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01



虎若の作戦で一部の忍たまが向かった後、恭弥は静かに一人別の場所へ歩いていた。すると、自分の頭上に影が出来てふと見上げるとそこには一羽の黄色い鳥が。

「ミードリタナービク ナミモリノー」
「やぁ、ヒバード」

恭弥の飼っているヒバードだった。ヒバードは恭弥の手に留まり、甘噛みをする。

「ヒバリ、ヒバリ」
「敵の状況、教えてくれるかい?」
「テキ、タクサン。ムレテル、カミコロス、カミコロス」
「そう」

これだけで理解するのは難しいが、恭弥はただ敵が群れている事さえ分かれば良かった。恭弥はヒバードの頭を優しく撫でると、再び空へと放った。
と、同時だった。

ドガァァアン!!

「…」

大きな爆発音に、揺れる大地。無言のまま振り返り畑を見ると、ちょうど池の堤が爆破されて水が轟々と流れ出していた。
震天雷を上手く成功させたようだった。

「…これで砲撃の対策は出来たね」

まだタソガレドキからの攻撃は無いが、これは確信だった。皆が攻撃を構えている中、恭弥は柵の付近に居た土井先生に告げた。

「土井半助、僕は僕でやらせて貰うからね」
「あぁ、分かっ…て、恭弥!?」
「そっちの事は任せるよ」
「待てッ!!何を言って、て…行ってしまった…!!」

虎若の働きを信用し待っている皆の中、恭弥だけ柵を超えて走り去って行く。相変わらず自由に動く恭弥に何も言えないまま見送ってしまった土井先生は自責の念を感じ、そして胃が痛くなるのを感じつつ呟いた。そんな土井先生に照星はやはり恭弥の事が気になったのか尋ねる。

「…彼は、何処へ…?」
「雲雀君はきっと、咬み殺しに行ったんでしょう」
「…咬み?」

気になる事が増えた照星だった。


***


土井半助に悩みの種を蒔いた恭弥は、素早い速さで田畑を駆けていく。泥を衣服につけないように、そして誰にもバレないようにして駆ける恭弥に誰も気付く者は居ない。
遠くの方で種子島が放たれた音がした。

「(…佐武か)」

片方の種子島より素早く放つ音が聞こえるのは、虎若の父親達がタソガレドキ軍より上手いという事にもなる。

「ようやく面白くなってきたね」

地を蹴り上げ、恭弥は木々へ飛び移る。丘になっている処に着くと、そこにはタソガレドキ軍の砲兵隊達が居た。気配を消して様子を伺っていると、一人の兵が遠眼鏡をかざして何かに気付いていた。

「て、鉄砲隊が…園田村に降伏しました!!」

その報告に、一同は動揺する。

「何だと!?」
「馬鹿な!!相手は農民だぞ!?」
「何故だ!?」

たかが農民相手に最強と謳われるタソガレドキ軍が敗れるわけが無い。そう兵達は思って各々が言い合う。
そんな彼らに親切に答えを教えた者が居た。

「相手に敵わないと、懸命な判断をしたからさ」
『!?』

ガサリ、と草が揺れた。その音の方向に一同が勢いよく振り向くと、そこには一人の少年の姿が。

「やぁ、随分と群れてるね」
「な、何者だ貴様!?」
「さっきの言葉はどういう意味だ?!」
「どういう意味だって、そのままだよ。そして、君達に教える事なんて何一つ無いよ。だから黙って、」

チャキッ

「咬み殺されなよ」


***


「怪我した人ー!手当てするから遠慮なく投降してくださぁぁぁいっ!保健委員からのお知らせでぇぇぇすっ!」

遠くの彼方から聞こえた声。
ゆっくりと振り返り、園田村を見ると何故か逆茂木が設置された部分が燃えて且つ、何をどう間違えたのか花火が打ち上がっていた。花火に負けないほどの大きな声に、恭弥は小さく息を吐く。

「伊作と同じくらい忍に向いてないね、あの子は」

なんだか生易しく感じてしまった恭弥はトンファーに付着した赤い液体を振り拭う。そして振り返る事なく、その場を一瞬で立ち去った。

「う゛…」
「ぐ、ぁ…」

恭弥の背後には、咬み殺されたタソガレドキ軍が居た。

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