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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
01



庄左エ門が人攫いに攫われたという情報が学園に広がってからは、学園内はピリピリとして空気が漂い、あまり心地よいとは言えなかった。教師達は人攫いの情報をより多く集め、いつ救出しようかと作戦を練っていた。
五、六年生もいつでも救出しに行けるように準備をしていた。
それなのに、

「その必要はない!」

何を思ってか、学園長は庄左エ門を助けに行かなくてもいいと言ったのだ。これには、教師達は思わず反論した。
特に、冷静に対処が出来ない状態に学園長の言葉は、山田先生と土井先生に重たい一撃を喰らわせたようなものだったのだ。

「何故ですか!どうして今すぐ助けに行かないのですか!!」
「庄左エ門を攫った人攫いは巷で噂の輩!必要ないとは、どういう意味です学園長!」


一刻も早く庄左エ門を助けに行きたい二人。しかし、学園長は「学園長命令じゃ」とただその一言だけで、理由を教師達に教えることはなかった。
それでも、やはり我が子のように思い、接し、共に過ごしてきた可愛い生徒を助けないわけにはいかない。
だから、山田先生と土井先生は万が一の為にも、退職届を懐に入れ静かに夜明けとともに行こうと準備をしていた。
しかし、その必要は無くなった。

「土井半助、山田伝蔵。君達、動くの遅いんじゃない?」
「!」
「…恭弥…!?」

誰も居ない事を確認し、小松田の隙を狙い壁を乗り越えようとしたと同時に聞こえた声。トン、と軽やかな音と共に壁の上に現れたのは、学級委員長委員会の上級生たちだった。

「おはようございます、山田先生土井先生」
「今日もいい天気ですねー」
「お、お前たち今まで何処に…!?」
「!待て、恭弥。“遅い”とはどういう…!?」
「その言葉の通りさ」

恭弥達は塀から飛び降り、山田先生たちの前に飛び降りる。呆然とする教師二人に、恭弥は冷めた目で見るだけだった。ふと、土井先生は恭弥の後ろに何かが動いているのが分かった。少し体をずらして見れば、

「…庄左エ門!!」
「何!?」

人攫いにあったはずの庄左エ門の姿があった。
土井先生の声に反応し、山田先生も驚きの声を上げた。二人の声に、ピクリと動いた庄左エ門は、ゆっくりと窺うようにして自分の恩師を見た。

「…土井、せんせ…、山田、せんせ…」
「庄左エ門…!」
「恭弥、これはいったい…!?」

何がなんだか理解していない教師二人に、恭弥はため息を溢して二人に背を向けた。

「まずは先に庄左エ門を保健室に行かせなよ。話はそれからだ」
「!」
「分かった」

話したいことは山ほどある。それを汲んでくれた恭弥に礼をしたいが、今は庄左エ門の安否を確認することが大事なのは若干冷静になりかけてなかった二人も分かった。恭弥に言われ、二人は庄左エ門を抱え、保健室へと向かった。きっともしものためにも、保険医の新野校医と伊作がいるだろうから。

「三郎と勘右衛門はは組の子に報告でもしなよ」
「分かりました」
「恭弥先輩は?」

何をするつもりなのか、どこに行くのか分からなかったから素直に尋ねた勘右衛門。恭弥は答えるつもりはないのか、スタスタと長屋ではない方向へと足を進めた。答える気はない、と判断した勘右衛門は三郎と共に恭弥とは真逆の方へと足を進めたのだった。
ただ一つ、三郎と勘右衛門が分かったことは、

「…恭弥先輩、何に対してあんなに…」
「さあな。今は、放っておいたほうがいいのかもしれんな」
「触らぬ神に祟りなし、てか…?」
「まぁ、そういうことだ」

彼が、まだ何かに対してイラついていることは明らかだった。 

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