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01



仙蔵達がタソガレドキ城城主の顔を理解していた頃、廃寺を後にした恭弥はと言うと…

「ミードリタナービクーナミモリノー」
「…これだけ咬み殺せば我慢出来るかな」

咬み殺していた。

「う゛、…」
「キサ、マ…なにも、の゛…」
「雑魚に言うことなんて何もないよ」
「グハッ!!」

恭弥の周りには屍累々。
無惨にも山賊が恭弥の餌食となってしまったのだった。
それもそのはず。

「群れの匂いがすると思えば、ただの人攫いの山賊だとはね…」

山田先生の見張りがありながらも、廃寺に集まっていたは組達を狙っていたのだった。それを見逃す事のなかった恭弥は好機を伺っていた山賊たちを咬み殺す予定だったのだった。
きっとは組以外の者達も気付いていただろうが、いつ襲撃されるかも分からなかったし、子供達がいる状況での戦闘は避けたかった。その時、ストレス発散という名目で恭弥が廃寺を出て行ったのがとても有り難かったのだ。

「僕の箱庭に手を出す命知らずの君達は、万死に値するよ」

そう言って、トンファーに付着した雑魚の血を振って拭いった恭弥。恭弥の殺気と負わされた怪我により、山賊達はその場で息を引き取った。
それを確認した恭弥は、足元にいる存在に目を向けた。

「久々の外の空気はどうだったかい?ロール」
「キュッ!」
「そう」

肩にはヒバード、足元にはロール。
恭弥は開匣して群れている輩共を倒してストレス発散していたのだった。

「あまり外に出すことが出来ないから、また我慢してね」
「キュウ…」

ロールは寂しそうに恭弥に擦り寄る。可愛い小動物に目がない恭弥は、ロールを撫でてせめてもの償いをする。

「また外へ出すよ」
「キュッ!」
「それじゃあ、またね」

小さく笑って、恭弥はロールを匣へ戻したのだった。ヒバードを撫で、恭弥はストレス解消して廃寺へとまた歩を進めたのだった。

「…今夜は楽しめそうだ」

そう呟いて。


***


月の明るい晩になった。
廃寺に篭っていた恭弥達だったが、夜になってやって来た招かれざる客に警戒していた。
忍装束に着替えた利吉が外の様子を伺う。

「……囲まれています」
「ざっと三十かな。…咬み殺し甲斐があるね」
「咬み殺し過ぎるなよ…」

呆れるように注意した仙蔵。しかし、恭弥は…、

「相手によるね」
「オイ」

通常運転のようで、仙蔵達は呆れるように恭弥を見た。

「あー、ゴホン。…では、打ち合わせ通りに」

恭弥の言葉に咳払いをして山田先生が言うと、利吉が閃光弾を仙蔵から受け取りながら隣へ移動し説明した。

「まず、私と立花くんが揺導を仕掛け、そのまま喜三太救出チームに合流する」
「光が強めです、気を付けて」
「あぁ」

次に話したのは日向先生。

「その隙に私と三治郎、金吾が忍術学園へ援軍要請に走る」

そして山田先生が振り返った。

「他の忍たまは、我々と園田村に向かう。≪韋駄天≫乱太郎が先触れに走り、護衛に伊作が付く」
「うん」
「伊作、不運なことしないでね。処理が面倒だから」
「ちょっと、ひどいよもう!」

伊作に失礼ではあるものの事実だからなんとも言えない。仙蔵をはじめとする皆は苦笑い。すると、ずっと不安げに俯いていた乱太郎が我慢出来ず顔を上げた。

「山田先生、わたし達も喜三太救出に行きたいです!」

友達思いなのは分かってる。乱太郎がそう思うのも仕方がないのだろう。
しかし、これだけはは組が行っては危険なのだ。
そう思い、乱太郎に言ったのは伊作だった。

「乱太郎、喜三太救出は利吉さんと仙蔵に任せておけば心配ない。厚木先生もいらっしゃるし……今は、自分の任務に専念しよう。情報をもたらすのが、忍者の本分だろう?」
「伊作先輩……」
「喜三太を助けたら、すぐに教えてあげる」
「立花先輩……」

二人の先輩から安心する言葉をもらったのか、乱太郎の顔から、不安が消えた。

「……はい!」
「うん。滝夜叉丸や左門もついてるしね」

安心させようと伊作が声をかけたが、それだけはかえっては組の不安をあおりたてただけのようだった。そんなは組の反応に苦笑いする雷蔵とびっくりしていた三郎がいた。
ようやく、あの時と同じ反応をした理由を理解したのだろう。

「伊作は一言余計だな」
「…流石アホのは組だね」

仙蔵の言葉に恭弥はそう言うしかなかった。

「あのー…」
「なんだ、不破」

何か気になっていたのか、雷蔵がおそるおそる山田先生に尋ねる。

「雲雀先輩は僕達と同行なさるのですか?」
「あぁ、いや、恭弥は…」
「僕は群れたくないから一人で行動するよ」
「というわけで、恭弥には殿を任せてもらう」

殿、と言っても恭弥は自由に行動するだけだが。
山田先生の言葉には組の子供たちは心配そうな表情をする。それに気付いた恭弥は、目を閉じて笑った。

「僕が負けるとでも思ってるのかい?草食動物達」
「ち、違います!」
「じゃあ何?」
「ただ、…ただ無茶はしないで下さい!」
「!……君達に心配されるほど僕は弱くないから」

は組の言葉に恭弥はそっぽを向けた。
その行動には組以外の人間は気付いた。

「(恭弥ったら…)」
「(照れてるな)」
「(えぇ。純粋に心配されて嬉しかったんでしょうね)」
「君達、なにコソコソ話してるの?」
『ッ!?』

そっと振り返れば、微かだが怒気を纏っている恭弥の姿。
あ、これはヤバい。

「咬み殺すよ」
「な、何の話だ恭弥!?」
「ぼ、僕達別に話してないよ?!」
「恭弥先輩の勘違いですよ、はい!」

必死に隠そうとする仙蔵達。冷や汗タラタラで騙そうとしている様子が実に滑稽で、恭弥は小さく笑う。

「……そういう事にしてあげるよ」
『(助かった…!!)』

命拾いした仙蔵達だった。

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