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- ナノ -
03



ドガッ バキッ

「ぐあッ!!」
「ガッ!!」
「……弱いな」

戦の殺気に影響され、恭弥は片っ端からタソガレドキ軍、オーマガドキ軍の足軽を噛み殺していた。
本来の目的なんか忘れて。

「貴様!?何者だ!!」
「足軽がやられているだと!?」
「安心しなよ。殺してはないよ」

次から次へとうじ虫のように現れる足軽。トンファーに付着した赤い液体を振り拭い、恭弥は群れを見る。
自分より弱い殺気を向けられるが、それだけでも自分が興奮しているのが分かった。

「貴様よくも!!」
「弱い奴ほどよく吠える」
「ガハッ!」

突っ込んで来た足軽を軽く咬み殺し、恭弥は笑う。
次々とやられる仲間に足軽達は顔を青ざめる。彼らには恐怖でいっぱいだった。

「さぁ、次は君たちだ」
「ヒィ!?」
「た、助け…」
「無理」

ヒュンッ ガキィン!

「!」

命乞いをしようとした足軽にトンファーを振り下ろそうとしたが、それは何者かによって止められた。
自分の攻撃を止めた。
それだけで、興味の対象が瞬時に変わった。

「…ワォ。君、だれ?」
「ただの雑兵だよ…」
「へぇ。そのわりには、殺気が凄いね」

そう言ったと同時に雑兵と距離をあける。笠で素顔が分からないが、男だろう。
構え直して雑兵を見る。雑兵は自分の軍の足軽に目を向け「そろそろ撤退する。早く行け」と言い足軽達をこの場から逃がした。
そして雑兵は恭弥と向き合う。

「…君、ホントに子供?」
「子供だよ」

戦闘経験はかなりあるけどね。
口外せず、恭弥は笑うだけ。雑兵を見て、恭弥は尋ねた。

「貴方、強い?」
「さぁね」
「ふーん…」

隙がない。殺気はさっきより収まっているけど、消したわけじゃない。
咬み殺し甲斐がある。
けど、

「貴方、完全な状態じゃないね」
「よく分かったね」
「貴方からの血の匂い濃いし、一目瞭然だよ」
「(戦い慣れをしてるな、この子…)」

恭弥の様子と先ほどの戦いぶりから考え、雑兵──もとい、雑渡昆奈門は警戒する。
しかし、

「早く消えなよ」
「…は?」
「貴方とは完全な状態で咬み殺してあげる。次会う時までに完治しておきなよ」

くるり、と昆奈門に背を向けた恭弥。昆奈門は拍子抜けしたものの、恭弥の言葉が有り難く思ってしまった。
自分はまだこれからすべき事がある。自分の君主の信頼を裏切るわけにもいかず、ましてやここで大怪我をすれば部下たちを不安にさせてしまう。

「そうさせてもらうよ。君、名前は?」
「次に会った時にでも答えてあげるよ。じゃあね、雑渡昆奈門」
「!」

そう言って恭弥は去って行った。
一人残された昆奈門はというと…

「会っても絶対戦いたくないね」

と、ぼやいていた。
その数分後、昆奈門は伊作と出会うのだった。


***


「やぁ、帰ったよ」
「お、早かったなぁ恭弥」

杭瀬村に帰れば、雅之助は畑を耕していた。この時期は夏野菜は採れるが、虫に食べられやすい。作業をしながら雅之助は恭弥に言う。

「どうだったんだ?課題は」
「適当に書くよ」
「はぁ!?」

恭弥の返答に雅之助は驚きの声を上げた。恭弥は優雅にヒバードと戯れているだけ。

「雑渡昆奈門に会わなかったのか?」
「会ったよ」
「ならなんで、」
「気分じゃなかった」
「…そ、そうか」

いつもなら、他の忍たまの子には「ど根性ー!!」とか言ったりする雅之助だが、恭弥相手に言えるわけなかった。
それに、恭弥には恭弥なりの考えがあるのだろう。

「恭弥、後はもう用事はないのか?」
「ないよ。けど、強い奴探しに行くね」
「はぁ!?」
「じゃあね」

唯我独尊。
雲雀恭弥はその一言に限る。
恭弥はヒバードを肩に乗せ、杭瀬村を後にしたのだった。
こうして恭弥の夏休みは終わるのだった。

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