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学校から課題が出た。課題内容は"小学校のときの夢"を調べることだ。
綱吉くんと京子ちゃんと同じ班になり、今日は綱吉くんの家で一緒に調べることになっている。私は事前に昔の作文を持ってきていたから、京子ちゃんより一足先に綱吉くんの家に向かっていたのだけど。

「あれ、獄寺くん?」
「げ!おまえかよ」

げ、とは失礼な!と思いながらも前を歩いていた獄寺くんを見つけた私は小走りでその隣へ並ぶ。

「獄寺くんも綱吉くん家にいくの?」
「おまえには関係ねーだろ!」
「せっかくだから一緒にいかない?」
「、…ったく」

いつも不機嫌そうにしてる獄寺くん。でも最初に比べて少し丸くなったような気もする…本当に少しだけど。


綱吉くんの家に着き「お邪魔します」といって中に入り、いつもと同じく彼の部屋のドアを開けた。

「10代目、失礼しまーす!オレのダイナマイトも改造してもらいにきました!」
「お邪魔します、綱吉くん」
「獄寺くん!亜衣!」

いつもの綱吉くんの部屋…と思ったらとんでもないものが目に入る。部屋中が武器だらけで開いた口が塞がらない。どうしてこんなに大量の武器が?

「おや、あなたは?」

話しかけてきたのは妙な丸い機械に入っている人。自分の名前を名乗るとその人も自己紹介をしてくれた。名前はジャンニーニさんといって武器チューナーらしい。
名前を教えてくれたのは嬉しいけどこんなにたくさんの武器をどうするんだろう。そんなとき、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。あ、京子ちゃん来たかな?

「そうだ、京子ちゃん来るんだった!亜衣、急いで台所いこう!」
「え?」
「こんな部屋京子ちゃんに見せらんないし!」

そうだよね、マフィアだなんて知らないからこの部屋を見られたらまずい。綱吉くんは獄寺くんとランボくんに部屋にいるように言ってから私と一緒に一階へ降りた。


「昔の作文見つかった?」
「うん、小二のときのが」
「私は小三のときのがあった」
「わー!みたい!ツナくんのから見てってもいい?」
「えっ!見ても、面白くないよ!?」

慌て出す綱吉くんだけど、どんなのを書いたんだろうとちょっとわくわくしていると、京子ちゃんが作文を受け取り読み始めたので耳を傾ける。綱吉くんの将来の夢は巨大ロボだったんだ。

「あはは!可愛い!ねー、亜衣ちゃん」
「うん、パンチが効いてると思う」
「それ褒めてんの!?」

作文の内容で盛り上がっていると「いい作文っスねー!」と現れた獄寺くん。どうやらジャンニーニさんに武器を改造してもらったらしく、それをお披露目しにきたらしいのだが。
新しいダイナマイトからはパーティーグッズのように鳩やリボンが出てきた。リボーンくんの銃は威力がかなり落ちて弾がコロコロと転がってしまった。…改造どころか余計悪化している。
想像していた改造とは天地の差の出来に怒りをあらわにしたリボーンくんたちは、ジャンニーニさんをシメてくるといいだして綱吉くんの部屋に戻っていってしまった。…顔が本気だったけど大丈夫かな。

「そうだ!亜衣ちゃんはどんな作文書いてたの?」
「私?私は…、ケーキ屋さんになりたい、だね」
「わあ可愛い!ケーキ屋さんになったら毎日ケーキ食べられそうだね!」

さすがに毎日は飽きないかな…。前にも思ったけど京子ちゃん、本当にケーキが大好きなんだね。
そんな感じでほのぼの会話をしていると、二階からものすごい音が聞こえてきた。これは本気でシメている…。
物音がしなくなったところで二階から誰かが降りてきた。そのシルエットが小さかったのでリボーンくんかランボくんかなと思って見てたのだけど。

「可愛いー!ボク、ランボくんと遊んでたの?」
「んだとコラァ!」

京子ちゃんはとくに何も思ってないのか普通にその子と会話をしているけどあれはどう見ても獄寺くんだ。しかも何故か小さい。どういうこと?何があったの?
暴れ出す小さな獄寺くんを綱吉くんが抱えて抑える。あれ、もしかして獄寺くん自分が小さくなってることに気付いてない?

