今宵のお相手は


 豪華客船メイジ号。一夜にして億単位の金が動くと言われる、海上の不夜城、黄金の桃源郷。その中の目玉中の目玉、「ホストクラブ・キノタケ」へ、今宵私は初めて足を踏み入れた。
 豪華絢爛な店内の照明は少し怪しげで、その場の雰囲気に早くも当てられそうになってしまう。近寄ってきた黒服に適当に客だと伝えれば、少々お待ちください、という言葉と共に黒服は消えた。しばらくすると黒服が名簿を持ってくる、どうやらこれがホストの名簿らしい。人気のある順から書かれているらしいその源氏名と顔写真を上から眺めていく。女性が混ざっているような気もするが気のせいだろうか?

「いかが致しますか?」
「えっと……お任せで。」

 たっぷり悩んでいたからか、とうとう黒服に声をかけられてしまった。こういう場所には慣れていないので、指名をしようにも中々勇気が要る。結局はランダムになるらしいお任せを選んで、席に通された。するといくらか待つうちに、後ろから声がかかる。

「いらっしゃい。君が今日のお客さん?」

 果たしてどんなイケメンが来るのだろうと待っていたが、目の前に現れたのは存外普通の人だった。言っては悪いが、あまりにも凡庸、というような感じの顔。顔立ちは東の島国のものによく似ていた。高い位置で編み込みをして括ったヴァニラ色の髪が、温かい色の照明の光で柔く光っている。睫毛が紫色の影を落とすグリーンの瞳は、エメラルドの色に似ていた。

「は、はい。」
「お客さん、今日が初めてだよね。緊張してる?」

 受け答えでバレたのか、隣に腰掛けながら彼はそういうことを言ってきた。望んで来たとはいえこういう場に慣れているわけではまずないので、大人しく頷いておく。隣に腰掛けた男は先程名簿で見かけた記憶はあるが、印象が強くなかったのか源氏名が記憶に残っていなかった。青年はソファに腰を落ち着けると、少し背を丸めてこちらの顔を覗き込んできた。

「俺はLINKWOOD。今宵は俺がお相手するよ。よろしくね、レディ。――君の名前は?」

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