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不運少女の秘密



「何回も言わせないでよ!!私の名前は三反田千遥!――――、――委員会に入ってるんだから!!」

ひどく懐かしい記憶だと思ったその言葉。

「怪我したなら、保健室に行くように!そのまましたら怒りますからね!!」

変わった服装をしているのは、私だと気付いたのはいつだっただろうか。

「……」

私には誰にも言えない秘密がある。
それは、いつの事だか覚えてないけど、幼い頃にその秘密が生まれてしまった。

「…ははうぇー」
「千遥、そんな古い呼び方いつ覚えたの?」
「うぎゃっ!」
「あら、また転んだ」

私、三反田千遥には不思議な記憶がある。
夢と言った方がいいのかもしれないが、夢にしては現実味がとてもあるものだった。
緑色の服を着て、友と呼ばれるだろう人達と仲良く過ごしている光景。何かの学校のようで、夢の中では屋根から屋根へと飛んだり、手裏剣みたいなものを投げたりしている私がいた。
それはとても懐かしいと感じるものだった。

「誰に似てこんなに不運を招いてるのかしら…?」

こけた私を抱き上げて、笑う母。すると、玄関から感じた気配に顔を向けると、母もそちらへ目を遣った。

「ただいまー」
「あら、お帰りなさい」

父と呼ぶ存在が仕事から帰ってきて、母と抱擁をする。父は世界を飛び回るカッコいい仕事をし、母は元女優という派手で有名な存在。
うん、仲睦まじい光景でいいと思う。
なのに、私は何故か二人のそれを受け継がず、地味だ存在が薄いだと言われる始末。
幼い頃から言われ続けたその言葉は、何故か既視感を覚えた。

「あ、そうだ。千遥、これ要るかー?」
「ぅ?……!」

また何処かに出張に出掛けていたようで、父親は親バカなのか、毎回私にお土産をくれる。もはや恒例ともなっているお土産タイム。父は鞄からまるで自分のように嬉しそうにして、私に今回のお土産を渡した。
それを手にし見た途端、目を丸くした。
父が私にくれたのは、この現代では見られない代物。

「千遥すごい!真ん中だよ!!」

おもちゃであろうけど、それは私にとって掛け替えのないものでもあった。

「会社の同僚からもらってな、千遥にプレゼント!」

ヒュ、と口で音を出して投げる真似をする父。その手には、四方に突出した忍の一道具。
投げて、敵を威嚇し、時には命を奪うそれ。
それに怒ったのは、私ではなくて母。

「ちょっと、千遥は女の子よ!!なんでそんな物騒なものを、…って、え…?」
「…千遥…?」

それを見て、嗚呼、やっと思い出した。
自然と頬に伝うそれは何を思って流れるのだろうか。

「や、やっぱりまずかったのかな!?」
「当たり前じゃない!女の子に手裏剣だなんて…」
「お、父さ…」
「ど、どうした…?」

これを私にくれてありがとう。そして思い出させてくれてありがとう。
あの夢のような記憶はれっきとした私の記憶。
この世界じゃなくて、前世の記憶。

「ぁり、がとぅ…」

大事にします。
上手に言えないけど、父さんから貰った手裏剣を大事に持って気持ちを込めて言えば父さんは嬉しそうに笑ってくれた。母さんも、手裏剣を持つ私に何も言わなくなった。

「よし、母さん。飯だ」
「…分かったわ」
「母さん、私も手伝っ…ふぎゃっ!!」
「千遥!?」

私の名前は三反田千遥。
影が薄くて不運な少女。派手な両親とは真反対の私は、地味で影が薄く存在感があまりない。

「ふ、不運って…辛い…」

前世の記憶を保持してる他の人とは少し違います。
元忍術学園三反田千遥。
この度、いつの間にか転生してました。

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