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01



各自の課題で、最後に残ったのは田村だけ。しかし、田村はまだ自分の課題はしたくない、などと述べて拒んでいるため、彼の課題を後に回し、先にもう一つの課題をすることに四年生は決めた。
第二の課題は『ニセクロバリ城の内政事情を探れ』。
監督兼審判役である三郎と兵助が言っていたように、不穏な動きがあったのかと四年生も探る目になった。もともとニセクロバリ城は、武力行使を好ましく思っていない城として有名である。まずは話し合い、そうして互いに利益あるものにするというのが、ニセクロバリ城城主丹瀬黒時武(にせくろ ときたけ)であるのだ。
各々が知っている情報を共有し、ニセクロバリ城の異変の原因があるかを探る四年生だったが、それぞれから出た情報にはなかった。

「そうなれば、やはり聞き込みしかないな」
「そうみたいだねぇ」
「あまり疑われないように気をつけないといけんな」
「守一郎、口調」
「い、いけませんわね…」
「でも、ニセクロバリ城は平和主義のお城で有名なのにどーしてそんな課題を出したんだろー」
「さぁな。だが、何かが起きる前の情報収集は忍者の基本。忍たまの私たちも、一人前の忍者になるためにも探るしかないだろう」

滝夜叉丸はそう言って、乱れた髪を整え始めた。それを横目に、三木ヱ門たちは滝夜叉丸の言葉も一理あると思い課題のために城下町の地形を思い出した。

「長屋のほうに行けば、井戸端会議を聞けるかもな」
「じゃあ、僕はそっちに行こうかな〜。主婦の皆さんとお話するの嫌いじゃないから」
「あとはお茶屋とか、人が集まる場所を中心に情報を集めていこう」
「おう」
「りょーかい」

第二の課題での反則行為は特に記されていなかったため、組別で基本行動することに決めた四年生たち。い組は城付近にあるお茶屋に。ろ組は城から少し離れたうどん屋へ。そしては組のタカ丸は長屋の方へと向かったのだ。
一瞬だけ見せたその表情は忍者のそれ。町人や商人が気付くことはないけれど、それでも突然動いた彼らを周りにいた人々は目を向けたのだった。


***


「動き始めたみたいだな」
「そうだな」

四年生が何か話し合い、そして動き始めたのを確認した三郎と兵助。これに関しては、審判する役はないため二人はしばらくはゆっくりすることが出来る。
日の昇る場所から時刻を推測した三郎は、兵助へと目を向けた。

「兵助、先に休憩していいぞ」
「…いいのか、三郎」
「ああ」

三郎の言葉に目を丸くして見せる兵助。三郎は兵助から自分の持っている監察帖をパラパラめくりながら淡々と言った。

「どーせ、アイツ等の情報収集能力を見るだけだ。私たち二人で見るようなものでもない。半刻程休憩をして、その後私も休憩する。それくらい構わんだろ」
「まぁ、それはそうだけど……」

何故か渋る様子の兵助。けれど、身体の様子は隠せていなかった。そんな彼にあからさまなため息を吐いて、三郎は半目開きで兵助を見て言った。

「お前なぁ、ここに来てからずっとそわそわしているの、分かっているんだからな。私に隠し事を通せるはずがないだろう」

三郎はお得意の人間観察で兵助がニセクロバリ城領地に来てから、やけにそわそわしている事に気付いていたのだった。すでに気付かれていたとは思っていなかったのか、兵助は知られていた事に恥ずかしくなり頬を赤らめた。
男の三郎が見ても、可愛いなどとは思わなかった。

「なんだ、バレてたのか……」
「バレバレだよ。なんだ、行きたいところでもあるのか?」
「そ、そうなのだ!」

あ、これは駄目なやつ。
三郎が何気なく聞いた質問に、兵助は待ってましたと言わんばかりに目をキラキラと輝かせてぐっと拳を胸の前で握って三郎に近付いたのだった。
輝かせる瞳の奥に見えるのは、彼の大好物だった。

「ニセクロバリ城の下町で、とても美味しいと噂の豆腐屋があると聞いたんだ!一度は行ってみたいと思っていたんだ!」
「ぁ、ソウ……」

やはり、というか相変わらずの豆腐大好き小僧に、三郎はほとほと呆れるのだった。すでに自分の世界に半ば踏み込んでいる兵助は三郎の様子に気付かず、噂で聞いたという豆腐のことを熱く熱く語る。それを右から左へ聞き流しながら、適当な相槌を打つ三郎。

「三郎も気にならないか!?」
「あー、うん、そうだね」
「気になるなら、お前のも買ってくるぞ!」
「はいはい、買ってきなよ」
「!本当か!?それじゃあ、買ってくるよ!お前のも!」
「はいはい、分かった分かった。いってらっしゃー……ハァ!?」

適当に流していたことが仇となり、三郎が気付いた時はすでに遅く、兵助は人混みの中を颯爽と駆けて行っていたのだった。迷わず真っ直ぐ向かう様子を見ると、すでに場所は確認していたようで、頭の事を豆腐だけになっている兵助を追いかけることなど三郎ができるはずがなかったのだった。

「……しまった………」

後悔先に立たず。取り返しのつかないことになってしまった事に、三郎は悔やむだかり。自分が聞き流して適当に返事をしていたのだから、自業自得の域ではあるが。

「あー…アイツの事だ、本当に私の分まで買ってくるに違いない……。豆腐だけ食べても味などないに近いというのに……」

今ここに兵助がいれば、この言葉を聞いた瞬間「そんな事ない!」とか言いだして、熱く語り出すはずだ。こんな時でも豆腐小僧な兵助に呆れる三郎だが、相変わらずだと思うと笑いがこみ上げてきたのだった。

「ま、小腹を満たすものだし…いっか」

それよりも、自分はまだすべき事がある。兵助が不在中、彼らの様子を監察するのは自分だけなのだ。
何か異変や面倒事に巻き込まれないよう対応すべく、散らばった彼らの様子をそれぞれ見るよう、三郎もその場を一瞬で後にしたのだった。

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