※黒曜編は終わってますが時間軸がでたらめです。あり得ないことが起こっていますので予めご了承ください。




とある日の放課後。部活のない私はみんなよりも早く家に帰る。でも今日は買い出しのためにいつものように商店街に来ていた。
平日のこの時間じゃ質の良いものは売れてしまっているけど、今週の土日は雨の予報らしいので今日買いに来たのだ。さて、まずは野菜だけど…。

「ん?…あれって、もしかして…」

商店街の本屋さんの前で見慣れたシルエットが見えた。同じ並中の制服ではないが、あの学ランと腕の風紀の腕章は見覚えがあるどころではなかった。

「…雲雀さん?」

思わず声に出してしまったことに後悔した。あれ…っ、口に出すつもりはなかったのに!だが運が悪いのか私の声は彼に届いていたらしく、こちらをゆっくりと振り返った。

「…あぁ、君はボンゴレの…また会いましたね」

…今のは幻聴だろうか。あれ、おかしいな…この人雲雀さんだよね?雲雀さんて、敬語だったっけ?

「あ、ええっと…お買い物ですか?」
「いえ、特に用があるわけではありませんよ。歩いていたらここに着いただけなので」

…や、やっぱりなんかおかしい?あれ?雲雀さんてこんなににこやかに笑うっけ!?

「あ、あの…?」
「なんでしょう?」

頭に浮かんだいくつもの疑問をぶつけてみようと口を開きかけた時、誰かが勢いよく走ってくる音がした。そしてその音は私の後ろで止まる。
誰だろうと思って振り返ると、こちらもまた見覚えのある…でもとても珍しい顔がそこにあった。

「む、骸さん…!?」

あの特徴的な髪型とオッドアイは間違いなく骸さんだ。でも、何かが違うような…。そもそも骸さんてこんなに凄い形相とかする人だったっけ!?

「…やっと見つけたよ」
「おや、遅かったですね。僕にはこの本屋に寄る時間ができたくらいですよ」
「余裕ぶってるのも今のうちだよ。すぐに咬み殺すから」

咬み…え?骸さんが雲雀さんみたいなことを言い始めた…!え、ちょっと待ってどういう…いや、その前にこんなところでこの2人が戦ったら他の一般の人たちが!

「す、ストップ…!」
「何、桐野亜衣」
「いや戦うのは結構ですけど、ここでやるのはまずいのでは…!」
「僕はどこでも構いませんが…そうですね、先ほど少し広めの河辺がありましたのでそちらに行きましょうか」
「僕に命令しないでくれる?」

ああ!いったそばからすでに攻撃してる…!なんとか河辺のほうに向かってはいるけど。
あれ?それにしても、骸さんがトンファー使ってる…!?雲雀さんも骸さんが使ってた武器を持ってるし。え?いやいやまさか…そんなことはあり得ないけど、もしかして…?



私が河辺に着いたころにはすでに戦いは終わっていた。骸さんは地面に片膝をついており、雲雀さんはかろうじて立ってはいるが今にも崩れ落ちそうだった。
戦闘が終わってるなら、質問しても大丈夫…かな?私は一定の距離を保ちつつ雲雀さんのほうに近付く。攻撃されたらおしまいだから近づきすぎないようにしなきゃ。

「あの、」
「…なんでしょう?」
「えーっと、変な質問するかもしれませんが、あなたは…骸さんですか?」

私の質問に雲雀さんは息を整えながらフッと口元を緩める。もちろん少し先で膝をついている骸さんを凝視しながら。

「ええ、そうです。何故かはわかりませんが、朝起きたらこんな姿になっていたんですよ」

雲雀さん(骸さん)の話によると、自分の姿が変わっていたことに気付いた後、入れ替わっている相手を探しに出たところで骸さんの姿をした雲雀さんを見つけたらしい。
すると骸さん(雲雀さん)のほうが嫌悪感マックスで自分に向かってきたのでずっと街中で戦ったり逃げたりを繰り返していたそうだ。
(これは余談ではあるが、お互い使い慣れない武器では意味がないので武器だけは素直に交換したらしい)

「全く…屈辱以外のなにものでもありませんよ」
「え、でも前に雲雀さんに憑依してましたよね…?」
「それとこれとは話が別です。そもそも今回は僕の意思ではありません。自分が相手を乗っ取るならまだしも、不可抗力でこんなことになっているんですからね」

な、なるほど…。そうだよね、普通はこんなこと起きない。憑依してこの状況になってるならまだしも、雲雀さんまで骸さんの体に憑依しているのはおかしい。

「さて、どうしましょうか…」
「…あのぅ、すごくどうでもいいことかもしれないんですけど…」
「なんですか?」
「雲雀さんの姿で敬語で話すのが、すごく違和感しか感じないです」
「…僕にどうしろと?」

うわああ、だからその顔!そのいやーな笑顔もやめていただきたいんですがね!?雲雀さんはそんな風に笑ったりしません!そもそも雲雀さんの笑顔すらみたことないのに!

「……、ごちゃごちゃ、うるさいよ」

片膝をついていた骸さん(雲雀さん)がフラフラと立ち上がった。

「屈辱なのは僕の方だよ。二度と見たくもない顔が自分のそれになるなんてね」
「酷い言い様ですね、僕だって同じ被害者なのに」

ああまた戦闘態勢に入ってる!二人を見ている限り、殺気立っているのはどちらかといえば骸さんの姿をした雲雀さんのほうだ。
雲雀さん(骸さん)のほうは一応ピリピリしてはいるが中身が骸さんだから骸さん(雲雀さん)よりも落ち着いている。んん、ややこしくなってきた!

「君のせいでしょ、こんなことになってるのは」
「何故僕のせいだと?わざわざ嫌いな相手と入れ替わる真似なんかしてどうするんです」
「しらばっくれても無駄だよ。力尽くでも聞き出して元に戻してもらう」

ああもう!骸さん(雲雀さん)のほうがやる気満々じゃん!
どうしたらいいのこれー!


もしも因縁の相手と入れ替わったら

「…っていう夢を見たんです」
「…ふーん。とりあえず、君にこのコーヒーをかける準備はできているけど、僕にどうされたい?」
「ごゆっっっくりどうぞ!では失礼しますッ!!」

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