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02



ふと、三郎は違和感を抱き、勘右衛門は何かが不自然であることに気付いた。泣いているは組ではあるが、誰かが足りない。
いつも冷静で、周りをよく見ている、この子達の代表の子が。
何処にも見当たらない。

「…なぁ、乱太郎…」
「!」

嫌な予感か何かが、三郎と勘右衛門を襲った。
ゆっくりと、何故だか分からないが、喉が、唇が、手が震える。
三郎に名を呼ばれた乱太郎は、ビクリと肩を揺らし、未だボロボロと涙をこぼしている状態で三郎を見た。
再び涙がこぼれ落ちる。
フラフラ、と足元がおぼつかない状態のまま三郎はゆっくりと乱太郎に歩み寄る。勘右衛門は一歩も動かない状態ではあるものの、何故か妙に顔が青ざめていた。
三郎は尋ねた。

「…庄左ヱ門は、何処だ…?」
「っ!」
『!!』

そこで兵助達も庄左ヱ門が見当たらない事に気付き、そして一度目を丸くしたかと思えばは組ではなくて六年生を見る。
六年生はその視線を見ないように、逸らした。
ドクン、と心臓が大きく脈打つ。

「うっ…ふっ…」
「頼む、答えてくれ…」

泣くだけで答えない乱太郎を急かすように言う三郎。このままではまずいと思った伊作が、三郎の名を呼ぶ。

「鉢屋」
「っ…庄左ヱ門は、何処にいるんだ…?」
「鉢屋っ」
「乱太郎!」

何も答えない乱太郎に三郎は声を荒げる。その声に驚き、肩を上下に大きく揺らし乱太郎は泣きそうな表情で小さい声で言った。

「しょ、ざえも…は…」
「ッ…」
「ひっ、…ひと、さらいに…あって…!」
『!?』

庄左ヱ門が人攫いにあった…だと…?
衝撃的な事実に五年生はただ目を丸くした。六年生は事実を知っていたものの、改めて知らされ悲痛な表情を浮かべる。
は組の代わりに、仙蔵が五年生に事の発端を教えた。

「今日、は組が最近出来た団子屋に行くのは知っていたな?」
「は、はい」
「委員会でよく言ってましたから…」

雷蔵と八左ヱ門が戸惑いつつも答える。毎日のように、今度の休みにみんなで行くと、大はしゃぎしていたのを今でも鮮明に覚えている。仙蔵は「他の委員会もだろうな」と言って、続ける。

「かなり舞い上がっていたようでな、皆で騒ぎながら向かって行ったそうだ」

何を食べよう。
どんなのがあるのだろうか。
どれくらい食べようか。
分け合いっこしよう。
先輩たちにもあげよう。

「色々と話をしているうちに気付かなかったのだろう」

は組の学級委員長に話を振ろうとした乱太郎が振り向くと、そこには庄左ヱ門の姿がいなかったようだ。辺りを見渡しても誰もいない。流石に不思議になったは組は庄左ヱ門を探しに来た道を戻ったそうだ。

「…それで、」

兵助は嫌な汗が背中を伝っているのを感じながらも、仙蔵に話を進めさせた。仙蔵は未だ泣いている兵太夫の頭を撫でて言った。

「道を戻りながら探していると、庄左エ門のものであろう草履が片方落ちていたそうだ」
『!?』
「そしてその辺りには、妙に引き摺ったような跡も残っていたそうだ」

そこまで話をしたら、乱太郎が涙を溢し、鼻水を垂らしたまま言った。

「わ、私達…ぜんぜんっ…気がつかなく、て…!」
「…そ、んな…」
「うそ、だろ……!?」

自分の可愛い可愛い後輩が、人攫いにあった。
動揺を隠しきれない三郎と勘右衛門。三郎は呆然とし、勘右衛門はあまりにも予想外な出来事に膝を崩した。

「三郎!」
「勘ちゃん!!」

雷蔵と兵助は二人の名を呼ぶ。二人は収集が取れず、そしてその事実を受け入れずになってしまっていた。その様子に流石にまだ幼いからであるか、それとも忍たまの端くれであるからか、は組は二人の感情を瞬時に読み取ってしまい、再び涙を流してしまう。
自分達が気付いていなかったから。
気付いていれば。
何も出来なかった。
ごめんなさい。
何度も何度も同じ言葉を繰り返し、泣くは組に六年生は慌てて落ち着かせようとする。三郎と勘右衛門は五年生が対応しているが、二人の負った傷は深いだろう。
どうすればいい、と考え迷っていた時だった。

「ねぇ、なに群れてるの?」
『!』

自分達の背後から聞こえた声。
聞きなれた声に、皆が同時に振り向く。

「それにそんなに騒ぐと、風紀が乱れるんだけど」

ザッ、と砂を蹴り現れた彼に誰かがポツリと呟いた。

「ひ、ばり…せん…ぱ……」
「これ以上風紀を乱すと、咬み殺すよ?」

学級委員長委員会委員長の名前を。

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