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無自覚少女の日常



「あれ?みんな、何処に行ったんだ…?迷子か?」

夢の中では、いつも私は一人。

「千遥ちゃーん!!何処に行ったのよ!!」
「此処だけど?」
「キャア!!」

ある日の放課後。
いつものように木の上で昼寝をしていると、とある事で仲良くなった桃井さつきが私を呼んでいた。
全く、人がのんびり昼寝をしていたっていうのに…。
小さく溜め息を溢して、ひょっこりと逆さ状態で現れたら案の定叫ばれた。甲高い声が耳に劈く。

「…傷つくんだけど、それ」
「だって!いきなり逆さで出てくる普通!?」
「あー…、悪かったって」

華麗に一回転して降りると、さつきはため息を溢した。ごめん、それ私がつきたいんだけど。
でもこれじゃあ話が進まないから、何の用かとさつきに聞く。

「私に用か?」
「ハッ、そうだった!お願い千遥ちゃん、大ちゃんをまた探して!!」
「…また?」

さつきの言葉に私はもう帰りたくなった。だって、さつきの探している相手、私嫌いなんだけど。
大ちゃんこと、青峰大輝…だったか?ソイツは初対面だというのに私の胸を触りがやった最低な変態野郎。もちろんソイツに容赦なく蹴りを入れました。

「千遥ってば、すぐ足が出るの、やめなよ」

知らないはずの声が蘇る。

「だって!明日試合なのに大ちゃん練習に来ないんだもん!!」

さつきは悲しそうに目を伏せる。そうはいっても、私にとって、あのガングロ野郎は赤の他人なんだけど。

「…めんどい。だいたい、なんで私なんだよ…」
「だって!…千遥ちゃんにしか頼める人、いないんだもん…」
「……」

それってさ、私が都合のいい奴ってこと?いや、あの超天然なさつきにとってありえないけど…。女ってやっぱり怖いからなァ。
けど、さつきが困ってるんなら手伝うか…。
小さくため息を零して、私は頭を掻きながら言った。

「…分かったよ。それで、いつまでに?」
「すぐ!」
「はぁ?…ったく、ちょっと待っとけよ」

無茶振りだが、もう慣れた。溜め息を溢して、私はあの青髪マックロクロスケの気配を探る。気配を探るっていっても、なんか私の野生の勘が勝手に働くんだよ。そう思いながら何処にいるのだろうかと思っていると、お、どうやらあそこに居るみたいだ。

「さつき、中庭のベンチだ。行くぞ」
「え、あ、ちょっと!!待って千遥ちゃん!!って、中庭はこっちィ!!!」
「あれ?おっかしーなー…」

さつきに引っ張られながら、私は中庭へと目指した。

「もう、ホント千遥ちゃんと言ってる方向と真逆の方に行こうとするよね…」
「私も何故か分からん。というか、これは直らないと思って諦めている」
「諦めないで!」

そう言って力説するさつき。
治るなんて思ってないのは、なんでだろうか。

「あ!――――の無自覚の方向音痴の、次屋千遥先輩!」

誰が無自覚だ。
でも、それよりも思うことはある。

「…それに、どうせちゃんと見つけてくれるからな」
「?誰に?」
「……、…誰にだ?」
「そんな事、私に聞かれても…」

互いに不思議に思っていると、ガングロタマゴが視界に入った。さつきはすぐさまガングロタマゴのもとへ向かうが、私はさっきの自分の言葉にただ不思議に思っていた。

「あーッ!!やっと見つけたぞ、千遥!!!」

「“誰が”私を見つけてくれるんだっけ…?」

微かに脳裏に浮かんだ、誰かの背中。
顔や姿が、全然思い出せなかった。

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