成り代わり | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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不運少女と毒虫少女と決断力少女



※ VS秀徳戦終了後

黒子くんの元チームメイトであり、キセキの世代(とかなんとか)の一人、緑間くんのいる秀徳に勝った私達、誠凛。試合終了後、とりあえず雨を凌ぐためにと近くのお好み焼き屋に寄る事になった。
道中、火神くんと一緒に水溜りの中に落ちたという不運を発揮して。

「…三反田さん、大丈夫ですか?」
「私は慣れてるから、大丈夫。それよりも、火神くんの心配を…」
「黒子テメェ…覚えとけよ…」
「すみません。重かったので…」

事の発端は、動けない火神くんを誰が背負うかというじゃんけんからだった。それに負けたのは黒子くんで、どう考えても無理なのは分かっているはず。けれど、縦社会らしくか、先輩達に言われて火神くんを背負うのは黒子くんになった。
案の定、水溜りに落ちてびしょぬれになってしまったけど。そして、私はそれに巻き込まれた。
流石不運委員会所属なだけあるよね……ははっ。
黒子くんと火神くんに苦笑いをしつつ、店内に入る。

「…あれ?」
「え……」

しかし、その店にいた彼女にあたしは目を丸くした。
綺麗な容姿で、誰もが二度見はする美しさ。
そう、私の親友である、伊賀崎孫美がいたのだった。しかもまさかの黄瀬くんと、黄瀬くんの先輩である笠松さんも一緒にだ。
孫美も私が居ることに驚いているのか、つまらなそうな表情を一変、目を見開いていた。

「…千遥!?」
「え、孫美!?」
「…は?知り合いなのか?」
「三反田さん…?」

突然声を上げてしまった私と孫美に、周りが何か言っているけど私達はそんなのに構ってられなかった。
だって久しぶりの再会なのだから。
誰もが現状について行けないのを放置して、私と孫美は抱擁した。前に出会ったけど、それ以来会ってない。連絡交換はしたけど、メールや電話ばかりだったからちょっと寂しかったりもした。
それよりも、どうして彼女が此処に居るのか不思議でならなかった。

「ねぇ孫美、もしかして黄瀬君たちと一緒に来てたの?」
「……、バカ言うな千遥。なんでこんなウザい奴と一緒に…。…たまたま、たまたま会場で会っただけだ」
「たまたまって二回も言ったな、アイツ」
「伊賀崎っち酷いッス!!」
「黙れ」
「…」

黄瀬くんに対する態度が辛辣なのはまぁ孫美らしいけど、少しだけ違和感があった。なんというか、気を許しつつあるような、そんな雰囲気が孫美から出ていた。

「っ…」

なんだか私的には面白くなく感じて、思わず孫美の手を握って言った。

「…孫美が朝から居るのは分かってたけど、でも、どうして会場に来たの?」
「…千遥が不運を発揮していないか心配…なのは三割。あとは気分で来ただけだよ」
「……なんだか…嘘っぽいんだけど…」

絶対に七割の方に不運を発揮してるかどうか心配してたから来たんだ。ジト目で見れば孫美は流すように私に言ってきた。

「試合お疲れ様。千遥も食べにきたんだろ?一緒に食べよう」
「うん。あ、けど席が…」
「あぁ。私と千遥はあっちで食べよう。そしたらそこの二人が…って、」
「?」
「どうかしたの、孫美」

未だに茫然と立っている黒子くんと火神くんを見て孫美は目を丸くしたかと思えば、突然怒りを露わにした。
え、ちょっと、どうかしたの…?!

「…そこの影薄い奴、お前千遥に怪我させた奴だな」
「!」
「そこの変な眉毛の奴も、千遥に怪我させただろ!」
「孫美!」
「しかもなんで千遥はそんなにドロドロなんだ。…おおかた、ぶつかって水溜りにでも転んだんだろうけど」
「お、おっしゃる通り…」

相変わらず冷静に物事を見る目だなぁ、なんて思いそして何も言えずただ私は苦笑いで言った。孫美は黒子くんたちを見て「存在が迷子で不運な千遥にそんなことさせて…、お前らふざけるなよ!」と怒る孫美。
存在が迷子で不運な私って…それ本当に心配してるのかな、なんて言いたかったけど、孫美が私を心配しているのはわかったから何も言わなかった。
と、その時だった。

「おっちゃーん、三人空いて…、」
「…あ、」
「!」
「…」
「…ぇ、」

店に入ってきたのは、またもや見慣れた人達。今日対戦した秀徳の一年生二人。でも、もう一人彼らに隠れるようにして立っていた子に、私と孫美は目を丸くした。
だって、偶然に近いものだったから。

「…うそ、」
「なん、で…」

緑色の髪をあの頃のように高い位置で結って、前髪がパッツン。元気そうで、あの頃と変わらない笑顔を浮かべていた彼女。
けれど、私たちを見る表情は驚きと戸惑いでいっぱいだった。
嗚呼、夢なのだろうか。

「…ッ千遥!!孫美!!」
「「……左希!!」」

私と孫美の親友の一人であった神崎左希の姿がそこにあった。

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