今日は風が冷たく、花を散らせた木犀も身震いをしているかのように思えます。

今日も今日とて懲りずに、貴方様に質問をしたくなりました。
今まで幾度となく私の中で浮かび、その度に奥底に押し込めていた質問です。今日も今日とてまた、貴方様には訊かずに終わるのでしょう。
分かっていても考えてしまう。老いた頭というものは厄介な面も抱えているのだな、と痛感しております。
その厄介な頭を鎮めるために、何枚の草子に文字を綴ったでしょうか。ですが綴っても綴っても、また考えてしまう。綴るごとに、鎮まるどころかその思いは形を成してしまう。それを鎮めようと私はまた、自分の内心と不毛な争いをするのです。

思う程に募る思い。憧れというものはいつしか別の感情へと推移していましたが、長い間私は気づかないままでした。
それに気づいた今、貴方様へと問いたいことはたった一つです。

貴方様の隣に、私のような存在がいても本当に良いのでしょうか。

背が高く精悍な顔立ちの貴方様の隣に、低い背に幼い顔つきの私。隣に貴方様がいれば、それは余計に際立ってしまいます。
加えてこのような臆病な性格である私は、いつ何時も貴方様の背に隠れてばかりです。なんと情けないことでしょうか。
無論容姿や性格のことだけではありません。貴方様は私よりも若く、先が長い。おおよそ私の齢を二十五に分けたうちの一しか、貴方様は年を重ねていないのです。
この世に生を受けたありとあらゆる者たちと共に居られる時間に限りがあるのは、自然の条理です。ですが、私ははっきり言って、貴方様から見れば年寄り。命の限界が来るのは、どう足掻こうとも私の方が先でしょう。

それでも、貴方様は本当に良いのでしょうか。そう何度も何度も、問いかけようとしました。
それはもう、数え切れない程に。

ですが、私は怖いのです。貴方様と共に居られなくなるということが。
故に私は、長い時間の経った今でも、この質問を貴方様に出来ないでいるのです。

初めて、居てもいいと、居ていいと言って頂けた場所。そう言ってくださった貴方様の隣だなんて、烏滸がましいことは言いません。後ろから、そっとついて行かせてくださるだけで私は幸せです。
共に居ても良いのなら、私はお傍に居させていただきます。

私の命の灯が消える、その時その瞬間まで。

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