成り代わり | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
毒虫少女の激昂



「伊賀崎…ち……?」
「……」

本当に面倒な事に巻き込まれたものだな。と、妙に冷静になっている自分。けど、多くの尊い命を簡単に殺めた奴等に怒りを忘れる事は無かった。

「……おい」
「っ」

靴箱の扉を強く叩き閉めたからか、周りの生徒が私を見ているが気にしない。黄瀬が驚いた表情で私の名前を呼んだが、生憎構う余裕など今の私には無かった。
顔を俯かせ私は女共に言った。私が大きな音をさせただけで怖気ずく女共など、怖くなどなかった。

「お前達の嫌がらせにはいい加減飽きた。わざわざゴミを持ってくるのも、学校の教材を傷つけたりする様子が滑稽だと思ったが、もうどうでもいい。面白くもなにもない」
「っハァ!?」

私の言葉に、主犯格の女が声を荒げた。

「影でこそこそするお前達の行動には目に余るものになった、と言っているんだ。此処は学び舎であって、貴様らのような愚かで品の無い者共が来る場所じゃないんだ」
「ッざけんな!!」
「一年のくせに、生意気言ってんじゃないわよ!!」
「なら私に対して何が気に入らないのか今この場でお教えいただけないでしょうか、先輩方?」
『ッ!!』

くるり、と声を荒げる女共に身体を向けた。たったそれだけの私の動きだけで、ビクリ、と身体を揺らす女共。朝から面倒臭い事に巻き込まれる自分に嫌気が刺すが、今回の事は私の堪忍袋の緒が切れた。
それくらい、こいつらは私の中で一番大嫌いな事をしたのだから。

「自分に見向きもされないで、私に話しかけるこの男の何処がいいのか分かりませんよ。先輩方の趣味、けっこう悪いですね」
「ッアンタ…、バカにするのも大概にしろよ!!」
「バカにしていませんよ。…けど、お勧めの眼科を紹介させましょうか?その腐った目を治してもらう病院があればいいのですがね」

クスクス、と蔑んであざ笑ってやった。この間のように真っ赤になった女子生徒達。ここで声を荒げるって事は、自分達が私をいじめたと言っているのも分かっていないようだ。
恥ずかしい思いをしているのを今更気付いたって遅い。

「別に、私に喧嘩を売ろうが関係ないんですよ。どこぞのわからない馬の骨に関わるなと言うのなら私は喜んで関わりませんよ」
「っだったら!!」
「だがな、」

一度、瞼を閉じた瞬間だった。
誰もが姿を見失った。刹那。

ガンッ

「っ…!!」
「あ、あぁ…!!」
「お前達のような下衆でクズの人間が、他人の命を弄ぶ事は赦さない」

その一瞬で近づき、主犯的存在の女の顔すれすれの壁を殴った。力を目一杯込めたその拳の威力は、壁にヒビを入れる程。
自分達に一瞬で近寄った私に、女共はみっともない声を上げて身体を震わせる。それもそうだ。私が女共に今まで受けたことのない殺気を送っているのだから。
目で、身体で、私の怒気や殺気に畏れ恐怖した女共。
今更恐れたところで、もう遅い。

「お前達が殺めたこの虫達にも生き物にも命が有る事等、お前達だって知っているだろう?」

小学校で習ったはずだ。

「“生き物は大切にしましょう”とな」

虫がいて、生き物がいて、私達は生きていける。虫達に恩恵をこうむられているというのに、人間が虫達をぞんざいに扱っていいのかと言われれば、答えは否だ。

「お前達の命等、他人の手や虫にかかれば簡単に殺せる事が出来るんだからな」
「っ…!?」
「今後私の怒りを買ってでもしてみろ」
「ヒッ…!!」

スゥ、と女の首筋を、頸動脈のある場所を沿って撫でた。
もしこの手にクナイがあれば、この喉を掻っ切っているだろう。そして、想像し感じるのは頬に飛び散る生温かい液体。
嗚呼、此処を斬ったらあの綺麗な赤い色を拝む事が出来る。

「私が直々に、虫を殺めた殺り方でお前達を殺めてあげるよ」

忍だった私にかかれば造作もない。
私の言葉に恐怖を身を以て感じた女共は逃げるようにして私に背を向けた。が、言い残していた事があった。

「ああ、そうだ。お前たちの言動は全て録音、録画、撮影させてもらった」
「は…!?」
「私がみすみすお前達の愚行を黙っているはずがないだろう?これは、世間一般でいう“いじめ”なのだろう?」

まぁ、実際は被害を受けた生徒が精神的、物理的苦痛を感じたらいじめになるけれど。今回ので、精神的苦痛に部類するものが出来た。
教師が駄目なら、教育委員会に報告してもいいんだぞ。
私の言葉に、女共はサッと顔を青ざめた。さらにもう一つ、しかたないから言っておこう。

「それと、忠告をしておいてやる」
「ッ!?」
「な、なによ!!」
「今後、外に出るのはやめたほうがいい」
「は…、」

意味を理解していない女共は口をだらしなく開けた。みっともない姿だ。私がブスというならば、お前たちは醜い豚とも言えるな。
まぁ、そんな事はどうでもいい。

「自然に住むもの達は、かなりお前達に対してご立腹な様子だからな」
「!?」

それ以来、私に対する嫌がらせは忽然と消えた。
そして、あの女共がどうなったかは知らない。

prev/next
[ back / bookmark ]