成り代わり | ナノ
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無自覚少女が遭遇した最悪な事態



「千遥ちゃーん!」
「…また来たよ」

あの日、屋上で会った女の子に私は懐かれた。クラスは違うけれど、ことある事に私に声をかけるようになった。しかも面倒なことに私の行動範囲を知られてる。
助けられただけでこんなにも懐くものなのか…?

「今度は何だよ、桃井サン」
「もう!私の事はさつきでいいのに!」
「ハイハイ。次からそう呼びますよ」

彼女――桃井さつきは私をとても慕う。それこそ盲目するかのように。
確かに、私は彼女を助けたがそこまで慕われる理由にはならないしあまり私には関わらないで欲しい。
白状?知るか。

「千遥ちゃん、次は合同体育で一緒だよね?更衣室に行こう!」
「あー…次は体育だったなぁ。よし、行くか」
「って、ちょっと!?体育館はそっちじゃないよ!!」
「あっれー?おっかしいなー」

私、場所は覚えてるんだけどな…。
そのまま桃井サンに引っ張られるがまま私は彼女と一緒に体育館へと向かった。

「…チッ、アイツ…ホンットに邪魔ね…」

胸糞悪い声を聴きながら。



「…あれ?」

その授業後。
体育が終わってから私は用を足しにトイレへ行ったんだが、その間に桃井サンの姿は無くなっていた。辺りには誰も居らず、私一人しか居なかった。
先に行ったのか?いや、それは無いだろう。トイレに行く前に「此処で待ってる!」と言ってたのだから。連れションかぁ、とか思いつつもさっさと用を足して戻ってきたけどいない。
先に戻る用事ができた?着替えは済んでるし、それはありえるかもしれない。
だが、荷物をここに放っておくような娘じゃない。
荷物があるってことは用事はあっても放置なんてあの娘がするわけない。呼び出し、なら分かる。だが先生からの呼び出しなら荷物があるから可能性はゼロ。
最近うざったい視線と殺気を思い出す。

「………」

となると、またアイツ等に呼び出されたのか?

「…はぁ、本当に面倒だな…」

大きくため息を零して、私はとりあえずよく桃井サンが呼び出されていた屋上へ向かって歩き始めた。
…はずなんだが、

「…あれ?此処何処だ?」

全くもって屋上じゃない場所に来てしまった。校舎の位置を考えると、どうやら裏庭らへんに位置する場所だろう。人気のない溜まり場にはいい場所。そんなところに私は居て、行きたかったはずの屋上に行けずにいた。
私って本当に無自覚な方向音痴だよなァ…。
さてどうするか、また元の道を戻ろうと思いクルリと方向転換した瞬間だった。

「―!!――ッ!!」
「…ん?」

微かだが、誰か声がした。何か嫌がるような、怖がっている声。その声が聞こえた方に気配を消してゆっくり近寄れば、複数の人の声も聞こえた。

「ホラ、さっさとしなさいよ!」
「!」

その中に、前に会った女の声も聞こえた。
確か、屋上で桃井サンを苛めていた女。

「(つか、何をさっさとさせようとしてんだ…?)」

妙に嫌な予感がしつつ、私は静かに聞き耳を立てた。
ドクン、ドクンとやけに心臓がうるさい。

「へへっ、前から狙ってたんだよなァ…」
「うはー!超綺麗じゃねーかよ」
「んー!!ん゛ー!!」

男たちの声に紛れて聞こえた拒絶する女の子の声。
それは私にとって聞きなれた声だった。

「(まさか…)ッ!!」

嫌な予感が的中しないで欲しい事を願って女達の様子を覗き見した。
そしてその光景に目を丸くした。

「いい様ね、さつきちゃん?」
「っ!」

そこでは最悪の事態が今起きそうな状態だった。

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