エステル、です!それにすぐ海に入りますし、パーカーは持って来てはありますから!」
「おっさん、口開いてんぞ」
「…へっ!あーごめんごめん」
「ユーリ先輩、ご期待に添えてますか?」
「まあまあだな…」


プイッと顔を反らすユーリとフレンは少し目の行き場に困っているようにも見えた。青い。
まあ無理もない。嬢ちゃんは清楚なお嬢様感が水着着てても溢れてるし、姫ちゃんに関しては意外にも出るところはそれなりに出ていて身長は低いがスタイルは良い。


「姫ちゃんてば随分着やせするのね…」
「っ!セクハラ!」
「なっ!ちょ、褒めてるんだってば」
「え、太ってるってことですか!?」
「いや、そうじゃなくて!!」


もういいから、2人は先に海で遊んで来なさい!!と女子2人の背中を押し、パラソルなどの設営にもう一度戻る。
全員が一斉にため息を出したのは言うまでもない。
遠目で見て目が慣れるまで落ち着こうと言う魂胆は無言で全員が一緒のようだ。


「おっさん、どう思う」
「いや、姫ちゃんが思いのほかスタイルが良くてびっくりね…」
「俺もそう思う」
「青年そんな真顔で言うと、おっさんより変態チックよ?」
「ふ、2人ともなんてこと話してるんだ!!」
「フレンは目泳ぎすぎよ」
「そんなこと言ったって…!そんな先生は小さい声で2人を採点していたじゃないですか…!」
「ほー、で、何点なんだ?エステル」
「80点!」
「姫」
「95点!」
「おっさん…」
「レイヴン先生…」


そんな話に明け暮れる男3人を、いつになったらくるの!と遠くから呼ぶ女子たちは知らない。



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