「綱吉くん、何があったの?獄寺くんなんでこんなにちっちゃく…」
「え!?亜衣、わかるの?これが獄寺くんだって」

私がコクリと頷くとキラキラした顔を向けてきた。え、何でそんな味方見つけた!みたいな顔するの…!
そんなとき、獄寺くんが窓の外を指差して怪しいやつがいると叫びだした。私も綱吉くんも外を見てみるが、電柱があるだけで妙なところはとくに見当たらない。
でも獄寺くんはとくに綱吉くんに意味もなく嘘をつく人ではない。見えない何かがいる…?

獄寺くんは綱吉くんの腕の中から抜け出してダイナマイトを持ちだした。あ、あー!京子ちゃんいるのに!ダイナマイトを見られないようにと私は慌てて獄寺くんを抱きかかえた。

「んなぁ!?な、なな、何しやがんだ!」

普通なら同い年の子に対してこんなことできないけど今は子供だもんね。獄寺くんの顔が若干赤くなってるように見えるけど気にしたら負け…!

「ここでダイナマイト使ったら綱吉くん家壊れちゃうよ…!それに京子ちゃんにもマフィアのことがバレちゃう」
「う、!…それは…!」

私の言葉に獄寺くんは戸惑いを見せる。あんなに綱吉くんを慕っているから自分のせいでわざわざ困らせることはしないだろう。これで大人しくなってくれるといいんだけど…。
するとピンポーンとまたしても呼び鈴が鳴った。こんなときに一体誰だと思ったけど、やって来たのは山本くんだった。今回の課題の偵察にきたみたいだけどなんてタイミング!
獄寺くんのことをむやみに広めるわけにはいかないし、本人は本人で今にも暴れそうだし。

「お?何だ獄寺、来てたのか!」

私の腕の中にいる獄寺くんを見て何の疑問もなく山本くんはそう言った。その言葉に京子ちゃんが不思議そうに首を傾げる。うわあ…っ、まずい!

「ち、ちがうよ!獄寺くんのいとこだよ、ちっさいでしょ?」
「ははは!よくみりゃそうだな!なんか獄寺な気がしたんだよなー」

綱吉くんの咄嗟の説明のおかげで山本くんは納得したみたいだ。危ない…、もういつバレてしまわないかとひやひやする。

「こんの、野球バカー!」
「あっ、だめ…!」

再び暴れ出す獄寺くんに私はもう少し強めにぎゅっとした。抜け出したらすぐに暴れまわってしまう。面倒なことにならないためにも離すわけにはいかないんです。
だからお願い、ぎゅってした瞬間に赤くなって黙るのやめて…!私だって恥ずかしいんだから。意識しないようにしてるのに…!

じたばたしていた獄寺くんはふと天井を見上げて今度は焦りだした。またさっきと同じく何かがいるという。
今度は天井…?私には何も見えない。またしてもダイナマイトを持ち出した獄寺くん。ま、待って!抱えたままの状態でダイナマイト持たないで!

「こら、獄寺みてーになっちまうぞ」

山本くんがダイナマイトをひょいっと取り上げる。それに抵抗して私の腕の中で暴れて山本くんに攻撃しようとしているけど、もちろん今の体型じゃ届くわけがない。

「ちっこい足を向けんな」
「はぁ?何言って…な、ええ!?ちぢんでる!?」

やっと気付いてくれた。縮んだショックで真っ青になっている獄寺くんだけど、綱吉くんの後ろをみて「やばい!」と叫びだすと、その場所目掛けてダイナマイトを投げる。

「ヒィィ早まらないでー!」

あっ、爆発する…!誰もがそう思った瞬間、聞こえたのはパァーン!という軽い音。そしてリボンやら鳩がたくさんでてきた。あ、そういえば改造されてたんだっけ。

「くっそ!おい、さっさと離しやがれ!まだやつらがそこにいるんだよ!」
「え?や、やつら?」

獄寺くんはさっきから何をいってるの?獄寺くんにしか見えないものがいるの?

