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決断力少女とエース様



「私は三年ろ組、神崎千遥!人からはこう呼ばれる。決断力のある方向音痴だと!」

願うのは一つ。
あの頃に、戻りたい。

「こっちだぁー!!!」
「じゃないのだよ!!」

私がこの世に生まれ早十年あまり、近所の秀徳高校に入学して早一月が経とうとしていた。
読者のみなさん、初めましてだな!!私は神崎千遥。秀徳高校一年生の女子生徒だ!得意教科は歴史と数学と古典、漢文!あ、それと体育だ!!
そんな私は、家を出て早々、首根っこを掴まれた。

「お前はじっとすることが出来ないのか!?」
「ぶはっ!!千遥ちゃん、相変わらずだわ…!!」
「おぉ、高尾!おはよう!」
「このっ……、はぁ、おはようなのだよ」
「おはよ、千遥ちゃん。今日も元気だな」
「私は元気が取り柄だからな!」

不思議な語尾をつける緑色の頭の男児は緑間真太郎といい私の幼馴染だ。もう一人の黒髪真ん中分けの男児は高尾和成といって入学して知り合った者だ。そんな二人は迷子になる私をよく探してくれるのだ。
あ、そうだ。私には人には言えない秘密があるのだ!

「司馬法に曰く」
「は?」
「司馬法…?」
「進退疑うなかれ!…秀徳高校はこっちだぁー!!」
「だからそっちじゃないのだよ!!」

己の勘に従い、秀徳高校へ向かって歩を進めようとした私だが、再び緑間に捕まった。

「千遥ちゃんって、時々昔の引用するよなぁ。あと動きも機敏だし…」
「うん?そうか?」

高尾の言葉に私は意味が解ってないような表情をした。忍者は人に悟られないようにしろ。

「そうそう。すばしっこいというかさ」
「千遥は昔からなのだよ」

緑間の言う通り、昔からだ。
だが、この世に生を与えられてからではない。
誰にも言えない秘密というのは、私には前世の記憶というものがあるのだ。
私が忍術学園という忍者を育成する場所で育ったこと。先輩達に可愛がれ、後輩を可愛がり、友と切磋琢磨して一流の忍者を目指したこと。
最期に友と死に別れした記憶。
それが全て前世の記憶として私の中にある。生まれ変わっても、また会えると思って生きてきて早数十年。忍術学園で出会った友達、先輩、後輩、先生、皆と今まで生まれ変わってから一度も会っていない。

「千遥!!」

いつも私を探してくれた彼女にさえ会っていない。
いつも私を見つける彼女がいない。

「…、…私は、決断力のある方向音痴だからな!」
「…相変わらず意味が分からないのだよ、千遥の言葉は」
「うん、俺も…」

緑間と高尾は呆れ半分本当に理解していない半分の様子でそう言った。客観的に見ればそう言っても仕方がないが、理解してほしいとは思っていない。
理解できるはずがないのだから。
けど、私は信じているんだ。

「って、真ちゃんヤバい!あと少しでチャイム鳴る!」
「何!?」
「任せろ!秀徳高校はこっちだぁー!!!」
「そっちじゃないのだよぉぉおお!!」

私を自転車と荷台を繋げて、通称チャリアカーなるものを乗せて、高尾は必死に漕いだ。緑間は、運が強いのか一度もじゃんけんに負けたことがないよいう。おは朝占いというものはかなりすごいようだ。
学校に急ぐ彼らを横目に、私は空を眺めた。
彼女達に会えると、信じている。

「千遥」
「千遥!」
「千遥ちゃん!」
「早くしろよ、千遥」


そして、また彼女が私を見つけてくれるのを。

「何処に行くんだよ、バカ千遥!!ちゃんと私の手を握っておけ!!」

だから、それまで

「ええい、遅いぞ高尾!私と交代しろ!」
「は?!」
「こっちだぁ!!」
「千遥ちゃん、はやっ!」
「いやその前に、秀徳高校はそっちじゃないのだよォォオ!!」

私は通常運転するからな!
早く私を見つけてくれなければ、私はまた迷子になってしまうぞ!!

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