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不運少女と幻の6人目



(黒子side)

失礼かもしれませんが、彼女は僕よりもはるかに存在が薄い。
そして忘れられやすい。

「…三反田さん」
「ん?」

ある日の部活で倒れた僕を介抱してくれた三反田さんは、試合のみ同行をしてくれる事になった保健委員です。カントクが何度もマネージャーになってくれと頼んだのですが、三反田さんは全く折れなかったのですが、このような条件を呑んでくれました。
どうやら、カントクの目では三反田さんの身体能力が火神くんよりも数値が遥か上で、その秘密を知りたいがためにマネージャーになってもらいたかったそうです。ですが、三反田さんは笑顔できっぱりと断ったのです。その姿が『NOと言えない日本人』の概念を覆したように思えるほど、凛としていました。
見た目と違い、彼女は自分の意思をしっかり持っているみたいです。
そんなある日、放課後の保健室に足を運んだ僕は三反田さんに声をかけました。

「今度、他校と練習試合をする事になりました。その時、一緒に同行して貰えないでしょうか?」
「分かった。試合の時は同行するっていう約束だからね、気にしなくていいよ」
「…優しいですね、三反田さんは」
「えー?そんな事ないよ」

おしとやかで、自分を誇張しない、顕著な彼女はまさに大和撫子に思えました。そんな三反田さんは僕よりも影になれそうな人だった。
けど、僕以上に彼女はみんなに気づいてもらえない。

「黒子、三反田居たか?」
「……」
「…あの、火神君」
「あ?どうかしたのかよ」
「…三反田さんなら、」
「此処に居ます…」
「うぉ?!」

挨拶もしないで保健室に入ってきて訪ねた火神君の態度に、暗い影が差すほど思い切り傷付いた三反田さん。僕とずっと一緒にいたというのに、まるで突然現れたかのように三反田さんに驚く火神くん。僕の隣にいたじゃないですか。思わず僕はその背中に拳を強く当てた。
だって僕もその気持ち分かりますから。

「わ、悪ぃ…全然気付かなかったわ…」
「火神君、全くフォローになってませんよそれ」
「うっせ」

入学してだいぶ経ち、火神君達は僕の存在を何とか気付いていますが、三反田さんの存在は未だに気付いていません。カントク達も、そしてクラスメイトの人や、三反田さんと同じ委員会の人達ですら。
僕もその気持ちが分かるから、その悲しみを共有することしか出来ない。
僕だって、三反田さんのことを見失いそうになるのですから。

「…いいよ、慣れてるから」
「それはそれで慣れんなよ…」
「あはは…」

だからと言って、それで終わりはしません。

「三反田さん」
「?」

存在が薄い者同士頑張ろうと思うのです。
名前を呼ばれて、不思議そうな表情で僕を見た三反田さん。素っ頓狂な様子なのが可愛らしくて、クスリと笑って言った。

「僕は貴方を見失う事はありませんから」
「!……ありがとう」

嬉しそうに、喜色の笑みを浮かべそう言った三反田さん。
そんな彼女がとても素敵に見え、僕はその時一瞬で惹かれました。一目惚れってあるんですね……。そして些細な事で惹かれるのって本当にあるんだと、学びました。だからといって、別に行動するわけではありませんが。
今は、彼女と同じ時間をすごすだけで十分です。

(黒子side終)

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