このお話はシオン様宅"雪月花"の「Blue」と我が家の青空。のコラボ作品です。お話はシオン様に書いていただきました。(時系列は黒曜編前)
シオン様宅の夢主の名前は葵ちゃん(名前は固定です)
青空。夢主と同じく非戦闘員で山本くんの隣の席に座っている女の子。山本くんに想いをよせる姿がとても可愛らしいです!
今回はそんな二人が同じ世界にいたら、という設定でのお話となっております。ぜひぜひ楽しんで頂けますと嬉しいです。

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目覚ましの音で意識が浮上する。いつの間にか眠っていたようだ。と言うのも、昨夜はベッドにはもぐったもののあまり寝付けなかったのである。理由は簡単。山本に告白されたことを何度も思い返してしまい、心臓がバクバクしていてとても寝られる状態じゃなかったからだ。枕に顔を埋めながら足をジタバタとしても、掛け布団をぎゅーっと抱きしめても、私の心臓はおとなしくしてくれなかった。くそ、山本のせいだまったく。

そんなわけで若干寝不足だが、今日も学校はある。早く顔を洗って制服に着替えて、それから朝ご飯も食べないと。ふわぁ、と欠伸をしながらベッドから降り、洗面所へ向かった。




教室に着くとちらほらと生徒がいた。現在時刻は8時07分。まあこの時間ならこんなもんだろう。ドア付近のクラスメートにおはようと声をかけられたので、それに返しつつ自分の席へと歩いて行く。カバンを下ろして椅子に座り、教材を机の中に入れていると、後ろから声が聞こえた。

「葵ちゃん、おはよう!」
「おはよう亜衣ちゃん」

声の主は友達の桐野亜衣ちゃん。優しくて誠実で素敵な子。でも話してるとたまに冗談を言ってきたりする、一緒に居て楽しい子でもある。そんな亜衣ちゃんだが、いつもよりニコニコとしている。なんだか嬉しそう。顔の周りにお花が見えるようだ。

「どうしたの亜衣ちゃん?なにか嬉しいことでもあった?」

そう訊くと、亜衣ちゃんはさらに目を輝かせた。そして少し周りをキョロキョロとした後、私の耳元に顔を寄せ小さくこう言った。

「山本くんと両想い、おめでとう」
「っ、え!?」

思わず大きな声を出してしまい、数人居た生徒がこちらを向く。“ごめん、なんでもない”と言い誤魔化したが、待ってくれ亜衣ちゃん。今なんて言った?山本くんと両想いおめでとう?なんでこの子が知ってるんだ。

「亜衣ちゃん、ちょっと廊下出ようか」

とりあえず人気の少ない屋上前の階段に来た。少し息を吐いて、それから亜衣ちゃんに向き直って問う。

「それで、なんだって?」
「ふふ、山本くんと両想いおめでとうって」

聞き間違いじゃなかった。顔がカーッと熱くなる。そしてそれを見て笑みを深める亜衣ちゃん。

「なん、で、知ってるの?」
「こ、公園の茂みに隠れて見てたから…」

忍者かよ。気づかないわそんなの。

亜衣ちゃんはえへへと笑っている。可愛い。けどえへへじゃないよ亜衣ちゃん!私の羞恥心はMAXだよ!

「もう…今度からは盗み見禁止!居るならちゃんと出てきてくださーい」
「う……、わかった」

少し眉を下げて“ごめんね?”と言われると許してしまうのは何故だ。まあ、亜衣ちゃんは私が本当に嫌なことはしないだろうからいいんだけど。

「でもいい雰囲気のときに出てくるのは、なんていうか…お邪魔じゃない?」
「……いい雰囲気になんかならないから杞憂だよ」

私と山本がいい雰囲気になるってどんなときだ。あ、昨日は正にそのいい雰囲気だったのか…?でもあんなのがホイホイ起こるようなタイプでもない、気がする。だからやっぱりそんな心配は無用なのだ。

「でも、山本くんと葵ちゃんが上手く行ってよかったぁ」
「……?それってどういう…」

予令の鐘の音が鳴り響き、私の言葉はかき消された。ひとまず話は中断して教室に戻らないと。そうして亜衣ちゃんと二人で教室へ走った。


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お昼休み。私、桐野亜衣は、最近の日課であることを果たすため屋上に来ていた。青空を見上げながら目的の人物を待っていると、その人は来た。

「やったね山本くん…!」
「え?…あれ?もう知ってんのか?」

少し驚いたような反応をしながらこちらにくる山本くん。実は私が昨日偵察していたことを伝えると顔が赤くなった。“まいったなー”と言いつつもその行為を咎めようとはしないのは彼の優しさか、はたまた相談に乗ってもらっていたという恩からなのか。

そう、私は山本くんから恋愛相談を受けていた。確か2週間くらい前から。

『亜衣、オレ好きなやつがいてさ…相談乗ってくんね?』
『えっ!好きな人!?だ、誰?』
『オレの左隣の席の…』
『左隣…って、もしかして葵ちゃん?』

あのときは驚いた。でも確かに二人は仲が良さそうだったし、一度葵ちゃんに山本くんのことが好きなのか訊いてみたことがある。そのときは友達だと答えていたけれど、少なからず好意は持っていたようだった。だから、彼の恋を応援しようと思ったのだ。

それからはちょくちょく屋上で山本くんの話を聞いて、私なりにアドバイスをしてみた。行きづらかった屋上にこんなにすんなり行けるようになったのは綱吉くんたちの影響だなあ、なんて思いながら。

私のアドバイスというのは、
一つ、積極的に話しかけるべし。
葵ちゃんは話を聞くのが上手だし、どんな話でもちゃんと聞いてくれる。楽しくお話しすればどんどん仲良くなれるだろう。
二つ、勉強を教えてもらって距離を縮めるべし。
勉強が得意な葵ちゃんなら教えるのも慣れてるだろうし、コミュニケーションをとるのに最適だと思う。但し訊き過ぎはダメ。葵ちゃんの勉強が進まなくなっちゃうからね。
三つ、挨拶はかかさないこと。
山本くんは元々挨拶していたみたいだけど、これはとっても大切。毎日の積み重ねで印象バッチリ。
とまあ、大体こんな感じ。
実際に山本くんはやってみて上手くいったんだから、なかなか良いアドバイスだったと思う。


「おめでとう山本くん」
「あぁ、サンキュな!」

山本くんは本当に嬉しそうだ。そりゃあ、好きな人と結ばれればこうなるか。いつか私も好きな人ができて、両想いになれるといいなあ…。…あれ?なんで今綱吉くんの顔が浮かんだんだろう。うーん…?

「ほんとに助かった。亜衣にも悩みができたらいつでも相談乗るからな!」
「へ!?あ、ありがとう…」

考え事をしていて素っ頓狂な声を出してしまった。恥ずかしい。

「今日は一緒に帰ったりするの?」
「いや、部活があるから別だな」

そう言う山本くんの顔は少し残念そう。山本くんは部活も好きだから仕方がないね。でも、じゃあ今日は私が葵ちゃんと一緒に帰っちゃおうかな、なんて。


教室に戻ると葵ちゃんは本を読んでいた。そしてその隣の席に行って座る山本くん。“おかえり”と声をかける葵ちゃんの表情は優しい。対する山本くんも爽やかな笑顔で返す。私は、この二人なら素敵な恋人同士になれるだろうなと思った。

これからの二人をを近くで見られるのは、お友達の特権だね。

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