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無自覚少女は桃色少女の救世主



(桃井side)

「っ、イヤ!!離して!!」

なんで。どうしてこんな事になったの?
なんて、頭の中で考えてもこの現状を変えることは出来なかった。
授業が終わって、千遥ちゃんがトイレに行くと言ったから私は外で待っていた。待たなくてもいいはずだけど、千遥ちゃんはそんな事言わないで、許してくれた。最近は、いじめられていなくて安心していた。だから一緒にいなくても、待ってても大丈夫だと思っていた。
はず、なのに。

「あ、み〜つけたぁ」
「っ!?ぁ、あぁ…」
「あらあら、こんな所で何してるのかなぁ?」
「…っ…!」
「一人で居るって事は、あの邪魔くさい女は居ないって事かしら?」
「ッ!!」
「さぁ、さつきちゃん?」


嫌いな声。猫を撫でるような声は聞き覚えがあった。
女の人達の背後には、数人の男たちがニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべていて。

「着いて来て、くれるわよね?」

目が合った瞬間、ゾッと背筋が凍ったのが分かった。
半ば強制的に連れていかれた先は、今までとは違って人気のない校舎裏。日が当たらないその場所は、噂じゃあ不良がよく屯ってて、先生でも近寄らない。
嫌な予感が、的中した。

「ッ…!!」
「なによ、その目は」

嫌だ、嫌だ!
何でこんな目に合わなくちゃならないの?!私、何も悪い事してないじゃん!ただこの髪と容姿だけで、勝手に妬まれてるだけで私は何もしてないのに…!!
私はただ、バスケが好きなだけなのに…!

「や、やだ…!!お願い、離して!」
「逃げることは出来ないわよ。離すわけないじゃない」
「怖がることなんて無いわよ」
「そうよ。それに、邪魔な女も居ない絶好のチャンスを、みすみす逃すわけ無いしね」
「っ!!」

そうだった。今此処に、千遥ちゃんは居ない。
トイレに行っている間に連れられて行かれたから、千遥ちゃんは私がこの人たちと一緒にいる事なんて知らないんだ。しかも此処は普段使われないし、人が来ることはまずあり得ない。いつもは屋上ばかりで、千遥ちゃんは真っ先にそっちへ向かってくれてた。
だから、千遥ちゃんが此処に来る確率は低い。

「っ…ゃ、ぃや…!!」

そこまで考えたら、嫌な予感しか考えられない。

「フフ…、良いわねその怯えきった表情は」
「もっと絶望させてあげるから、安心しなさいよ」
「ほら、さっさとヤりなさいよ」
「アンタ達の好きなようにしていいわよ」
「やっぱり女ってコエー」
「けど、ありがたくさせてもらうわ」
「俺達が満足するまでな」

やっぱり、そうなんだ。
この人たち、私に無理やりさせて学校に来られないようにするんだ。つまり、私は今からあの男の人たちに無理矢理…、

「ッ!!いや、いや!!やだやだやだやだッ!!」
「オイオイ動くんじゃねぇよ!」
「安心しろって。すぐに気持ちよくさせてやっからよ!」

ドサリ、と押し倒されて、腕を掴まれ頭の上に置かれて身動きをとれなくさせられた。空は酷く青く澄んでいて綺麗なのに、恐怖でしかない。
此処まで来たら私の中には絶望しかなかった。

「んじゃ…楽しく遊ぼうや」

そう言って、下品な笑いを浮かべてそっと制服に手を掛けられた。それだけでも、鳥肌が立った。気持ち悪い。触らないで。やめて。

「たすけ、て…」

助けて…。ねぇ、誰でもいいから、助けて…!
大ちゃん…!テツくん…!先輩…!

「へへ…、大人しくしろよ…」
「いや、や…」

助けて…、お願い…。
じわり、と恐怖で涙が浮かんできた。足も動けなくさせられて、内腿を触る感触が気持ち悪くて、吐きそうになった。
助けて。助けて。

「助け、て…。…っ、千遥ちゃ…」

目を閉じて、掠れた声で思わず彼女の名前を呼んだ。
刹那。

ドガァンッ!!

「グハッ!!」
『!?』

鈍い音と、何度かリバウンドした音。
そして今まで感じていた重みが消えた感覚と、痛みで上げた男の声。

「…お前らさァ…」

そしていつも気怠そうな声が耳に届いた。
固く閉じていた目を開けると、私を庇うようにして立っているのは、声に出た名前の主。
あの日と同じ勇ましい姿と重なった。

「…本当に、懲りねぇな……」

私の救世主の千遥ちゃんの姿がそこにいた。

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