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毒虫少女と隣の席のモデル



ジュンコと感動の再会を果たした私は、毒虫や毒蛇を買ってもいいと親から許しを得た。どうやら私の親はかなりの親バカで、私が我が儘やらいろいろ言うのを待ってたみたいだった。
その時の会話はこちら。

「お、お父さん…」
「ああ、お母さん…」
「(やっぱり、駄目…か……)」
「千遥が、千遥が…」
「……?」
「やっと私たちにお願いをしてくれたわ!!!」
「…は?」
「待ってた!この時をお父さんとお母さんは待ってたんだ!」
「……」
「その子を飼いたいのね!千遥ちゃん、その子がいいのね!」
「…ジュ、ジュンコじゃないと、駄目…」
「ジュンコというのか!もう名前をつけたんだな、千遥!ならなおさら、その子を飼おうじゃないか!」
「……え、いいの」
「「もちろん!だって千遥のお願いなんだもの!」


あの時は拍子抜けした。蛇を飼うって事だけでも、異色なのに、それよりも両親は私が我が儘というか、お願いを言ったことに感動していたのだから。
我ながら思うが、変わった人達。
でも、私にはお似合いな人たちなのかもしれない。

「…現世は、面白い人と巡り会ったな」

思わず、笑ってしまった。
そしてジュンコと一緒に過ごす事ができて、数年後。
私は高校一年生になった。
しかし…

「千遥、ジュンコちゃんを学校に連れて行くのはやめさない」
「な、ど、どうして!?」
「千遥、お前の気持ちは分かっている。けどな、毒蛇を外に放ち、もしジュコが誤って誰かを噛んで殺したとしてみなさい。ジュンコだけじゃない、千遥、お前も辛い思いをするぞ」
「っ…」
「分かってくれるか?」
「千遥…」
「…分かり、ました…」


ジュンコが私の傍にいない。

「嗚呼、ジュンコに会いたい…!」

家を出た時、ジュンコがとてもとても寂しそうに私を見ていたのがとても心苦しい。仮病でもなんでもして、今すぐ早退したい。ジュンコに会いたい。入学式早々こうではこれからが苦痛だと思ってはいるけど、それでも…。

「(私はジュンコに会いたい…!!)」

ジュンコに会いたくて仕方がない私は、いったん自分を落ち着かせようと息を吐いて外を眺めた。私の席はちょうど窓際で、一人ボーッとすることが出来る。
あ、あの雲の形、ジュンコみたいだ。

「……」

これじゃ埒があかないと思い、持参してきた小説(もちろん毒蛇の話)を読み始めた。今は危険生物として扱われているが、海外の小説や映画では蛇を扱う作品が多い。その中でも、大蛇が出る映画が好きで、最後は人に殺されるが子の為に生きた優しい親の話はなんとも感動的なものだった。感傷的になって、涙が出そうになっていると、突然クラスの女子が叫び出した。
騒々しい。
思わず眉間に皺が寄った。
すると、騒がしいだけじゃ足りず、私の傍に誰かの気配が。

「俺の席は…此処っすね。そして君が、俺のとなりの人っすね!」

なんとも大きい声の独り言だな。恥ずかしくないのか。と、思っていたが、どうやらソイツは私に話しかけていたようだ。視界の端に黄色いものがちらちら入ってくる。無視を決め込んでいたら、彼は言った。

「俺、黄瀬涼太っす!!よろしくっす!」
「よろしく」

今は本を読んでいるから話しかけないでくれ。
拒絶の意味で間髪入れず挨拶を返して、私は読書に集中した。

「…あー、えーっと…、その、君の名前は…?」
「後で自己紹介するんだ、別にしなくていいだろ」
「(か、絡みづれぇぇえ!!)」

私の態度に困惑しているのが見なくても分かった。
というか、なんなんだコイツ。コイツだけじゃない。周りの視線がウザいほど痛い。
なんか文句あるの?

「あ、そ、そうそう!俺のこと、知らないッスか!?」
「黄瀬涼太」
「……いや、そうじゃなくて…、ほら!よく雑誌とかで見ないッスか?!モデルの黄瀬涼太って!」
「…君が?」

仕方なく、彼に目を向けた。
ああ、だから女子共は騒いでいたのか。

「そうっス!」

確かに顔は整っているが、髪の色に笑ってしまう。黄色の髪の毛って。どうなってるんだコイツの遺伝子は。
けどこれといって興味なんて湧かない。それに、黄色の髪なんて、アイツの前髪で見慣れてる。紫色の髪や赤茶色の髪のをしてる親友たちがいるから、驚く要素が全く無い。先輩ならば、灰色もいらっしゃる。
そして、何よりも。

「…(ジュンコのように)美しくも綺麗でもないな。それに、貼り付けたような笑みを私に向けるな。胸が悪くなる」
「…へ?」
「そもそも私は君(のような人間)に興味はない。必要以上に話しかけないでくれ。」

私が興味を抱いているのは、毒虫毒蛇、そして忍たま達だけ。

「ぇ、…えぇ!?」

その瞬間、私の学校生活はこの隣のせいでサイアクになるのだった。
嗚呼ジュンコに会いたい。

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