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不運少女と模倣少年



ある日の休日、誠凛バスケ部は神奈川にある海常高校へ向かっていた。今日は海常バスケ部との練習試合で、私はマネージャーとして彼らに同行した。
海常高校は、誠凛の新設校とはまた違い、貫禄というか、運動部に力を注いでいるだけあって施設が整っていた。黒子君達と一緒に感嘆の声を上げていると、前方からやってくる海常高の生徒が。

「黒子っち〜!」

どうやらあれが噂の黄瀬君だそうだ。元同じ中学出身でありクラブメイトもあって、かなり黒子君と親し気だった。黒子君はあまり表情を変えていないけど。
ただ仲良しアピールをするかと思っていたら、彼はちゃんと挨拶をしていた。私たちを敵と見ていて、かつ、舐めていたけど。

「それじゃあ、今から案内するッス!って、…ん?(なんか、俺の隣に誰かいる…?)」
「あ、そうでした。黄瀬君」
「どうしたんスか?黒子っち」
「黄瀬君の隣に居ます彼女も、今回同行する事になりました」
「三反田千遥です、よろしくね」
「…へ?って、は!?ちょ、おわっ!!?」

…見事なリアクションをありがとうございます。
うん、大丈夫。慣れているから別にいいです。しょうがないもん、存在までもが迷子になってるって言われてるくらいなんだから。
私の存在が気付いていなかった黄瀬君は驚いたあと、まじまじと私を見てきた。そこまでじろじろ見られても、居心地悪いだけなんだけどな。

「く、黒子っちに負けないくらい存在が薄いッスね…」
「よく言われます」
「…あ、オレ、黒子っちの親友の黄瀬涼太ッス!よろしくっす!」
「……うん、よろしくね」

上辺だけの表情を作るのが、彼は上手いようだ。作り笑顔をよくするみたいで、目の周りの筋肉が使われてないのがよく分かった。慣れているんだろう。まぁ、その容姿だと、女子にさぞ人気なのだろう。だから、きっと私もその一人という扱いを決めつけた彼。
けど、おあいにく様。私は別に興味はないから、そっくりそのまま作り笑顔で答えた。
すると、何故か黄瀬君は目を丸くして驚いていた。
あれ?私変なこと言ったっけ?少し私もつられて戸惑えば、黄瀬君はゆっくりと開口して言った。

「…俺の名前、聞いたことないんスか?」
「え?君、そんなに有名なの?」
「黄瀬君は雑誌のモデルをしているんです」
「あ、へー、そうなんだ。すごいね、モデル業と部活を同時に頑張ってるなんて」
「いやいや、そんな事ないっすよー…って、そーじゃなくて!!」
「へ?」

慌てる黄瀬君に何がいけなかったのかわからず首をかしげる。黒子君の説明もあって、学生でありながら芸能活動と部活を頑張っているんだから、尊敬の気持ちは生まれた。だから素直に言ったんだけど、彼は何か違うことに対して気になっていた。
どういう事、と眉をしかめると、黄瀬君は身振り手振りで教えてくれた。

「お、俺の事、なんとも思わないんスか?!」
「うん、だって興味ないから」
「ストレート!!」

いやいや、事実。
失礼かもしれないけど、実際興味なんてないからさ仕方がないじゃない。
バッサリ言われた事にショックを受けていたはずの黄瀬君だけど、何故か私を見て笑みを浮かべていた。
…ううん、私と誰かを重ねていた。

「…何か、俺の隣の席の子に似てるッスね」
「……珍しいですね。黄瀬君に興味を持たない人なんて、そうそういませんよ」

え、そんなに?
黒子君の言葉に思わず目を丸くした。黄瀬君は、大きく頷いて、嬉しそうに話した。

「その子面白いんスよ!俺の事、綺麗でもないって真正面から言ってきたんスよ!」
「…なんでそんな嬉しそうなんだよ」

つい火神君が訪ねたら、黄瀬君はその子のことを思い出しているかのように話し始めた。

「だって、俺に興味がないっていう子が珍しくて…。それって、“モデルの黄瀬涼太”として見ていないって事に思えて…なんか、嬉しいんスよ」

そう言った黄瀬君に照れていたのか頬に赤みが指していた。
そんな話をしていると、いつの間にか体育館について私達はロッカー室へ案内された。

「それじゃあ、私も別のところで応急処置の準備をするね、って、と、わぁ!!」
「どわぁ!?」
「三反田!?」
「ちょ、火神くん!?」

あ、あはは…。また、忍たまのお約束をしてしまった。
何も無いところで躓いた挙句、火神くんを巻き込んで不運を早速披露してしまった。痛みはなれてるからなんともないけど、私より火神君の方が危なかった。

「ご、ごめんね火神くん!!怪我はない!?」
「おま、…俺を殺す気か…」
「ギリギリでしたね。あのまま救急箱が火神君に直撃していたら今病院行きでしたよ」
「こえー事言うんじゃねーよ!」

もう何も言えなかった私でした。
本当に火神くんごめんね!!

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