「おい山本!オレにキャッチボールおしえやがれ!」
「お!そういうことなら遊んでやる!」
「よし!おい亜衣!そういうことだから早く離せ!」
「え?は、はい」

…今、名前呼んだ?それにキャッチボールって、なんでこんなときに?

「さーこい山本!ここだ!」
「オーライ!」

家の中だというのに山本くんは本気の表情を見せながら思いっきりボールを投げる。すると獄寺くんにボールが行く手前、綱吉くんの後ろの何もないところでベキッ!とすごい音がしてボールが何かにぶち当たった。床に何かが落ちる音がして、だんだんはっきりと見えてくるソレは何やら全身タイツみたいなものを着た人物。
そして「もういっちょ!」と獄寺くんに向かって投げられたボールはやっぱり何もないところでぶち当たり、床にソレは落ちた。

「この人たちどなたー!?」
「しまった!ダメージで光学迷彩が!」

な、何なのこの人たち。すごい怪しげな格好をしているけど不法侵入者?

「えれーぞ獄寺、見直したぞ」

台所にきたのはリボーンくん。リボーンくんの話によると、この人たちのボスであるアルコバレーノのヴェルデという人の仕業らしい。
部下に裏切られないために、ある年齢以下の人には見えるようにしていたらしい。そっか、だから小さくなった獄寺くんには見えたのね。そしてこの人たちは暗殺者。あんまりそうは見えないけど。
そして最終手段にでたのか、銃を持ち出し直接綱吉くんに狙いを定める。だ、ダメ…!こんな格好をしていてもこの人たちは暗殺者、殺しのプロなんだ…!
どうしようと焦っていると突然改造された死ぬ気弾が綱吉くんに発射された。

「復活!死ぬ気で敵を倒す!」

死ぬ気になった綱吉くんは強かった。思考が追いつく前にあっという間に敵を退治して、気付いたころには無事に解決していた。



その後、京子ちゃんと山本くんが帰ったあとも獄寺くんは中々元には戻らなかった。

「だー!いつになったらもどるんだよ!」

短い手足を一生懸命じたばたさせる。そんなことをしてももとには戻らないけど、そんな小さい獄寺くんがすごく可愛くみえる。

「今の獄寺くん可愛いね」
「ば、っ!ふ、ふざけんな!嬉しくねーんだよ!」
「あ、ほっぺぷにぷにしてる…!」
「さわんなバカー!」

獄寺くんのほっぺをいじって遊んでいると、綱吉くんが獄寺くんを後ろから抱きかかえた。

「あ、私の癒し…!」
「誰がてめぇの癒しだコラー!」
「てめぇじゃなくて、亜衣です。さっき呼んでくれたよね。ちょっと嬉しかった」
「!…お、おお覚えてねーよバーカ!」

そういってどもりながらそっぽを向いてしまった。意外と照れ屋さんなのかな?ふと綱吉くんに視線を向けると、下を向いてなんとも言えない微妙な顔をしていた。

「綱吉くんどうしたの?そんな顔して」
「え!?えっと、…あ!獄寺くん、いつもどるのかなって」
「そうだね、ずっとこのままも良くないし…明日になったら戻るかな?」
「うーん、どうなんだろう?」

結局、元の姿に戻れたのは次の日だった。


11.小さなヒーロー

「(不本意とはいえ亜衣に抱きかかえられるって、ちょっと羨まし…って、何考えてんだよオレ!)」
「ツナ、心の声がダダ漏れだぞ」
「んな…!?」

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